第2話
痛っ!!
交差点で誰かに当たったみたいだけどわからなかった。顔を上げた時には辺りには誰もいなかった。変な感じがした。でも、急いでいたから気にならなかった。芽実はそのまま学校へ走った。
遠くのほうでチャイムが鳴り始めた。芽実は「今日も遅刻か」と、肩を落とした。両ひざに両手を置き、顔を下に落とした。髪の毛が垂れ下がり、頬の汗にくっつき毛先が口の中に入ってきた。顎先から一滴の汗が落ちた。
瞬間
目の前のアスファルトが土色に変わった。
顔を上げ視界に入ってきたのは、学校だった。耳にはチャイムの音が確かに聞こえた。耳の後ろから頬に汗が流れるのがわかる。頭は冷静だった。
「まにあった!?」
芽実は入学してから初めて遅刻をせずに登校できた喜びに自分の声とはかなりかけ離れたサイレンのような雄たけびをあげた。
そのまま、チャイムが鳴り終わらないうちにダッシュで教室に入った。
「おおー!!!」
教室中から歓声と拍手が芽実に向かってとめどなくやってきた。隣のクラスからも、そのまた隣のクラスからも聞こえてきた。
芽実は胸を張った。大統領の演説のように小さく手も降ってみた。
学校内は一日中芽実のことでいっぱいだった。休み時間のたびに違うクラスの誰かが芽実の教室にきた。昼の校内放送でも放課後のホームルームでも芽実の名前がでた。芽実はアイドルになったみたいだと思った。
その勢いのまま、放課後を学校を出た。一日アイドルとなった芽実はキラキラしたオーラを身にまとっているような不思議な感覚に自分自身で驚いていた。もしかしたら本当にアイドルになれるんじゃないかと思った。芽実はそのまま本屋へ行きアイドル雑誌を買い、アイドル事務所へ履歴書を送った。
つづく
「なんで?なんでつづくと思ったの?」
「いや、何となくなんですけど」
「これはまだ商業誌レベルのものに仕上がってないし、おおざっぱすぎる」
「そうですか?大体、文字なんて誰も見ないし、アイドル雑誌の最後のほうに乗る小さい豆粒みたいな小説なんて、いや、駄作文章なんて誰も読まないですよ」
「その考えがダメなんじゃん」
「アイドル好きなやつって、文字読めるんですか?」
「確かに一理あるけど。あるけど、そうゆう問題じゃない」
「じゃー、いいでしょ」
「そもそも、芽実って誰ですか?もしかして、許可、許可のいるやつですか?」
内ポケットからスマホを取り出し何かを調べながら部屋緒出ていった。
文化祭レベルで面白いものは、アマチュアの面白さなのだろう。しかし、読者のほうもアマチュアなのだから、アマチュア作品のほうが面白いに決まっている。
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