第64話 テクニカル分析 (4) トレンドが止まる要因

 どんなに強い「上昇トレンド」でも壁にぶつかったように止まってしまうこともあります。


 まず考えられるのは「直近の高値」です。

 以前この「直近の高値」で株価が反落したわけですから、今回も同じ株価で反落して「下降トレンド」入りするおそれがあります。

 なので「直近の高値」に近づいてきたら、すぐにでも利益確定できるように準備しておきましょう。

 板情報を見れば、「直近の高値」近辺に大量の売り注文が載っている状態が想定されます。もしそうなっていたら反落に備えるべきです。

 もちろん「上昇トレンド」が強力で「直近の高値」を軽々と突き抜けて上昇を続ける可能性もあります。

 また場合によっては「持ち合いトレンド」で「直近の高値」近辺をうろうろすることもあるので、その場合はいったん利益確定しておき、再び「上昇トレンド」に乗ったところを買い直せばよいでしょう。


 次に考えられるのは「抵抗帯レジスタンスライン」です。

 過去のチャートを見ていると、毎回同じ価格帯で反落していく局面をよく見かけます。

 いくら「上昇トレンド」に載っているからといっても、「抵抗帯」は再現性の高いシグナル(つまりプレーヤーの多くが意識している)なので、その価格帯近辺に大量の売り注文が載っている状態が想定されます。もしそうなっていたら反落に備えるべきです。


 さらに考えられるのは「キリのよい株価」です。

 プレーヤーも人間ですから、株価目標を決める際、無意識に「キリのよい株価」を目安としてしまいます。だから「キリのよい株価」には大量の売り注文が載って待ち構えている状態が想定されます。

 となれば、こちらも「直近の高値」同様反落の危険に留意してください。


 もうひとつ考えられるのは「前日終値からギャップアップして当日始値がつく」場合です。

 こちらは寄付き前に大量の買い注文が集まり、板寄せをした結果「前日終値」からギャップをあけて上げる状況です。

 基本的に「上昇トレンド」ではよく起こることなのですが、たいていの場合いったん分足チャートで株価が下がります。

 下げ止まりを買えばそこから一気に「上昇トレンド」に乗って値幅がとれますが、どこが下げ止まりかなんて結果論でしかわかりません。

 「短期移動平均線」がトレンドを示す「中期移動平均線」を一時的に割り込むこともありますので、ここで相場の印象が悪くなって「下降トレンド」入りしていまうおそれもあります。

 もちろんギャップアップして直近の株価すら上抜けて始まって、あとはどこにあるかわからない天井を目指すだけ、という「上昇トレンド」の継続もじゅうぶんにありえます。


 他にも考えられるのは「値幅制限」です。

 前日終値によって当日株価の値幅に制限が設けられています。

 市場システムではこれ以上絶対に株価は上がらないので「上昇トレンド」は最高潮に達するのです。

 そのまま「ストップ高」で大引けを迎えたら、翌日始値でさらにギャップアップして「値幅制限」まで連騰する可能性もあります。

 スイングトレードで勝負しているのなら、「値幅制限」での「ストップ高」は基本的にホールドです。ただし「直近の高値」「キリのよい株価」が壁となって立ちはだかる可能性も残されてはいます。




 もし「上昇トレンド」中にバランスをブレイクする大きな成行売り注文が約定されて株価が大幅下落し「上昇トレンド」が崩れた場合は、すぐに利益確定してください。

 これはとくに仕手株やアルゴリズム注文などでよく見られます。


 ただし仕手株の場合、大きな成行売り注文のいくらか前に大きな成行買い注文が約定されて株価が大幅上昇し、そこに仕手の末端が群がってさらに上昇、それに気づいた一般トレーダーが材料も確かめずに買い注文を入れるので「上昇トレンド」が想定外に過熱してしまうものです。


 株価のローソク足が「中期移動平均線」をはるかに乖離して上昇した場合は、仕手筋やアルゴリズム注文が動き出した可能性があります。

 こうして築かれた「暴騰」は「イナゴタワー」と呼ばれます。


 イナゴタワーを発見したら大きな成行売り注文が出る前までに利益確定しておくべきです。しかしいつ大きな成行売り注文が約定するかわからないのです。

 最大の値幅をとりにいこうとはせず、株価が「中期移動平均線」をはるかに乖離した段階で、欲張らずに利益確定しておきましょう。

 そして反落・暴落した時に今までの「上昇トレンド」内に収まっていれば、また普通の「上昇トレンド」と同じように処理していきます。




 ここで提案です。


 ネット証券などで手数料があまりかからず、信用買いで回転売買ができる(デイトレードの場合)前提であれば、反落のおそれのある「直近の高値」「抵抗帯レジスタンスライン」「キリのよい株価」に近づいたら、いったん利益確定してしまいましょう。


 「大きな成行買い注文の約定」も利益確定のチャンスです。

 もしこれを逃すと「イナゴタワー」が築かれてその頂点から反落どころか暴落に巻き込まれてしまいます。


 もし反落したら手仕舞いが早かったことが幸いして反落を確認してから利益確定するよりも値幅がとれます。

 もしぶち破ったらぶち破ったところで買い直せば済む話です。

 分厚い売り板があるのですから、いつでも買い直せます。

 もし方向性がなくうろうろするようなら反落するかぶち破るかを長い目で焦れながら見守らなければなりません。


 そんな気苦労をするくらいならいっそ利益確定して手ぶらで「上昇トレンド」「下降トレンド」いずれが出るか気を病まず、夢を託さず、冷静な頭脳で観察できます。


 株価たったの1、2円程度で含み益が大きく目減りするような小型株を扱っているのでなければ、「いったん利益確定」が最適解です。




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