確かなもの

 昼休み、お弁当を食べ終えて、由紀と雑談していると、ポケットの中のスマホがブルブル振動した。

 見ると、ショートメールが届いていた。

 メールを確認すると"好きです。彼女いないなら付き合って下さい"という内容だった。

 由紀に内緒にするのは嫌だったから、由紀に内容を教えた。

「悠斗くん、ほんとモテるよね~」

 と、感心したように言う。

 俺のことを信用しているのか、別にヤキモチを焼いてる風ではなく、感心している感じだ。

「もう少し、由紀と付き合ってるって、わかるようにアピールした方が良いのかな~」

 俺が言うと、

「したほうがいいのかなぁ」

 と、尋ねるように言う。

「まぁ、これ以上続くなら、もう少しアピールしようかな?お弁当作ってもらってるのおおっぴらにするとかさ」

「そうだね。でも、多分まだ続くよ」

 由紀はそう言って、ため息を一つついた。


 俺は、仲がいいというか、こいつは教えても大丈夫だと思わないとLINEは教えない。

 しかし、LINEを教えなくても、電話番号までは秘密にするわけにもいかず、となれば、たまに、こうやって、ショートメールが届いたりする。

 内容は、好きだとか、付き合いたいとか、話があるからどこどこに来て欲しい……そんな内容ばかりだ。

 ここにきてようやく"俺は女子にモテるんだ"と気づいてきた。

 今までは俺よりイケメンな奴なんてゴロゴロいるし、スポーツが出来る奴、勉強が出来る奴も沢山いる。

 それで俺がモテる理由が分からなかったんだけど、結局のところ、好きになるのに確かな理由などないかも知れないし、どこを気にいるかなんて人それぞれなのだ。

 自惚れじゃないけど"俺はモテる"これは確かなことだ。

 俺が由紀の立場ならやっぱり居ても立っても居られなくなるだろう。

 平静を装ってはいるがやっぱり心配はしているのだろう。


 しかし、疑問が湧いてきた。

 俺がモテるのはなんとなく理解した。

 でも、由紀の方がモテるはずなのだ。

  こう言っちゃなんだが、TVに出てる、人気アイドルに引けを取らないどころか、間違いなくその上を行く。

 スタイルもいい。性格だって良いし、要するにほぼ完璧なのだ。

 しかし、男子と話してるところもあまり見ないし、由紀のことを好きだとか言ってる奴を殆ど見ない。

 由紀以外の女の子を好きだとか言ってる男子は少なからずいるのだ。

 勿論、由紀の上を行く美少女なんてことはない。

 そのことを由紀に聞いても、

「私は悠斗くんみたいにモテたりしないよ」

 と言って笑って誤魔化すのだ。

 由紀がモテないなんて絶対ない。

 不安になりだすと、そのことばかり考えてしまう。

 加藤さんに聞いてみよう。

 相談があるから帰ったら電話すると加藤さんにLINEを送った。


 帰ってしばらくすると加藤さんからLINEが来た。

 "今、帰ったよ"という内容だった。

 すぐさま電話をかける。


 回りくどいの嫌いだから直球で聞くんだけど、由紀を好きになる男って、どのくらいいると思う?

 俺は結構いそうな気がして、由紀はそんなにモテないって言うんだけど……


 そりゃ~あの美貌だもん。心配にもなるよね。

 でも、大丈夫だよ。


 大丈夫ってどういう……


 由紀ちゃん、小学校の時からかなりモテてて、言い寄ってくる男の子いっぱいいたの。

 でも、4年生の時から中川くんを好きなんだから「私には大好きな人がいるから、ごめんなさい」ってずっと言ってたんだ。

 だから同じ小学校の子はもうダメだって分かってるし、中学になって、違う小学校の子からも、最初は言われてたけど、そのうちこの子はなびかないって思われるようになって、誰も言わなくなったってわけだよ。

 まぁ、それくらい由紀ちゃんに好かれてるってことだね。


 なるほど、現在では居なくなったけど、過去には居たってことか~


 そりゃ、男の子たちも、由紀ちゃんの好きな奴は誰なんだ~って思ってだと思うよ。だけど、中川くんだって分かったら、みんな諦めちゃったんだよ。

 何もしないで引いちゃうなんてさ、まぁ情けないってか、根性がないって言うかさ……

 

 少し間を空けてから、


 だから中川くんは何も心配しなくていいんだよ。

 

 信じて、いいんだよな?


 まぁ、嫌われることさえしなけりゃ大丈夫だよ。

 心配なら、キスでも迫ったら?

 キス以上はダメだけど、キスならあっさりさせてくれるかも知れないよ?


 キ、キス?もし拒否られたら俺立ち直れないよ~


 ほんと、心配症だね。

 私が大丈夫だって言ってるんだから大丈夫だよ。


 分かった。信じるよ。でも雰囲気って大事だから、焦らす、そういう気持ちになったらかな。


 うん、うん、頑張ってね。


 色々、ありがとうな。

 

 気にしなくていいよ。応援してるんだから。


 うん、じゃあまた何かあったら相談するよ。

 

 そう言って電話を切った。



 続く

 

 



 

 

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