馬鹿ップル?

 家に入ると、やっぱり風呂に入ることにした。 

 田中さんの傘がいくら大きいとはいえ、2人が並んで収まる大きさではなかったのだ。

 田中さんが濡れないように、傘は悠斗が持って、少し右に傾けてさしていた。

 そのため、左の方がびしょ濡れになっていたのだ。

 4月の雨はまだ冷たい。

「風邪ひいたら由紀に会えなくなるじゃないか」

 誰に言うでもなく、一人呟いた。

 シャワーを浴びながら、由紀にLINEを送らなきゃと考える。

 傘を忘れて来たことや、そのために田中さんと一緒に帰ったこと。

 どんな話をしたかまで伝えなきゃって思った。

 こういうのは後でバレると何かと面倒なことになる。

 帰りに、うちのクラスの奴はいなかったが何人もの同級生と会ってるし、その誰かが、うちのクラスメイトに「中川が女の子と相合い傘をしてた」と言わない保証はどこにもないのだ。

 言えば由紀の耳に入るだろうし、喧嘩……ではないな、由紀を怒らせる、嫉妬させる原因になりかねない。

 何事も"転ばぬ先の杖"が大事なのだ。


シャワーを浴びて、暖房つけて、それからLINEを送った。



昼から雨がひどかったけど、濡れずに帰れた?

 

大丈夫だったよ。風がなかったから、まだ良かった。


由紀に報告しとかなきゃいけないことがあるんだ。


何?悪い報告なら聞きたくないかも(苦笑)


実は今日、傘を忘れて、濡れてもいいやって帰ろうとしたら田中さんが傘が大きいから、入って帰ればって、それで、風邪ひいたら由紀に会えなくなるし、入って帰った。

あっ、でも、気持ちは流されたりしなかったよ。


傘を忘れたのはマイナスだけど、風邪ひいて私に会えなくなるのが嫌だったはプラスだから、差し引きゼロにしてあげるね(笑)

だけど、これからは傘を忘れちゃダメだよ。

もし、忘れたら、私が送って帰るからね。


ごめん、気をつけるよ。

由紀が傘を忘れたら俺が送って帰るよ。


そんなこと言ったら、毎回傘忘れるかもだよ。


じゃ、毎回送る


そんなに私のこと好きなんだ。


当たり前、ダイダイダイ好きだよ。


私もダイダイダイ好きだよ。

って、これ、世間一般には"馬鹿ップル"だよね?


確かに。世間がなんと言おうが、俺は由紀だけが大好きなのさ(笑)


図書委員なんて、なりたくなかったなぁ。

ほんと、くじ運ないんだよね。


それは仕方ないよ。そうだ、悠斗くんが担当の時は私が図書室で本読んで待ってればいいんだよ。

でないと、田中さん、晴れた日でも一緒に帰るつもりだよ絶対。私ならそうするもん。

私、そんなの我慢できないよ~グスン


そうそう、田中さんとどんな話したの?


あぁ、えっと、小学生の時に無視したのは、可愛いって言われた嬉しさと、好きではない苛々とがごちゃ混ぜになってどんな態度取ればいいか分からなかったとか、由紀と付き合ってても諦めない。でも邪魔はしないとか、そんな感じ。


へーそうなんだ。やっぱり油断は禁物だね。


悠斗くん、明日学校終わったら、買い物付き合ってね。どうしても買いたい物が出来ちゃった。


え?うん、いいよ。


じゃあそろそろご飯だから食べてくるね。


由紀がそう送ってきたので、


じゃあ、また明日ね。


と送って、その日のLINEは終了した。


続く

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