第11話 株価二倍で半分利益確定すれば損はしない

株価二倍で半分利益確定すれば損はしない


 ここでちょっとした数字のトレーニングです。


 株価1,000円の銘柄を200株買いました。その後株価は2倍の2,000円をつけたとします。

 ここで半分の100株を利益確定したとき、あなたはいくらの損益となるでしょうか。


 株価1,000円を200株なので評価額は20万円です。株価が2倍になったら評価額は2,000円×200株なので40万円になります。

 ここで100株を利益確定するのですから、2,000円×100株で20万円が利益として確定するのです。


 ここで最初に戻ります。

 あなたは20万円ぶんの株式を購入し、20万円ぶんを利益確定しました。

 つまりコストを回収できているのです。

 手元に残した100株にはコストがかかっていません。

 ただし信用買いで金利がついている場合は除きます。


 そうなれば、手元に残した100株は、いつ売っても必ず利益が得られるのです。

 仮に倒産して株式価値がゼロになっても、すでに初期イニシャルコストの20万円は回収してあるのですから、残した100株はゼロでも損はしないのです。


「よいことを聞いた。では私もひとつ同じ戦術を試してみよう」とは思わないでください。

 これはあくまでも数字のトレーニングです。


 現実に「株価が2倍になる」確率はかなり低いのです。

 しかも短期間で達成するのはまず不可能でしょう。

 仕手株で急騰を演出された銘柄にいち早く気づいてイナゴタワーに飛び乗り、ほどほどのところで飛び降りて利益確定すれば、あるいは「株価2倍」は達成できるかもしれません。


 しかしそんな「仕手株」は急騰もあれば急落もありえます。

 仕手筋が急騰を演出し、頃合いを見て一気に売り崩す。

 イナゴタワーの崩壊です。

 これでタワーに飛びついた多くのイナゴは焼かれてしまいます。

 イナゴは仕手筋にお金を食い尽くされるのです。



 ではもう少し現実的な、実際にありえそうな線をご紹介します。


 株価1,000円の銘柄を600株買います。60万円ぶんの株式です。

 その後株価は+20%を付けて1,200円となりました。ここで保有株数の5/6に当たる500株を売って利益確定します。

 このときの損得はいくらになるでしょうか。


 株価1,000円を600株なので60万円ぶん買いました。株価+20%で1,200円となりました。

 そして保有している600株のうち500株を1,200円で売り約定させます。

 1,200円×500株は60万円です。

 ということは600株買ったときのコストをすでに回収できています。

 つまり残った100株はいくらで売りに出しても「損はしない」のです。


 この+20%は、上昇トレンドに乗っている銘柄なら達成できない数字ではありません。

 仮に毎日+5%を続けていたら、4日目で到達できる値幅です(+21.55%になります)。

 しかしなにも4日目で達成する必要はないのです。1か月かけて+20%でもかまいません。

 というより、1か月かけたくらいのほうが日々冷静に判断できるぶん「株式取引」が楽しくなります。


 もちろんこの方法にも弱点があります。600株買えるだけの資金の余裕があるかどうかです。


 株価1,000円を600株でも60万円は必要になります。

 しかし「10分の1取引」を適用すると証券口座には最低でも600万円預け入れなければならないのです。

 ただし株価1,000円を切る銘柄、たとえば500円なら600株を買っても30万円で、証券口座に300万円入れてあれば保険が効きます。

 1,000円を切る銘柄を一般には低位株と呼びますが、低位株は株価の上下動がひじょうに激しくちょっとした材料でストップ高、ストップ安になるのです。

(低位株は株価だけでなく時価総額が低くても流動性が高い株式を指す場合が多いですね)。


 だから「+20%・5/6売却」戦術をとりやすいともいえます。

 でも低位株は下落幅も大きいので、見込んだとおりに上昇せず、大きく下落してしまう恐れもあるのです。

 そのときのための「10分の1取引」です。


 もし大きく下落しても、長い目で見れば確実に上がるとわかっているのなら、底値と思われるあたりで「ナンピン買い」600株を入手して平均コストを下げられます。そうすれば1,200株の保有にはなりますが、+20%の株価目標も下がりますので「+20%・5/6売却」を実行すると、200株がコストのくびきから解き放たれます。


 「ナンピン買い」は非常事態の戦術なので、頻繁にやらないようにしてください。

 本当なら、最初に600株買ったときに「この銘柄は上昇トレンドに乗るので下がらない」と自信を持って銘柄を選びましょう。

 それこそ「儲かる銘柄」を見分ける目が必要なのです。



────────


 今回ご紹介したテクニックは、「数字の魔術」に類するものです。

 実際に行なおうとすると資金力で成否が大きく分かれます。

 また上昇トレンドを見極める眼力も必要です。

 かなりの確率で下がらず上がる一方の銘柄を選ばなければなりません。

 しかも今の株価から+20%ほど伸びる銘柄を探します。

 昨日今日、株式取引を始めた方には難しい。ある程度資産が増えて「負けない株式取引」をするだけの余裕が必要です。

 また+20%を大きく超える成長が見込めるのなら、500株売るより600株持ち続けたほうが含み益は増えていきます。

 「+20%・5/6売却」戦法は、あくまでも「負けを減らせる数字の魔術」なのです。



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