第2話  想いを届けられぬ相手


『おめでとう!』

『キッス!』

『キッス!』

『キッス!』


『キャー!おめでとう!』


六本木のパブで中学の同級生だった玲子の結婚式の二次会である。


目の前でラブラブなキッス。まだ何処か引っかかってやがるのは間違いねえ。

心の底から祝福出来ねえ情けねえおいらが居るじゃあ御座いやせんか。


玲子の事を知ったのは、小学校6年生の日光への修学旅行の時だった。

田母沢旅館て言う天皇陛下もご宿泊なされったてえ由緒正しき旅館は宿泊場所だ。


おいらが通う大島小学校の他、同区内の聖陽小学校、柳南小学校、西泉小学校の四校が一緒だってんだから、まるでごった煮状態よ。


何故だかおいら一人、全く縁もゆかりねえ柳南小の悪ガキ5、6人と仲良くなってつるみ西泉の奴ら相手に喧嘩したり、柳南の女の子達の着替えを覗いたりってえめちゃめちゃ楽しんでいたと思いねえ。


柳南の連中と何部屋か覗きをしている時だった。中庭越しの廊下からおいらの視界に天使が舞い降りやがった!


「何だありゃあ!」


すぐさま追いかけると、柳南の奴らもついて来て、「どうしたの?」

「あの子だよ!あの子!」

「誰だありゃあ?めちゃくちゃマブい!見た事ねえよあんな可愛い子!」

「あ~あれは聖陽の山脇玲子だよ」

「俺、塾一緒だった。」って柳南の一人が教えてくれやがった。


「山脇玲子かぁ~」

「すっげえ可愛いなぁ~」

完全な一目惚れである。コレ以降も女性を見てこんな衝撃を受けた事は無かった。

目鼻立ちが綺麗に整ってゴクミにも負けねえ完成された美人だった。


それ以降、頭ん中ぁ~山脇玲子でいっぺえよ。


中学で一緒になった時ぁ~嬉しかったぁ~


玲子達の仲良し女子チームとおいら達悪ガキグループは仲良くなり、玲子とはクラスは違ったが中一の頃からよく遊びもしていた。

したっけおいらには私学に通う彼女も居て、仲の良い友達期間が続いていたが中二の夏の終わりに突然玲子から告白されて、晴れて恋人同士となる事に。


学校帰りにサテンに寄ったり、毎日長電話したりとラブラブな日々は続いた。

ジョン.トラボルタとオリヴィア.ニュートン.ジョン主演のグリースって映画を新宿まで観に行った時にゃあ、立ち見の端っこで唇合わせたりしたモンだ。


付き合い始めて七ヶ月目でようやっとおいらの家に遊びにきた玲子。

3階のおいらの部屋でいい雰囲気になり、熱い口づけ!

おいらが玲子の上に覆い被さり口づけしながら服の上からおっぱいなんざあ触っていると思いねえ。


『遠慮しなくて良いよ。直接で、、、』


思いも余らねえ玲子の一言に一瞬固まっちまったおいらだったが、根っからのエロガキにゃあ~“待て!”されてる犬ッコロが“ヨシ”って言われて勢い良くお皿に喰らいつくみてえなモンよ。


服をたくし上げりゃあ真っ白なブラジャーがお出迎えしてくれていやがる。

まずはブラジャー越しにおっぱいを貪り、背中のホックを外しゃあ、、、

想像よりもご立派じゃあ御座いやせんか!


はやる気持ちを抑えつつ優しく可愛らしいピンクの乳房を口に含み、舌先指先顔全体で堪能すりゃあ、、、


『あっ ああ~』


恥ずかしそうに声が漏れてらあ。

おいらはもうびしょ濡れでござんす。

ガッチガチでズボンの中に押し込められてるおいらの息子は拷問同然じゃあ御座いやせんか?


おいらは勢いのままスカートの中に手を入れた瞬間!玲子の手がストップ掛けやがった。


『まだ其処はダメ!』


怒ったってえ訳じゃなく、戸惑いと玲子なりの境だったのかもちょいと悲しげだった。

でも『今度ねっ』って言ってくれたが、、、


先の昔から語り継がれて来た言葉

“今度とお化けは出た試しがねえ~”

真っことその通りで御座いやした。


その次の日から電話も出なくなり、学校でもおいらを避けるようになり結局数日後に


『元の友達に戻りましょう』


の一言で振られちまいやした。


まだ中二のガキにゃあ女心は分かりやしません、、、

“どこが悪かったのか”

“おっぱいの揉み方なのか?”

“先を急ぎ過ぎたのか?”

おいらは意味も分からず、この世の終わりかってくれえ落ち込んでズタボロよ。

イケイケどんどん怖いもの知らずのおいらの初めてのでっけえ失恋でさあ。


入学当初の玲子の教室にゃあ、同級生は勿論の事、二年生、三年生の男子や女子までもピカイチマブい玲子を見に来るってえ有様だった。




おいらの自慢の彼女。




十九っくらいの頃かなぁまた玲子から連絡が来るようになった。

実家の仕事で夜、下職さん回りの車に同乗したり、お茶しに横浜までドライブ行ったりってえ付き合いが始まった。


極めつけは二人っきりで行った苗場へのスキー。おいらは初めての雪道運転!

金曜日の夜8時くれえに出発しての現地で社中仮眠をとって滑るってえ当時定番のデートよ。

四輪スパイクタイヤに履き替えたマークⅡツインカム24で緊張しながらも関越自動車道を月夜野で降りりゃあ猿ヶ京に三国峠の関門越えて、残るはトンネル過ぎての下り坂も無事に進みゃあ苗場スキー場。

でっけえ日帰り駐車場に車を停めて、玲子の作ってきたお弁当を仲良く食べている思いねえ。


このスキーは玲子からのお誘いだった。

就職してスキーを始めた玲子はまだスキー初心者で、ガキの時分からスキーをやっているおいらにスキーを教えて欲しかったんだろう


もっとも得意なスキーで二人っきり!

あたり一面は銀世界となりゃあ告白には持って来いのシュチエーション。

この日が決まってから玲子に告白しようと決めていた。


したっけ運転席、助手席倒しての仮眠の時すら手えさえ握れずドキドキしちまって一睡も出来ねえ有様よ。

スキーじゃあ良いところは見せられ、仲睦ましい姿ははたから見りゃあ疑いようのねえ恋人同士よ。スキー場のレストランでも

『また一緒に来ようね』なんて言いやがる。


結局最後まで告白することが出来なかった。

何度も言おうとしては辞め、言おうとしては辞めの繰り返しよ。


百戦錬磨のこのおいらにも拭い切れねえ傷が残っていたって事でしょう。

好きで好きでしょうがなかった野郎から突然理由も分からず振られたトラウマ。


その後も一回でっけえチャンスも物に出来ずお互い連絡も徐々に無くなり、一年後玲子は結婚しちまった。


縁が無かったって言やあ恰好もいいが、ただただおいらがだらしなかっただけの話。

まあ弱点があるくらいの方が人間らしくて素敵じゃあ御座いませか、、、(情けねえ、、、)


顔は皆が認める美人で口は達者でべらんめえ調のチャキチャキの江戸っ娘。料理も出来れば気遣い人付き合いに長けてるとなりゃあ引く手あまたにちげえねえ。



二次会には来てねって玲子からの電話。

「勿論!楽しみにしてるよ。おめでとう!」

心にもねえ台詞を吐いちまった。


おいらの凄まじい女性遍歴の中じゃあ唯一無二の純真だったかも知れやせん。





弱さを知り乗り越えてこそ、人は強く優しくなれるもんで御座いやす。



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