3
私は白いレインコートを羽織って玄関を開ける
ザーと雨の音が大きくなる
雨は朝より増して大きな音を立てながら降っていた
「傘を忘れてますよロザリー、風邪を引かない程度にしてくださいね」
「うん!シスター」
シスターから傘を受け取って、ずれていた長靴を履き直す
「返事をする時は『はい』ですよ、行ってらっしゃい」
「うん、行ってきまーす」
私の意識は完全に外に向いていた
シスターに返事をすると、タッタと外に出ていった
白い傘をくるくると回しながら私は羊小屋へと向かう
「メーちゃんあっそびましょー」
私は羊小屋に入るや否や羊さんの体に抱きつく
メッ、メェーと何か言いたげな声で鳴いていたが無視をして撫で続ける
が、何だか違和感があった
羊を指差しで数えていくと……
「あれ?メーちゃん6号が居ない……外に出ちゃったのかな?私探してくるねメーちゃん達」
そう言って私は羊小屋を出た
「どこに居るのかな」
雨は勢いを変えずに降っていた
ざわわと木がなびく
「ここらへんの草、噛み切れてる」
その草を目で追いかけると、目線の先は林の中にあった
「もしかして、ここで迷子になっちゃったのかな」
私は林の中に足を踏み入れた
さっきまで、雨にあたってザーザーと音を立てていた傘からは、ポツリポツリとまばらな音が聞こえるようになった
「これなら傘は要らないね」
そう言って傘を閉じてまた歩きだす
しばらく歩いていると足に何かが当たった
足元を見るとそこには、まだ青い林檎が落ちていた
「あっ、りんごだ」
私は物珍しげにりんごを持ち上げるが、そのりんごには何かに齧られた跡があった
「きっとメーちゃんのだ」
「けど、このりんごは何処に合ったのかな」
少し考えて居ると眼の前に赤いりんごが落ちてきた
「りんごだ」
はっとなり上を見ると一本の木に沢山のりんごが成っていた
「そうだった、りんごは木に実るんだよね」
私は本来の予定を達成した事に足取り軽やかに林を進んで行った
カラン
少し歩いていると聞き慣れた音に気がついた
歩いていくと段々と音は大きくなっていった
叢をかき分けた先には丁度一本の木を中心に光差し込むような空間があった
中央の木には探していた羊がいた
「あ!メイちゃん!」
私は羊に駆け寄って撫でた
「何してる……」
そこには1人の少年が転がっていた
雨はすっかりと止んで太陽が顔を覗かせていた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます