黒い羊さん

@nakame0086

 

1

カラン、カランと音がなる

草の匂いがほんのり香る

1人女性が静かに呟く

御免なさいねと悲しげに

またカラン、カランと音がなり

次第に意識は遠くなる


私は目が覚める


ここは教会、天井から垂れる大きな振り子は静かにゆっくり揺れて、色付きの光に影を作る、広い空間なのに椅子は4つしかない所


お祈り中に寝ていたのかも


手を組んでまた目をつむる、誰に祈っているのかわからずに


けどこの時間は好き

大きな振り子の小さな音が聞こえてくるから


カタッ、カタッ、カタッ、カチッ、カタッ……


一定周期で流れる音は何処かざわめく心を落ち着かせてくれた


カラン、カラン、カラン……


外から聞こえる鐘の音が大きな振り子の小さな音をかき消し始めた


「そろそろご飯かな」


私は椅子から立ち上がり部屋を出た


食卓には4つシチューが並んでいた

すでに1人シスターが座っていた


「お祈りは済ませましたか?」

「はい、シスター」


シスターは穏やかな顔で頷いた


「そう、ではそろそろ神父様が来ますので座って待ちましょう」


椅子に座るとシチューの匂いが腹の虫を騒がせた


「今日の羊さん達は元気だった?」

「えぇ、貴方のようにのびのびとしていたわよ」


扉の開く音がする


「ん〜いい匂い、シチューか、いいね」


神父様は椅子を引いて座った


「おまたせしたね、それじゃあ食べようか」


神父様の言葉を合図に皆が指を組む


「我らの命の巡り合わせに感謝を」

『全てに感謝を』


私はスプーンを持つ


「たんとお食べ」


掬って口に運ぶ


「美味し」

「そうね」


口の中では肉が解ける感触がしていた

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