第41話 時間軸を短くすると損も増大する

 株式取引は、株式の保有期間によっていくつかのスタイルに分かれます。


 その一日の中だけで購入から売却までを完結させる「デイトレード」

 数日から数週間保有する「スイングトレード」

 数カ月から数年まで保有する「中長期トレード」


 一般的に、サラリーマンに推奨されているのが「スイングトレード」です。


 東京証券取引所が開いている時間は仕事をしているため相場を見られません。

 だから「デイトレード」はやろうとしてもできっこない。


 しかし「スイングトレード」なら「寄付よりつき」または「大引け」でのみ株式を売買できるので、仕事をしている方でも比較的ハードルが低い。

 なので「スイングトレード」を推奨している書籍が多かったのです。


 しかし最近は「中長期トレード」に関する書籍が増えました。

 実は「スイングトレード」でも先の読めない「不確実性」が高まってしまったからです。

 日中はアルゴリズム取引や機関投資家、仕手筋などが活動しているため、不確実性が高い、というのが常識だったのです。

 しかし今日の結果が出てから、翌日の値動きがどうなるか、という予想が立てにくくなっています。

 だから「数日」保有する程度の取引をしていると、思わぬ損失に見舞われる機会が増えたのです。


 そこで「個人投資家は中長期トレードに専念する」書籍が増え始めたのです。


 でも、これまで「デイトレードは儲かるけどバクチ性が高い」と思われていて、「中長期トレードは業績を見通せないからいつ上がるか下がるかわからないものに投資できるか」と考えられていたのです。


 その不利を補う「10倍株」いわゆる「テンバガー」という言葉が持て囃されています。


 成長性のある小型株を買って、四半期決算で売上や営業利益、経常利益が黒字となって株価が飛躍するのを待つ、という戦術です。


 この「成長株の中長期トレード」が、現在では株式取引の王道とみなされるようになっています。


 なにせ「チャートが読めなくても、株価が2倍、4倍、10倍に増える」という話には「夢」があります。

 どんなに現実味がなくても「夢」を売るのが株式取引の書籍の役割です。


 「中長期トレード」の特徴は、株価の中間をまったく見ない、という点にあります。


 「デイトレード」や日に何度も利鞘を稼ぐ「スキャルピングトレード」などは、取引時間が短ければ短くなるほど利益を上げる可能性もありますが、同じくらい損失を被る可能性もあるのです。


 株価は一日の間でも複数回上下動するのが当たり前です。

 一日のうちに「買って売る」という「デイトレード」なら、一回の底値から高値までの値幅を獲ることになります。

 たとえば+20円の幅があれば、一日で株価+20円くらいの利益が出せる計算です。

 しかし「少し利益が出たらすぐ利益確定して、また買い目が出たら買って利益が出そうならすぐ利益確定する」という「スキャルピングトレード」では、たとえば一回の値幅が+5円を獲れれば株価+5円くらいの利益が出せます。もちろん「スキャルピングトレード」は何回でも買っては売ってを繰り返すため、値幅+5円を4回獲れれば「デイトレード」と同じ株価+20円くらいの利益になるのです。


 そうなると「スキャルピングトレード」でチマチマと利益を積み上げるのが最も確実ではないか、と思われる方がいらっしゃるのですが、実際はそうではありません。


 株価は上がると思って買っても下がることもあります。

 確率を高める工夫をしなけれは、勝率は50%になるのです。


 「スキャルピングトレード」も勝率50%なら、株価+5円を4回獲りにいっても半分は損をするので、損切りライン次第ですが、4回も売買を繰り返してもプラスマイナスゼロとなって、手数料だけが出ていくことになりかねません。

 もし損切りせず「いずれ上がるから、それまで放置」などしていようものなら、損失が膨らんで、株価△50円を叩き出す可能性もなくはないのです。

 これでは取引回数を増やしたがために、大損してしまいます。


 「デイトレード」も「いずれ上がるから、それまで放置」などしていたら、間違いなく損失が膨らんで「塩漬け」になってしまいかねません。



 取引回数を増やせば増やすほど、勝つ確率は50%に近づいてしまうのです。



 そこで現在の株式取引の書籍では「成長株で10倍」とか「成長株で1億円」といった煽り文句が幅を利かせているのです。

 これらは基本的に「中長期トレード」になります。


 四半期つまり三カ月で業績が高まり、株価が高騰するのを待つ、という戦術が「成長株投資」の基本です。

 取引回数も、買ってから売るまで、最低でも三カ月ほど時間をとることが多い。


 先に書きましたが「取引回数を増やすほど、勝率は50%に近づく」ものです。

 それが買って三カ月に一回売るチャンスを見極める「成長株投資」なら、売買回数を大幅に減らせるメリットがあります。


 つまり「取引回数を減らすほど、勝率を高めやすくなる」のが「成長株投資」のキモです。



 「成長株投資」は四半期ごとにある決算資料を読んで、利益が積み増されているか確認し、積み増されていれば人気化して株価が高まる、という市場原理を利用して勝とう、という戦術です。


 成長性のある銘柄を見つけるのが難しいのですが、そのあたりは株式取引の書籍を読めばある程度ポイントがわかるようになっています。



 「ラクして確実に利益を出せる」


 これは「スイングトレード」の指南書が全盛だった時代から唱えられている言葉です。


 しかし本当に「ラクして確実に」なんてできはしないので、たいていはビギナーズ・ラックで一度大勝ちするものの、その後負けが込んで負け組になるトレーダーが多い。



 結局のところ、どの時間軸で勝負するのが「無理なく取引を続けられるか」を考えておくようにしてください。


 株式取引は「取引回数を増やすほど、勝率は50%に近づく」ようになっています。


 毎日確率に賭けるパチンコ・パチスロのような射幸性があるほうがよい方は「スキャルピングトレード」や「デイトレード」をすればよい。


 あまり派手な儲け方はしないけど、より確実に資産を増やしたい方は「中長期トレード」をすればよい。


 もちろん一時代を築いた「スイングトレード」をしてもよいのです。



 株式取引をするときに肝に銘じてほしいのが「取引回数を増やすと、勝率は50%に近づく」という真理です。

 これさえ押さえておけば、自分にはどの時間軸が合っているのかがわかるようになります。


 自分向けの時間軸が分かれば、株式取引の書籍を買うときも、まったく異なる時間軸の書籍は買わなくなります。

 「デイトレード」で稼ぎたい方は「デイトレード」の、「スイングトレード」で稼ぎたい方は「スイングトレード」の、成長株での「中長期トレード」で稼ぎたい方は「成長株投資」の書籍を買って読めば事足ります。

 「デイトレード」で勝負したい方が「成長株投資」の書籍を読んでも取引はうまくなりません。

 「逆もまた真なり」ですよ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る