第14話 損切りは正義

損切りは正義


 上がると思って買ったのに株価が下がった。

 下がると思って空売りしたのに株価が上がった。


 「株式取引」ではよく起こります。


 とくに「指値注文」をしている方は、前回書いたとおり「買ったら下がった」「売ったら上がった」に何度も直面しているでしょう。

 おそらく「買ったら上がった」「売ったら下がった」よりも確率的には高かったはずです。


 もし「買ったら下がった」ら皆様はどう対処するでしょうか。


 「上がると見込んで買ったのだから、実際に上がるまでポジションをキープする」方が多いかもしれません。

 しかしそれは悪手です。


 「買ったら下がった」は「指値買い」で約定したときによく起こります。

 なにせ株価が指値まで下りてこなければ、約定できないのですから。つまり相場の流れは下げ圧力があるときに買っています。あなたが約定した株価から急に反発するなんて現象はまずありえません。


 たとえば現在の株価が1,020円。1,000円に指値買いの注文を出して約定しました。

 つまり株価は注文を出したときより20円下りてきたのです。

 それで、なぜ1,000円で反発すると思ったのか。その根拠が論理的ではないのです。


 ある人は板情報を見て「1,000円の指値買い注文が分厚いので、ここまで下りてきたら食い尽くせず反発するはず」と見ます。

 しかし株価は20円も下がってきたのです。それまでにどれだけの株数が売られてきたのか。1,020円から1,000円へ下降してくるまでに売りさばいた株数よりも少ないかもしれません。

 もしそうなら、なぜ1,000円で下げ止まると想定できるのでしょうか。



 「上がりそうな株を買ったのに、株価は下がっていく」場合、どの程度までの損失を受け入れるかを前もって決めておきましょう。


 「買値よりも下がったけど、きっと反発して買値+50円は行く」と思うのは楽観論を通り越して、単なる妄想でしかありません。

 なぜ買値より下がっていく株価を見て、買値+50円は行くと断言できるのでしょうか。


 そもそもあなたは買いエントリーのタイミングを見誤ったのです。

 「買ったら下がった」のですから、買いを入れたシナリオがすでに崩れています。

 もし「シナリオ通り」だというのであれば、なぜ下げの限界つまり底値で買わなかったのでしょうか。

 「買ったのに下がった」。なのに「シナリオ通り」なんて言い訳にもなりません。


 本当に「シナリオ通り」ならば、底値を当てて「買い」を入れ、想定される上昇幅にて天井を当てて「売り」で手仕舞いする。

 これができて初めて「シナリオ通り」なのです。


 だから「買ったのに下がった」のなら素直に失敗を認め、軽微な損失を容認して「損切り」しましょう。


 もしあなたが許容できないほどまで株価が下落してしまったら。「損切り」する勇気が持てなくなります。

 いつか「損切り」ラインまで戻すだろうからと「塩漬け」にし、そのまま株価が当面回復せず、含み損が拡大していく。

 これをすぐれたトレードとは言わないのです。


 たとえば買値から△1%を許容ラインとし、「損切り」を株価△1%に設定します。

 株価1,000円で買ったのなら、990円まで下がったら「損切り」するのです。


 もしここで機械的に損切りできないと、株価はさらに下落して△5%、△10%と損失が拡大しかねません。


 そもそも「上がるのを見越して買った」のです。

 それなのに逆方向へ株価が動いてしまった。

 この時点であなたの「買いのシナリオ」は失敗したのです。


 あなたは「どこまで下がるか」なんて予測すらしていなかったでしょう。

 であれば、株価がどこまで下がるか定かではないはず。


 もちろんどこかで底をつけて反発してこないともかぎりません。

 しかしそれならいったん軽微な「損切り」をしてから、底値を見て再度「買いエントリー」すればよいではありませんか。


 底値をつけてどれだけ反発するかなんて誰にもわからないのです。

 それなら「△1%損切り」で機械的に損切りし、底値を見切って「再度買いエントリー」して+1%強上がれば「損切り」で失った金額を取り戻せます。

 「損切り」せず底値まで塩漬けにし、そこから反発があっても、買値を超えるまでは大きな含み損のままなのです。


 すばやく「損切り」して「再度買いエントリー」したほうが、容易に「損切り」コストを回収できるのです。


 だからすばやい「損切り」を絶対に躊躇しないでください。


 あまりに下げのスピードが速すぎて、「損切り」幅を大きく下回ってしまった。ここまで損失が拡大するとおいそれと「損切り」するのは憚られる。

 そういったときほど「損切り」が有効なのです。



 確実に損切りしたいのであれば「逆指値注文」「逆指値付通常注文」で「成行注文」で確実に「損切り」を機械的に履行できるようにしてください。


 「逆指値注文」は「株価が○○円以下に下がったら売り注文を出す」ものです。つまり「990円まで下がったら売り」ます。


 「逆指値付通常注文」は「株価が□□円以上になったら売り注文を出し(通常注文)、株価が○○円以下に下がったら売り注文を出す(逆指値注文)」を組み合わせたものです。

 この「逆指値付通常注文」は株式を買ったとき、すぐに「取りたい値幅と許容できる損切りライン」の両方をセットして注文できるため、仕事を持っている方でもある程度「利益確定」も「損切り」も使いこなせます。

 とにかく「買ったらすぐ損切りラインに逆指値注文の成行注文」を出すようにしてください。


 では「損切り」ラインは買値の△何%に設定すればよいのでしょうか。

 これは株式トレーダーの資金力にもよります。


 1億円を動かしている方は、△100万円でも許容できるかもしれません。

 100万円で取引をしている方は「10分の1取引」だと1銘柄10万円で勝負していますので、だいたい株価1,000円×100株の運用をしていますよね。

 そうすれば△5,000円で損切りしたら5%超の上昇をつかまなければならなくなります。


 その銘柄は何%ほどの上昇が見込めるのでしょうか。

 それによって許容できる「損切りライン」も変化してきます。



 当初「ここで買えば上がる」と見込んで買っているのですから、下がっていったら「読みが甘かった」と潔く認めて「損切り」する。


 これができて初めて「株式トレーダー」を名乗れます。



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