2

「そうそう、明日は町に行くから」


それを聞いて私はシチューを食べる手は止まった


「そういう事は明日は雨なの?」


それを聞いて神父様は頷き口を開く


「そうだとも、何かお土産を……」

「やったー、何しようかな楽しみだな」


私は残りのシチューをかきこみ、部屋を出ていった


「ふふっ、久しぶりの雨です、よほど楽しみにしてたのでしょうね」

「そうだな、絵本でも買って来てやるか」


私はハシゴを登って屋根裏の自室に入って本を取る


「明日は何を見に行こうかな、木に実ったりんごを見てみたいな」


私にとって雨はとても特別な日だった

神父様からもシスターからも外には灰の化け物が居て、子供を襲ってくるからと、外に出ては行けないと言われていた

けど、その化け物は雨の日になると雨に流されて居なくなるから、私が外に出られるようになる唯一無二の日だから


「楽しみだな」


私は本を閉じて明かりを消した


外はもうすでに暗くなっていた


-----


ポツリ、ポツリ


聞き慣れない音に目を覚ます

窓から入る色付きの光はいつもより薄暗かった


「雨だ」


私は勢い良く起き上がってハシゴを降りる


「おはよう、シスター、神父様」

「おはようロザリー、ご飯はもうすぐ出来ますので席に着いてくださいね」


私は席に着いて神父様の方を向く


「神父様、今日は町に何しに行くの?」


神父様はその質問ににこやかに答えた


「布を売りに行くんだよ」

「なんの?」

「うちの白い羊のさ」


パンとスープが机に並びシスターが席に着く


「それじゃあご飯にしようか」


皆は指を組む


「我らの命の巡り合わせに感謝を」

『全てに感謝を』


「私知ってるよ、普通の羊さんは黒くなっちゃうんでしょ」


食事は美味しかったが私の興味は羊の話に向いていた


「よく知ってるなロザリー、だから白い布は高く売れるんだよ」


神父様はその大きな手で頭を撫でてくれた

私はただただ、嬉しくて自慢気に胸を張っていた


「それじゃぁ行ってくるよ、あまり林の深くまでは行かないようにねロザリー」


「大丈夫だよ神父様、行ってらっしゃい」


「お送りします」


シスターはそう言って立ち上がると、神父様と部屋を出ていった


私は残ったご飯を急いで頬張った

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る