7
ジュー
明るい日差しに目が覚めた。部屋の外からは何かが焼ける音と、いい匂いが部屋に漂っていた。
グー
昨日からまともに食事をしていなかったお腹から、大きな音がなった。僕は匂いの方へと部屋を出た。
トントントントン
丁度シスタークレイが料理を作っていた。
「おはよう……ございます、シスタークレイ」
「おはようレイン、体長は……大丈夫そうですね、ご飯ももうそろそろ出来ますので座って待っていてください」
シスターは挨拶ににこやかに返してくれた。
席に座ってしばらくすると、男の人があくびをしながら部屋に入ってきた。
スキンヘッドな男の人の少し焦げた様な肌は白い服をより一層白く見せていた。
「ん〜よく寝た、おはようクレア」
「おはようございます神父様……そうでした、貴方また夜遊びをしましたね」
シスターの少し怖い笑顔に神父様と呼ばれる男の人は、ビクリと肩を揺らした。
「な、何を証拠にそんな事を……おっ!」
男の人は食卓に座る僕を見ると、嬉しそうに喋りだした。
「君がレイン君かい?昨日は色々あったようだね、体調は大丈夫かい?」
「……はい」
「おお、それは良かった強い子だ」
そう言って男の人は僕に手を伸ばしてきた。思わずビクリと身体が身構えてしまったがその手は、力強く、しかし優しく僕の頭を撫でてくれた。
「そんな怖がんなくたって、何もしないさ、気軽に安堂って呼んでほしいし」
「駄目ですよ、貴方は神父としての自覚をちゃんと持ってください、レインは神父様と呼ぶようにしてください」
「はい……シスタークレイ」
そうして皆が席についてしばらくすると、ドカドカと足音がして、ドアが勢い良く開いた。
「おはよう」
『おはようロザリー』
元気のいいロザリーは部屋を見渡してニンマリと笑って見せてくれた。
「神父様おかえり、どうだった」
「ただいま、しっかりと売れたぞ」
神父様は胸を張って自慢気に答えていたが、ロザリーはそうじゃないと首を振った。
「そうじゃなくて、楽しかった?」
「とても楽しんだようですよ」
だがその質問は神父様が答える前にシスターが、先程の笑顔を浮かべて言った答えに、またしても、神父様はビクリと肩を揺らした。
「さ、さぁ、美味しいご飯が冷めてしまう前に食べようか、さぁ指を組んで」
皆が指を組む、と同時に音も高揚していた空気も羽音がしないほどに静かになり遠くからは
カタリ、カタリ
と音が聞こえ始める。
「我らの命の巡り合わせに感謝を」
『全てに感謝を』
たった2回目のはずなのにまるで、幾度も繰り返してきた事のようにお祈りは済んだ。そして待ってましたと如くロザリーが喋りだし、また元の空気に戻る。
「神父様、どんなお土産を買ってきたの?」
「絵本とか……そうだ、面白そうなボードゲームがあっから買ってきたぞ」
「本当!後で教えてね」
「それもいいですが、勉強が終わってからですよ」
シスターの発言にロザリーは頬を膨らませて答える。
「わかってるわよ、勿論レインもするわよね、勉強」
「う、うん」
唐突のフリに思わず僕は頷いてしまった。が彼女の満面の笑みを前にまるで些細な事のように思えた。
「あっレイン、スプーンの持ち方間違えてる、握って持つんじゃなくて……」
そう言うと、横に座っていたロザリーは僕の手を強引に掴んで持ち方を直した。
「こうやってこう、分かった?」
「うん、ありがとう」
そう言うと彼女は誇らしげに胸を張って頷いた。
「ロザリーまるでお姉さんだな、そうだ、私にもレイン君との出会いを話してくれないか」
「しょうがないわね……」
食事は楽しげに過ぎていったが、1つ不思議に思った事があった。それは、椅子も食事も一つ余分に出ている事だった。
なんでかこれを言うと、この空気を壊すような気がして、口から言葉は出なかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます