第3話 株式は市場に積まれていない
株式(俗っぽい言い方をすれば「株券」)って不思議ですよね。
とくにネット証券全盛期の現代では、株式を購入しても有価証券が手元に届かず、売っても有価証券が手元から離れるわけでもない。
でも東京証券取引所で売買できます。
そもそも株式ってどこに存在するのでしょうか。
タイトルの「株式は市場に積まれていない」とはどういう意味でしょうか。
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株式は市場に積まれていない
株式とは、そもそもどういうものでしょうか。
企業は「株式」を発行して投資家から活動資金を調達します。
だから「株式」を発行しなくても運営資金のある企業は、あえて「株式」を発行しなくてもよいのです。
「株式」を買ってもらうとき、購入した株式数に応じて投資家へ配当金が支払われる契約を結びます。つまり「投資してくれた金額への利息」のようなものです。
一般的に「株式」を発行して投資家から「資本金」を手に入れたら、集まった「資本金」に対して支払う配当金が必要になります。
配当金を支払う余裕がないのであれば、あえて「株式」を発行しなくてもよいのです。
そういう企業は「有限会社」「合同会社」など「株式会社」ではない道を歩みます。
まぁ、そもそも誰もがすべての「株式会社」の株式を買えるわけではありません。
「株式会社」でも東京証券取引所(東証)へ上場しないで、投資家と直接交渉し、株式を買ってもらって資金調達する企業もあるからです。
ですが「株式会社」である以上、より大きな資金を集めたければ、東京証券取引所へ上場するのが近道になります。
なにせ東証一部上場銘柄に限っても、一日2兆円、3兆円の出来高となるのですから。
実際、新規公開株式(IPO)として東京証券取引所へ新規上場した企業は、その時点で巨額の「資本金」を手に入れられます。
いわゆるIPOバブルです。
2020年9月29日に実施された東証マザーズへのIPO銘柄「ヘッドウォータース」は、なんと公募価格の10.9倍の高値を付けました。
新興市場である東証マザーズへ上場する前に、最初の株式保有者となる人に100株を公募価格2,400円で買ってもらいます。
そして上場当日の初値でなんと28,560円の高値を付けたのです。
この時点ですぐに100株を売ると、なんと公募価格の10.9倍となりました。
これは株式保有者が10.9倍の恩恵に与っただけでなく、株式を発行した「株式会社」へも同額の巨利をもたらします。
なにせIPO企業が当初目標としていた「資本金」が10.9倍に膨らんだのですから。もし経営者が公募価格で24億円ぶんの株式を保有していたら、公開初値で285億6000万円に化けます。
この手法で話題になったのは、テスラのイーロン・マスク氏とアリババのジャック・マー氏。そして投資会社となったソフトバンクグループの孫正義氏が挙げられるでしょう。
今ちらっと書きましたが、「最初の株式保有者となる人に株式を買ってもらう」ところからIPOはスタートします。
つまりすべての株式の保有者を決めてからでないと、東京証券取引所で株式の売買はできないのです。
これから株式取引を始めようという方もいらっしゃいますよね。
そのような方はすでに入門書をある程度読んでいるはずです。
当然「株式の売買ルール」もご存知でしょう。
しかし初心者だけでなく、多くのトレーダーが大きな勘違いをしているのです。
しかもその自覚がありません。
多くの方が「株式」は「いつでも買える」し「いつでも売れる」と認識しているのです。
「えっ? そのとおりに決まっている」とおっしゃる方も当然いらっしゃいますよね。
それは誤りです。
「株式」は「すでに保有している」方々がすべて所持しています。
保有している方々が「株式を売る」注文を出さないかぎり、いくらその銘柄の株式が欲しくても買えないのです。
勘違いをしている方の多くは、「株式」が「市場に積まれている」と思い込んでいます。
「市場」つまり東京証券取引所の「東証アローズ」で銘柄の相場にアクセスして、「株式」は「いつでも買える」し「いつでも売れる」イメージで売買を行なっているのです。
実際には「買いたい」ときに「いつでも買える」わけでも、「売りたい」ときに「いつでも売れる」わけでもありません。
とくに初心者向けの株式取引の書籍では、あたかも「いつでも売買できる」かのように書かれています。
だからたちが悪いのです。
「株式」は「すでに買った」方々がすべて保有しています。その方々の誰かが「売ろう」としないかぎりその「株式」は買えず手に入らないのです。
またあなたが「株式」を保有していたとしても、それを「買いたい」方が現れないかぎりその「株式」はいつまでも売れません。
「株式」は市場に積まれていない。
「株式」は売買に参加している誰かがすべて「買って保有している」のです。
それを売ってもらえるだけの金額を提示しないかぎり、いつまで経っても「株式」は買えません。
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「株式」にはすべて保有者がいます。
保有者が売りたいと思わないかぎり買えません。
多くの場合、保有者は買値よりも高い条件を提示されないかぎり株式を手放さないのです。
それでも安く買いたいと思ったら、保有者が売りたくなるまで待つしかとりうる手段がありません。
この「最低でもいくらでないと売りたくない」と「最高でもいくらでないと買いたくない」という投資家の意志を反映しているのが「板情報」なのです。
板情報は後日詳しく書きたいと思います。
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