第9話 なるべく少額から始める

 「全力買い」は絶対にしないでください。

 当たれば大きく資産を増やしますが、外すと資産を大きく損ないます。

 場合によれば「一発退場」の恐れすらあるのです。


 新型コロナウイルス感染症の蔓延により、在宅勤務・テレワークが盛んになりました。そして国民に10万円がばら撒かれ、それを原資とした「株式取引」へいざなう書籍が山のように発売されたのです。

 証券会社はさまざまな特典を付けて口座開設のみならず信用口座への門戸を開きました。

 それによりとんでもないクズ株を初心者に信用買いさせて、次々と「追い証(信用枠での融資は買付株価の30%を信用口座に預けないといけない)」へと追い込んで暴利を貪りました。


 「追い証」とはなにか。

 信用枠での融資は買付株価の30%を担保として信用口座に預け入れる決まりとなっています。

 その後「信用買い」した銘柄の株価が下がってしまったら担保が直接目減りするのです。

 つまり融資した金額に対して担保が少なくなってしまうので、担保金が不足してしまうのです。

 この不足した担保金を補填するよう信用口座がトレーダーに知らせるものを「追い証」と呼びます。

 もし「追い証」に応じなければ、融資を取り消されて信用株式はすべて精算され、一定期間信用取引ができなくなります。


 コロナで信用口座開設と信用買い・信用売りをしている方々が、相次いで「追い証」を求められて退場していったのです。


 そんな事態を招かないよう、注意したいのが「なるべく少額から始める」ことです。



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なるべく少額から始める


 「全力買い」はただの丁半バクチ、コインの裏表。


 この認識を持たなければ、「株式取引」は安定して継続できません。

 ではどのくらいの額の銘柄を買えばよいのでしょうか。


 証券口座に預け入れた額の「10分の1」です。


 当然不満に思いますよね。当たり前です。

 100万円預け入れたのに10万円ぶんの株式しか買えないのですから。

 儲けられると思った額の10分の1しか手に入らない可能性が高い。


 ですが、10分の1に抑えると、心に余裕が生まれます。


 100万円で20万円の損失が出たらおおごとで仕事も手につかないでしょう。

 でも100万円で2万円損失を出しても「まぁいいか」と素直に損失を認められるものです。


 だから損が出て戻りそうもなければその場で売って「損を確定する」つまり「損切りする」のが苦でなくなります。


 「10分の1取引」にするだけで、「株式取引」がゲーム感覚となり楽しくなります。


 せっかく100万円預け入れているのに10万円ぶんしか運用できないのではもったいない。


 そうお思いなら、3銘柄までに限って手掛けてもよいでしょう。

 これでも預け入れた額の3割しか運用していません。

 しかも1銘柄ずつが「10分の1取引」ですから、たとえ損失が出ても微々たるものです。


 そして3銘柄ですから、たとえひとつ下落しても、残りふたつが上昇していれば値幅にもよりますが全体的に利益は出せます。

 これも「全力買い」では享受できなかった「株式取引のメリット」です。


 こう書くと「それなら10銘柄を扱えば、より損しないのではないか」と思いますよね。

 しかし聖徳太子(今は廐戸皇子ですね)でもなければ、10銘柄すべてを一度に監視などできません。

 管理が楽だからとバイオセクターやゲームセクターのような特定の業種で10銘柄を保持などしないでください。

 関連銘柄のいっときの人気がしぼむと、10銘柄すべてが損失になりかねません。


 3銘柄で勝負するのなら、業種はすべて変えてください。けっしてバイオセクター3銘柄とかゲームセクター3銘柄とか、同業種で集めてはなりません。


 「10銘柄全力買い」もやめましょう。実は証券口座に余裕を持たせれば、仮に1銘柄で損失が出ても逆転のチャンスがあるのです。

 その秘術こそが「分割買い」です。



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 ここでお話した「10分の1取引」は、次にお話しする「分割買い」を行なうためにも不可欠な戦略です。


 また「株式取引」に慣れてくると、取り扱い銘柄がどんどん膨らんでいくようになります。

 ですが10銘柄も20銘柄も追っていたら、それだけで余暇が潰れてしまいかねません。

 本業でデイトレードしているのならいざしらず。

 副業でスイングトレードをしているのであれば、取り扱い銘柄は「5分でトレンドが見切れる銘柄数」に絞りましょう。


 大引けまでの残り5分で、すべてを利益確定できるだけの銘柄数がベストです。

 初心者は1銘柄に注力するべきですが、ある程度慣れてきたら3銘柄までなら許容範囲。

 もし1銘柄が含み損でも「分割買い」でプラスに転じられる可能性があるからです。



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