第3話 心の傷癒すにゃあ新しい姉ちゃんに限りやす


「こんにちわぁ~おばさん!」

「あら道ちゃん!ちょっと待っててね」


「早く支度しろよ!相変わらず愚図だなおめえは!」

「じゃあおばさん行って来まぁーす」

って幼馴染のろぼ公と玲子の結婚式の二次会に六本木まで行ったと思いねえ。



『キッス!』

『キッス!』

『キッス!』


『キャー!おめでとう!』


「やっぱ凄え綺麗だなぁ玲子わぁ~」って、

ろぼ公の野郎が当たりめえの事抜かしてやがる。


同級生のみどりと志保と亜季代と一緒に飲んでいると、ブルーのドレスを身に纏った玲子がおいらのとこにおいでなすった。


『良かった!ミッチが来てくれて!』

『ありがとね』


「おめでとう!あいも変わらずおめえは別嬪さんだねえ!」

おいらが複雑な心境を押し殺してニッコリ微笑んで言うと、おいらの肩をパンって叩いて

『あったりまえでしょ!』とか抜かしやがる


めちゃめちゃ幸せそうな笑顔だった。



二次会も終わりかけになった頃、おいらはろぼ公にそっと耳打ちした。

「おう、終わったら速攻で帰るから」

「俺も帰るよ、六本木は肌に合わねーよ」

「上野のロイヤルプラザでも行くか?」

「行く行く行くよぉ~」


いつでも脳天気な野郎だなあと独りごち。


みどりと志保はやたらと引き留めやがったが何とか振り切って駅まで向かった。


因みにみどりと志保とは先に若気の行ったり来たりの間柄のおいら。

ちょいと後ろ髪を引かれる思いでは御座いやしたが、一刻も早くこの場から去りてえ気持ちが勝ったンでしょう。





「おう 邪魔するよ!」


「いらっしゃいませ。お二人様ですか?」

「ご指名は御座いますでしょうか?」


「ろぼ公はどうする?」

「俺はフリーで!」

「おいらは~  美咲居る?」

「出勤しております。」

「じゃあ 美咲頼むわ!」

「畏まりました。」


テーブルに案内されると間髪入れずにろぼ公の野郎が聞いてきやがった。

「おめえ!美咲って誰よ?」

「さつきちゃん辞めてからコッチに来てたの?」



初めてのキャバレー遊びはこのろぼ公に連れて来て貰った。今でも忘れもしねえ十八の時に此処のチェーンの浅草店である。

素人遊びしか知らなかったおいらには、この華やかでいて途轍もない隠微な世界に衝撃と感動を覚えてバックりと嵌っていった。

最初の内は浅草オンリーだったが徐々に上野や他の店舗にも繰り出す様になっていった。

ろぼ公は仕事絡みで浅草を使うことが多かったが、元々狩猟民族のおいらは獲物を求めて各所に遠征と洒落込んでいた。

二十歳の正月にろぼ公含めた仲間達とこの上野店で大騒ぎした時においらに就いた入店3日目のさつき嬢と懇ろの関係になって暫くは付き合っていたが、おいらの女性素行の悪さについて来れずこの店のボーイととんずらしちまいやがった。




「兄貴が指名している女だよ!」


「えっマッチが?」

マッチとはおいらの実の兄貴の愛称。


「ああそうだよ」


「マッチとも来てんの?」

「あー 野郎と来るとゴチだしなぁ~」


「おめえマッチに怒られっぞぉ!」


「関係ぇ~ねえよ!今日はむしゃくしゃすっから騒ぎてえんだよ!」


「やっぱしな!未練たらしい道ちゃ~ん!」


「やかましい!おめえにゃあ~純真な男心ってえのが理解出来やしねえ~よ!」


「どの口が純真とか抜かしやがる!俺みてえな男を純真って言うんだよ!バーカ!」


「おめえのは純真じゃあねえんだよ!臆病のチキン野郎なだけだ!」



ろぼ公とおいらは幼稚園の時から一緒の幼馴染。まあ良く言うマブダチで御座いやす。

いっつもこんな調子の二人で御座いやすが、野郎も内心ではおいらの切ねえ想いを察して何も聞かずに店まで付き合ってくれたってえ具合よ。



『あれ~どうしたの?』

『私でいいの?』


美咲の野郎が面喰って挨拶もせずに突っ立てやがる。


「おいらだよ!呼んだのは、、、」


『へぇ~ありがとうございます。美咲ですぅお邪魔しまぁ~す』


『お洒落して何処か行って来た帰り?』


「ああ同級生の結婚式の二次会」


「こいつが未練がましくってショボくれていやがったからおれが此処に連れて来たの!」


「やかましいーや!」


『へぇ~寂びしかったのぉ~ お姉さんが慰めてあげるぅ~』

って美咲がおいらの肩に手え廻して引き寄せやがった!

美咲の柔らけえ胸においらの顔が押し付けられた瞬間、、、ハンタースイッチがオンしちまった。


ろぼ公の野郎は昔から時折物凄えーパス出しやがる。何も考えていねえ分、神がかると独りごち。


ろぼ公にもお姉ちゃんが就いて仕切り直しの乾杯!


美咲は身の丈162.3cmで細身だが出ているとこはしっかりと出ていて、歳はおいらより三つ四つ上。髪は茶髪のショートで顔は羽野晶紀似の美人さん。唇ぷっくりの色白で男好きするタイプ。


散々、ろぼ公と騒いでたらチークタイムのお時間がやって来なすった。



ロイヤルプラザは昔ながらのグランドキャバレー!

一時間半くらいに一回チークタイムが始まりやがる。きっとお店側がお客に延長させる為の取って置きの技何だろうが、下心丸出しのお客連中は鼻の下を伸ばしに伸ばしホステスさんに手え取られの延長料金取られのって有様よ!


おいらも美咲に手え取られホール中央へ。


甘く優しいバラード曲が流れていたと思いねえ、、、


助平サラリーマンのオヤジや鼻の下ぁー伸ばしきった商店主なんかがわんさと居やがる。二十歳そこいらのガキなんざあ~おいらっくれえしか居ねえって有様よ。



『ちょいと御免なさいな!』

『ちょいと御免なさいな!』

って美咲のの野郎と来たひにゃあおいらの手を引いて満真ん中まで連れて来やがった。


両手をおいらの首に廻して密着しやがる始末。

おいらも美咲の腰に手を廻しゃあスローな曲に乗っかりステップなんざあ踏みやがる。


“ピタっとしたワンピースなんざあ着やがって、胸やお股が当たるじゃあねえか”


おいらは速攻美咲の唇奪いダンスに合わせてスローに舌を絡ませりゃあ、ギンギンになっちまった息子を押し付けていたと思いねえ。



『大っきくなってるよ、、、』



美咲の野郎がおいらの耳元でそっと囁いた。


おいらも美咲の耳に唇近づけて未だ練習中のバリトンボイスを使って


「誰の責任だ!このケジメはきっちり付けておくんねえ」


『馬鹿!』って言うと美咲から熱っいキッスのお返しが返って来やがった。


「今度は一人で来っから、そん時ゃあ店引きで飯でも行こうや!」


『いつ来てくれるの?』


「今度の土曜日に来っから!」


『じゃあ十時半くらいにラストワンセットで来てね!お金勿体無いから』



“兄貴!御免なすって!”

“あんたが自分の彼女と同じ名前だからって安易にご指名なすったのが運のつき!”


“血を分けた兄弟よりも、あっしは気持ちいい方選びやす!”

御免なさんしと独りごちしていたと思いねえ。



上野から自宅に帰る道すがらろぼ公の野郎が真顔で、少しゃあ気晴らし出来たかってしんみり話しかけて来るじゃあ御座いやせんか?



「ああそう言やぁ~来週末、美咲と店引けで飯食う約束した。」

「お金勿体無いからラストワンセットで来て欲しいだとよ!」


「かぁ~てめえって奴あ、、、こちとら本気で心配したのに!もう二度とおめえの心配なんかしてやんねえから!」

って突然怒りだしやがった。


「誰が心配しろって頼んだ!」

「俺ぁ昔っから心の傷癒すにゃあ~新しいのを見つけ癒して来た事ぐれえ、おめえだって承知だろうが!」

「昨日ぉ今日との付き合いじゃああんめえし!」


「したっけおめえは早過ぎらあ!」

「つい今しがたブルーになってやがった癖して、もののふた時で復活するなんざあーお天道様が許しても俺が許さねえ~」



「しょうがねえだろ!こちとらおめえと違ってモテちまうんだから!」




そんなやりとりをしながらろぼ公と別れて帰宅した。










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