第51話 デイトレードに適した○○

デイトレードに適した○○


 デイトレードはよほど取引に慣れていないと、一瞬で大きな損失を抱えます。

 売買を滞りなく行なえる。

 これはデイトレードをするうえで欠かせないスキルです。


 スキルのある方はデイトレードへ挑んでも大やけどまではいかないかもしれません。

 ですが、甘く見ていると一瞬で大損を喰らうのも、デイトレードなのです。

 今のデイトレードは証券会社などのAI取引が主流で、生身の人間ではなかなか太刀打ちできません。

 それでも個人でデイトレードをするのは可能な現状ではあります。


 これを知ったうえで、デイトレードに適した○○を考えてみます。




 デイトレードをするには、まず「会場」を見つけなければなりません。

 「会場」ってどういうこと?

 簡単にいうと、証券会社などのプロが日計り取引を行なっている銘柄のことです。


 どの銘柄が「会場」かなんてわからない。

 そう考えるのであればデイトレードはしないほうがよいでしょう。

 「会場」を見極める方法もあるのです。


 それが「出来高ランキング」「売買代金ランキング」です。

 たくさん取引されているのは、それだけ多くのAIが参加している証拠です。

 しかも今は前場が開いた途端に仕掛けが始まります。

 なので前場が開く9時00分からすぐに「出来高ランキング」「売買代金ランキング」をチェックしましょう。

 上位の銘柄が「会場」です。


 基本的にデイトレードで稼ぎたければ、AIを相手にして勝たなければなりません。

 ですがすべてが同じほうを向いて取引されているわけでもないのです。

 単純なアルゴリズムで動くAI。それを食い物にするアルゴリズムで動くAIなど。

 これらに勝てなければデイトレードでは稼げません。




 「会場」はわかりました。

 ではデイトレードで勝つにはどうするか。

 戦術の問題です。


 デイトレードで稼ぎたければ、信用取引ができるつまり「空売り」できるのも条件になります。

 買ったはいいがそこからすぐに買値を割って株価が下がっていく。

 デイトレードではよく見る光景です。


 このとき買建てを素早く損切りするとともに、売建てつまり「空売り」を仕掛けて下落の値幅を稼ぎます。

 もし信用取引ができないと、一回判断ミスをして買い場をしくじると、その日の取引が終了してしまいます。

 現物取引では買って、売って、また買う、まではできます。

 しかしそれを売れないのです。

 だから一回買いに失敗すると、その銘柄ではその日は取引できなくなります。

 ですが信用取引の「信用買建て」であれば、回転の規制がありません。

 ひとつの銘柄で何回でも「買って売って」「買って売って」を繰り返せます。

 「空売り」という武器を手に入れるためにも、いくらでも「買って売って」が繰り返すためにも、信用取引が必須となります。


 しかし、信用取引は大きな損失を招く可能性があるため、現物取引で利益を着実に積み上げられるようになってから手がけましょう。


 ただし信用口座を開設するのは、早いほうがよいかもしれません。

 証券会社によっては、信用口座を開設しているとさまざまな特典をプラスしてもらえます。

 私は楽天証券で信用口座を開きましたが、開設しているだけでも楽天銀行の普通預金の利率が優遇されます。(特典は証券会社によっても時期によっても異なります)。




 ではデイトレードの戦術についてお話し致します。


 基本的には「株価が下がってきて、出来高が多いのに下げ渋ってきた」ら「今回の下げ圧力が限界に近づいている」と判断します。

 これはAIが底値として設定している株価に大量の買いがセットされているためで、株価の下落がここに引っかかると、「出来高は多いのに下げ渋る」状態になります。

 AIの底値設定を見たければ「板情報」を見てください。買い板で数量が多いところがAIの底値設定です。


 ただし「一般のAIを食い物にするAI」は、ここであえて買わせて反発させすぐに大量の売りを浴びせてきます。すると一般のAIは「株価が買値を下回る」ので自動的に「損切り」をせざるをえなくなるのです。

 この動きが、いわば「反発すると思ったのに、すぐに株価が急落していった」「ダマシ」の状況の原因です。

 ほとんどの場合、この状況は「会場」でしか起きません。

 それもそのはず、「AIを食い物にするAI」の働きによるものだからです。

 「会場」でない、静かな銘柄の相場ではそもそも通常のAIがいないので「AIを食い物にするAI」が役に立ちません。


 だから、デイトレードの難易度を下げたければ、「会場」でない銘柄を狙うのも手です。

 騙される回数を減らせますからね。

 その代わり、大きく儲けられません。

 多くのデイトレーダーが、危険を顧みずに「会場」で取引しているのも、大きく儲けられるからです。



 デイトレードの基本戦術は「株価が下げてきて、出来高が多いのに下げ渋っている」ときを捉えて「反発を確認したらすぐAIに追随して買う」のです。

 もし「食い物にするAI」が「ダマシ」をしてきたら、買値を割ったらすぐに「損切り」してください。

 「これから上がる確率が高い」状況なのに買値を割るのは明らかに「食い物にするAI」が働いています。これには逆らわずすぐに「損切り」です。

 逆らうとさらなる下落に巻き込まれます。

 しかも「いつか買値より上に来る」と思い込んでいても、実際に買値を上回るまでに時間を要してしまいます。この時間があれば、「買って売って」を何サイクルかできるはずです。つまり時間と資金を無駄にします。

 なのでデイトレードではとくに「思惑と異なったら即損切り」が鉄則です。



 次の基本戦術は「損はわずかなうちに損切りし、利は我慢して伸ばす」ようにしてください。

 「損切り」のたいせつさを説いたばかりなので、こちらはよいでしょう。

 「利益が乗ってきたら、わずかな利益でもすぐに確定したくなる」のが人の性です。

 しかし「損切り」を徹底しているのに、それと同じくらいの利幅しか手にできないのであれば、一勝一敗するだけで利益が消し飛びます。

 たとえば買値から△1円で「損切り」しているのに、買値から+1円で「利益確定」していたら、2つ合わせてプラマイゼロです。

 デイトレードは瞬間瞬間の判断が要求されるので、判断ミスも日常茶飯です。

 だからこそ「損切り」は「買値を割ったらすぐに」しましょう。

 一回の損が△1円で済んでいれば、それほど致命傷にはなりません。


 そして「これから伸びていく」流れに乗ったら、すぐに含み益を失いたくないからと焦って「利益確定」しようとせず、できるだけ利益を伸ばしてください。

 「我慢」すればするだけ利益が乗ってきます。

 もちろん伸びが頭打ちした場合、ある程度「利益確定」するべきです。

 最悪、そこから急落して奈落の底へ叩き込まれます。


 「出来高が多いのに上げ渋った」ら、確実に売り抜けてください。

 もちろん「食い物にするAI」が「ダマシ」を入れて「ふるい落とし」にかかることもあります。

 普通のAIと個人トレーダーをふるい落として、自らの利益を追求しようとさらなる上昇を演出するのです。


 ここで「あぁ、あそこで手放さなければもっと利益が取れたのに」と思ってはなりません。

 デイトレードは「1円でも高く」というスタイルではなく「確実に大きな値幅を手に入れつつ、回数を増やして一日の利益を膨らませる」スタイルで行なうものです。




 デイトレードで信用取引をオススメしていると、中には「レバレッジを効かせて3.33倍の金額をトレードしよう」と思いたくなるかもしれません。

 しかし「絶対にレバレッジ取引だけはしない」でください。



 レバレッジ取引とは、証券会社の設定にもよりますが、証拠金を30万円預けると100万円ぶんの取引ができるものを指します。

 大きく儲けようと思えば、当然レバレッジ取引で3倍以上の金額を動かしたくなります。

 しかし「株式取引は9割が負け組」になる理由のひとつが、この「レバレッジ取引」なのです。


 たとえば「30万円を預け入れて100万円ぶんの株式を信用買い」したとします。

 そのとき100万円が160万円まで伸びて決済したら、借り入れた100万円を返却して手取り60万円が残ります。

 しかし100万円が40万円まで減少して決済したら、借り入れた100万円に満たないので60万円の返還を求められます。すると預け入れていた証拠金30万円は没収され、さらに30万円の借金を背負うことになります。


 もちろん貸す側もとりっぱぐれないように、証拠金が足りなくなりそうな状況に陥ったら「追加証拠金」いわゆる「追い証」でこちらに警告を発します。

 「追い証」がかかった時点で、追加の証拠金を預け入れるか、手持ちの株式をすべて売り払って足りなくなった証拠金を売値から差し引くかします。

 基本的に「追い証」がかからないように取引するべきですが、確実に「追い証」を失くすのは難しい。

 その場合「追い証」を払うべきか現金化するべきか。


 絶対に「現金化」して借り入れた資金を返還してください。


 そもそも「追い証」がかかるのは、あなたの想定とは逆に株価が進んでいるのです。

 つまり想定外なのですから、この先もどうなるかわかりません。

 「買値を下回ったら即損切り」していれば「追い証」はまずかかりませんが、放置するとそのうち「追い証」がかかります。

 繰り返しますが、「追い証」がかかった現状は、あなたの想定外です。

 この先の株価の動きを予測できるものでしょうか。

 そもそも現状は想定外なのです。この先が読めるはずもありません。

 だから「買値を下回ったら即損切り」が鉄則です。



 「確実に儲けられる」ときなんて、株式を扱っているとまずないことに気づきます。

 つまり「株に絶対はない」のです。

 であれば、わざわざ「レバレッジ」をかけてリスクを増大させるなんてナンセンスです。

 信用取引でないと「買って売って」「買って売って」を繰り返す回転売買ができないのですが、そのときも証券口座に入金している金額以上は売買しないでください。

 入金している金額までであれば、通常の取引とほとんど変わりません。

 もちろん金利や手数料がとられるので、完全に同じわけではないのです。

 ですが入金額までの取引であれば「追い証」がかかるのはかなり先の話になります。

 そのうえで「買値を下回ったら即損切り」していれば、「追い証」を恐れる必要はなくなります。



 信用取引のもうひとつの機能が「空売り」です。

 これは通常の「買って売って」ではなく、「空売りして買い戻して」という取引になります。

 株価が下落するのがわかっていたら、まず証券会社から株式を借りて「空売り」をします。

 株価が順調に下がってきて程よいところで「買い戻し」て証券会社へ株式を返還するのです。

 この「空売り」から「買い戻し」までの下落幅があなたの利益になります。

 一瞬「相場が下がっていても儲かるんだ」と思うかもしれません。

 しかし想定外に株価が上昇していったら。

 目も当てられない惨状に見舞われます。

 通常の取引「買って売って」なら、最大の損失は株価が0円になることです。あなたの株式が無価値になって終わるだけ。たとえば10万円の株式が0円になったら△10万円の損失で済みます。

 しかし「空売り」の「空売りして買い戻して」の場合。たとえば10万円の株式が20万円になれば△10万円ですが、株価に天井はありません。100万円になってしまったらなんと90万円の損失を被ります。あなたの資金が30万円だったら、60万円の借金を背負うのです。


 だから「空売り」はよほど取引に慣れて、確実に儲けられる場面が来たときだけに限られます。

 「空売り」をするなら「空売りした価格よりも高くなったら即損切り」を徹底してください。



 そして「株式取引の最悪手」が「空売りのレバレッジ取引」です。

 これはもう「破産する以外に道はありません」というほど危険な代物です。

 どれほどの強者となろうとも、「空売りのレバレッジ取引」に一度でも失敗すると全財産を失い、巨額の借金を背負う可能性が高まります。


 これからデイトレードでもしてみようかな。

 なんてノリで気軽に「空売りのレバレッジ取引」を扱ってはなりません。

 株式取引で一発退場を喰らう人の多くはこの「空売りのレバレッジ取引」に失敗しています。

 ただでさえ先の読めない株式取引で、さらにバクチ要素を増やす必要なんてありません。

 証券口座に入金した額だけに限って取引をすればよいのです。

 単純に「空売りで下落相場でも利益が出せる! しかもレバレッジ取引をすれば少ない元手を大きく増やせる! 組み合わせたら最強じゃん!!」なんて考えてはなりません。

 「空売りのレバレッジ取引」はあなたのひらめきよりも惨憺たる結果をもたらします。


 絶対に「空売りのレバレッジ取引」はやめましょう。


 やめないとあなたの人生そのものが終わりかねませんよ。


 デイトレードに適した○○は以下のとおりです。


「会場」参加者の多い、売買が活発で値幅のとれる銘柄。

「戦術」1. 買って売って、買って売って、の回転売買。

    2. 買値を下回ったら即損切り。

    3. 利益が乗ってきたら我慢して伸ばせるだけ伸ばす。

    4. 信用取引ができれば空売りして買い戻して、でも儲けられる。

    5. ただしレバレッジ取引はいっさい禁止。


 あとはあなたのセンス次第です。

 まずは手持ちの資金の十分の一くらいの金額で試してみましょう。

 もし確実に利益を出せるようになれば、デイトレードを主軸に戦ってもよいでしょう。

 少しでも損失が膨らむようなら、あなたにデイトレードは向いていません。

 もっと時間軸を伸ばして取引することをオススメ致します。



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