第6話 Let It Be -6

「本田君?」

「なんともない?」

「…あ、うん」

「よかった…」

「あ、でも、どうして?」

「たまたま通り掛かっただけだけど、よかったね、なんともなくて」

「ん。ありがとう」

「どうしたの?」

「どうしたも、こうしたもないよ。あたしのカッコが気に入らないから、切り刻もうとしやがったんだ」

「え、ひどいな」

「大事な制服なのに」

「うん」

美智子は、はっとした。いま、本田はニコニコしながら立っている。そんな本田を見ながら、美智子は戸惑ってしまった。本田は一体どう思ってるんだろう。

「あのさ」

「何?」

屈託ない笑顔を向ける本田に、美智子は一層戸惑ってしまった。

「あの、あんたさ、前にも言ってくれたけど、本当のところ、アタシのこのカッコ、どう思う?」

「どう、って?」

「…変だと思う?」

「まぁ、ね。女の子が学生服着てると変だけど、西川さんの場合は似合ってるよ」

「…そ、そう?」

「西川さんの雰囲気に合ってるような気がする」

「ん。ありがと」

「でも…」

「ん、なに?」

「普通の女子の制服も似合いそうだよ」

「…そう」

美智子は少し残念だった。褒めてくれたと思ったのに。

「僕が気になるのは」本田は、ゆっくりとためらうような様子で続けた。「西川さん、無理してるような気がする」

「え?」

「そうやって、男子の制服着てる時の西川さんは、無理してるような、ツッパってるような気がする」

「…そうかな」

「だって、教室でも、あんまり誰とも話さないし、クラブやってるわけでもないし、そうしてるだけで、手一杯っていう感じがするんだ」

はっとして美智子は本田を見つめた。俯き加減の本田は、少しはにかんだような様子を見せている。

「ん……、そうだね。よく見てるね…」

「あ……」

顔を赤らめて俯く本田の仕草に、今度は美智子の方が赤くなった。

「あ、ごめん、言い過ぎた」

「んん。いい。ありがとね。…そうね、そうなんだよね」

「あんまり、気にしないでね」

「んん、いいよ。ありがと」

「そんなに礼ばっかり言ってもらえるようなこと、何もしてないけど…」

「そんなことないよ」

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