第30話 野球小僧-30

 初めて踏み入れた野球部グラウンドは、亮には大きく広くて不安を感じさせるものだった。今まで練習していた公園のグラウンドより、宮磯の球戯場よりずっと広かった。こんなところでまともにプレーができるんだろうかと思いながら、練習に散った。

 愛球会の面々も同じ思いらしく、妙にぎこちない雰囲気で練習が終わった。大丈夫だろうかと思いながらベンチに戻ると、新聞部の中川が来ていた。

「初めてお会いする方もいるかと思いますが、わたくし新聞部の部長をしております中川といいます。今日の試合を取材させていただきますので、ご挨拶に上がりました」

「あんたのことは、みんな知ってるよ」高松

「じゃあ、話は早い。ご迷惑はお掛けしないつもりですが、写真撮影等でウロウロするかと思いますので、それだけあらかじめお断りさせていただきます」

「また、記事にする気だろ」高松

「まぁまぁ、そのへんは、色々と」

「頼むから、挑戦状の事は書かないでくれよ。厄介なことになるかもしれないから」高松

「了解しております」

「でも、よくあの監督が取材をOKしたよな」山本

「そりゃ、今まで野球部の活躍を漏れず伝えてきた実績がありますから」

「まぁ、あんまり派手にはしないでくれよ」高松

「はい、それではこれで失礼させていただきます」

 中川が立ち去って、山本が言った。

「あれが、中川さんですか?」山本

「そう」高松

「思ったより、おとなしい人ですね」山本

「あれが、くわせ者なんだ。それに、たぶん、今の野球部のレギュラーの誰よりも野球は上手いはずだぞ」高松

「じゃあ、愛球会に入ってもらおうよ」中沢

「それが、わかんないやつでな。新聞部のほうが面白いって言うんだ」高松

「変なヤツ」山本

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