第63話 テクニカル分析 (3) 移動平均線
トレンドを視覚化するために移動平均線を見る
市場の参加者は皆「移動平均線」をもとに「過去の値動き」を見ています。
「移動平均線」とは、当日を含む過去n日間までの終値の平均値を折れ線グラフで表したものです。
しかし何日間までの株価を参照すればよいのでしょうか。
市場の参加者の多くは当日を含む過去5日間、過去25日間、過去75日間の「移動平均線」を見ています。
当日を含む過去5日間の「移動平均線」はだいたい1週間の株価の平均を表しています。金曜日に「5日移動平均線」を参照すると「その週の月曜日から当日金曜日までの5日間の株価の平均」がわかるのです。
つまり今週の平均株価は先週の平均株価よりも高くなったか安くなったかを視覚化できます。
当日を含む過去25日間の「移動平均線」はだいたい1か月間の株価の平均を表しています。だいたい1か月間とは5週間を目安とします。
1か月間で市場が開いているのは最大で23日です。
それを25日と解釈するのは、昔の株式取引は土曜日もできたためです。つまり週6日で4週間(1か月は平均4.3週なので26.08日となります)です。
最後の1週間を含んだ1か月間の値動きを見たいからです。
つまり今月の平均株価は先月の平均株価よりも高くなったか安くなったかを視覚化できます。
当日を含む過去75日間の「移動平均線」はだいたい3か月間の株価の平均を表しています。市場は1か月間で最大23日開いていますが、3か月間では最大66日開いています。それでも1か月間を75日間と解釈するのは、25日同様土曜日も取引していたからです。(理論上は78.25日となりますが、祝日を加味すればだいたい75日となります)。
最後の1か月を含む3か月間の値動きを見たいからです。
つまり今四半期の平均株価は前四半期の平均株価よりも高くなったか安くなったかを視覚化できます。
もし、より1か月間をより正確にひと月の市場と一致させたければ「22日移動平均線」とするべきです。ひと月で最も市場が開かれないために1日を土曜日と仮定すると、1か月28日から30日の月は20日、31日の月は21日開いている計算になります。
ひと月で最も市場が開かれているために1日を月曜日と仮定すると、1か月28日の2月は20日、閏年2月は21日、ひと月30日は22日、31日は23日となるのです。
他にも「20日移動平均線」を提唱している方がいらっしゃいます。
ではなぜ今でも「25日移動平均線」が通例となっているのでしょうか。
多くの市場参加者が「25日移動平均線」を見ているからです。
つまりいくら「22日移動平均線」や「20日移動平均線」のほうがより正確な1か月間をとらえられるとしても、市場参加者の大多数が判断基準にしていないのであれば意味がありません。
また現在の東京証券取引所で株式を売買しているプレーヤーの6割から7割が外国人です。
アメリカのニューヨーク証券取引所であれば月曜日から土曜日まで開場しています。つまり1週間で最大6日、1か月で最大27日開いているので、「25日」で見るのがニューヨーク証券取引所と東京証券取引所の折り合いがつくというわけです。
四半期を「75日」と規定するのもひと月「25日」として3か月を単純に見たいからです。
つまり市場が開いている正確な日数にかかわらず、大多数の市場参加者が1週間「5日」、1か月間「25日」、1四半期「75日」の設定で「移動平均線」を見ています。
だから「5日移動平均線」を「短期移動平均線」、「25日移動平均線」を「中期移動平均線」、「75日移動平均線」を「長期移動平均線」と呼ぶのです。
トレンドは中期移動平均線で判断する
株価が上昇トレンドにあるのか下降トレンドにあるのか、明確な方向性を持たない持ち合いトレンドにあるのかを調べるのに使うのは「25日移動平均線」つまり「中期移動平均線」です。
過去1か月間の平均株価を調べるとひと月の方向性が見えてきます。
「中期移動平均線」が右肩上がりなら、3日前までの1か月の平均株価よりも一昨日までの1か月の平均株価が高く、昨日までの1か月の平均株価はそれよりも高いことを示すのです。
もし「5日移動平均線」つまり「短期移動平均線」も右肩上がりなら、それより前の残りの平均株価がまったく同じでも「中期移動平均線」は緩やかな右肩上がりとなります。
ということは「中期移動平均線」の右肩上がりの傾きが急であるほど「上昇トレンド」の勢いが強いことを示しているのです。
「中期移動平均線」が右肩上がりでも、「短期移動平均線」がそれを下回っていると明確な「上昇トレンド」とは言いがたくなります。
また「短期移動平均線」が「中期移動平均線」の上にあっても接近してくると短期的な「上昇トレンドの弱化」が見てとれます。
ここは短期的な上昇トレンドの踊り場であり、プレイヤーが「押し目」と呼ぶ状態になるのです。
一時的な弱気を買っておけば、再び強い「上昇トレンド」へ戻ったときに値幅を広くとれます。
この「短期移動平均線」が一時的な弱気で下がってきて「中期移動平均線」に近づいてきたところを買うのを「押し目買い」と呼ぶのです。
「中期移動平均線」の傾きをチェックすれば、過去1か月強含みだったのか弱含みだったのかがわかります。
だから「中期移動平均線」の傾きをチェックするだけで「上昇トレンド」なのか「下降トレンド」なのか方向性のない「持ち合いトレンド」なのかがわかります。
「上昇トレンド」の確率をさらに強化するためには、「短期移動平均線」が「中期移動平均線」の上にあって全体的に右肩上がりであること、株価がその「短期移動平均線」のさらに上にあって全体的に右肩上がりであることをチェックしましょう。
「下降トレンド」はこの逆になります。ちなみに「押し目買い」の正反対、「短期移動平均線」が一時的な強気で上がってきて「中期移動平均線」に近づいてきたところを売るのを「戻り売り」と呼ぶのです。
長期移動平均線もトレンドの下支えに
「長期移動平均線」が「中期移動平均線」の下にあり、ともに右肩上がりで一定の距離を保っている場合、その上昇トレンドはいっそう強固なものとなります。
そもそも当四半期の平均株価が右肩上がりということは、四半期の間、株価が全体的に上がり続けていたことを示すのです。
もし「長期移動平均線」が平行から右肩下がりに変化していったら、当四半期のトレンドの底流は「下降トレンド」へと転換する兆しとなります。
四半期の値動きを可視化することで「周期」を感じとれるのです。
「長期移動平均線」を正しく見るには、月足から週足、日足の順にチャートを見ていきましょう。
「長期移動平均線」は3か月「周期」なので、月単位、週単位で「上昇トレンド」に乗っていたら、間違いなく地合いはよいのです。
その前提があるからこそ「長期移動平均線」はトレンドを示す「中期移動平均線」を下支えします。
ちなみに週足・月足のデフォルトは「5・25・75」です。
しかし日足を考えた場合「5週移動平均線(25日移動平均線・1か月移動平均線)」「15週移動平均線(75日移動平均線・3か月移動平均線)」「53週移動平均線(365日移動平均線・12か月移動平均線)」とすれば週足チャートはとらえやすくなります。
また「3か月移動平均線(四半期移動平均線)」「12か月移動平均線(1年移動平均線)」「48か月移動平均線(4年移動平均線)」とすれば月足チャートは季節要因をとらえやすくなります。
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