第4話~~グリーンフィールド・ヤード~~
公園広場で何者かと
現時点で、調査の進展の見込みは無い。
間もなく、どこからともなくサイレンの音が聞こえ始めた。その音が、段々と大きさを増していく。衝撃的な出来事の連続で、
それから、暫く待機していると、複数人の警官隊が広場へと駆け込んできた。制服姿の警官が6人に、スーツ姿の男が二人、そのスーツ姿の二人組がこちらへ向かってくる。事情聴取なのだろうが、アイヴィーがオドオドとこちらへ目配せしてきてる為、僕が対応する事にした。
「えー……こちらは警察の者ですが……先ほど、死体と思わしき物を発見したとの通報を受けまして……発見者は貴方達、という事でよろしいですかね」
スーツ姿の二人組のうちの一人、癖毛の目立つ、灰色の短髪男性がどこか気の抜けた様に声を掛けてくる。茶色のコートを纏った姿はドラマなどで見る、まさに刑事といった風貌だが、なんだか覇気が感じられない。その男の背後では、眼鏡をかけた眼光鋭い男が、早く質問に答えろとでも言わんばかりにまるで睨みつけるように視線をこちらに飛ばしている。
「はい、悲鳴を聞いて駆けつけてみると、辺り一帯に異臭がしました。それで、辺りの様子を確認したところ、そこの噴水の中に肉片のようなものが……恐らく、人間の死体だと思います」
質問に答えながら、噴水を指で指し示す。それを確認した刑事風の男が、眼光の鋭い男に目配せをすると、その男は
「あーと、申し訳ないですが暫くここでお待ちください。手間をお掛けしますが、後でまた詳しく話を聞かなきゃなりませんのでね」
刑事風の男は、そう言葉を言い残し眼光の鋭い男と共に、警官隊の後を追い、噴水へと向かった。
ツンツンと、脇腹を何者かにつつかれる。先ほどまで、僕の影で様子を伺うようにしていたアイヴィーが真横に立っていた。
「アンダーソン君、アンダーソン君、先ほどの男性、警察の方にしてはなんだか気の抜けたような人でしたね。なんだか、あの人とは気が合いそうな気がします」
「なら、次の聴取の時はキミが話をしてよ。そもそも、事務所の代表はキミなんだからさ」
「そ、そういうのはアンダーソン君の担当なんですからお願いしますよ……それはそうと、あの男性の後ろにいた人、なんか私を睨みつけてなかったですか? あの鋭い眼光……心臓が止まるかと思いました」
そんなやり取りを
広場内は
「あー……大変お待たせしました。申し訳ないんですが、もう
刑事風の男は癖の強い髪の毛をわしゃわしゃと掻き、乾いた笑いを飛ばす。相変わらず、その背後には眼光の鋭い男も立っていた。
「はい、構いません。こちらも手間が省けて助かります」
「はは、ありがとうございます。……っと、申し遅れました。俺……あー……私はグリーンフィールド署、警部のジョージ・エバンズです。で、こいつが部下のトニー・ロックウェルです。目つきと愛想は悪いですが、優秀な奴ですよ」
ジョージ警部が身体をやや斜め方向に動かし、背後に立つ眼光の鋭い男を紹介する。その、紹介された男、トニーは警部をジロリと見ると短く「警部」とだけ言葉を発した。
警部は気まずそうにわしゃわしゃと髪を掻くと、改めて僕たちの方へ向き直した。
「あー……では、まずお名前をお聞きしてもよろしいですかね」
僕はちらりとアイヴィーをみやる。彼女は、任せたという態度を、笑顔で
「僕は、ウィリアム・アンダーソンです。で、こちらが……」
僕はアイヴィーの腕を掴むと前へと引っ張り出した。突然の僕の行動に全く対応できないアイヴィーは抵抗も出来ずに僕の前へと出る形になった。つまり、警部たちの目の前だ。
警部たちの視線がアイヴィーに注がれる。えっえっ?と、戸惑いながらアイヴィーは僕の顔を物哀しそうに見つめ、ゆっくりと警部たちの方へ視線を動かしていった。
「あっ……その……わ、私はアイヴィー・ライブラ、です。その……えへへ……お世話になっております」
緊張のあまりにアイヴィーが妄言を吐く、なにがお世話になっているだ。過去の依頼でなんどか警察関係者と関わった事はあるが、とくにこれと言って
「ライブラ……?」
アイヴィーの狼狽っぷりに呆れていると、あの、どこか気の抜けたような警部が、どことなく訝しむようにアイヴ―へ視線を注いでいる事に気が付いた。
「もしや、キミ達はアイヴァン・ライブラさん……ライブラ探偵事務所の関係者なのか……?」
先ほどまでの、どことなく気怠そうな雰囲気とは打って変わって、食い気味にアイヴィーに詰め寄ると、その華奢なアイヴィーの両肩を両手でガシッと鷲掴みにした。「ひぅい!?」と変な悲鳴をあげてビクッとアイヴィーが跳ねる。警部の背後に立ったままのトニーが肩を
「キミは、ライブラ探偵事務所の関係者なのか?」
「ひ……ひゃい……そ、そうです……」
警部に詰め寄られたアイヴィーはその警部の気迫に気圧され、今にも泣きそうな上ずった声で答える。恐怖のあまりにアイヴィーはぎこちない笑顔を涙と共に浮かべていた。
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