川北ルナと一度だけのデート

 デート当日、9時に、この前デートしたいと言ってきた公園で待ち合わせをした。

 俺は待たせるのが嫌いだから、どんな時でも10分前行動を心がけてる。

 今日も10分前に到着。

 川北はまだ来ていない……筈だったのに、川北の方が早かった。

「早かったんだな~、まだ10分以上前なのに」

「昨日今日、好きになったわけじゃないんだよ」

 って、両腕を腰に当てて、どうだーみたいなポーズを取った。

「お前しかしその格好、なんだよ」

「え?おかしいかな~」

 川北の服装は、フリルが襟にも、袖にも、スカートの裾にも付いている、いわゆるロリ系ファッションなのである。

 しかも、生地が薄めで、パンツこそ見えてはいないものの、ブラジャーは少し透けてる。 

「今日どこ行くんだっけ?」

「遊園地、だよね?」

「だよね?じゃないの、遊園地行くなら普通は、Gパンとか、せめてキュロットとかだろう?お前、まさか色仕掛けで俺を誘惑してるんじゃないだろうな?ブラだって少し透けてるし」

「わかったわよ。恥ずかしいけど、頑張ったんだから」

 と言いながら、袖なしの上着を羽織った。

「あるなら初めから着とけよな」

 苦笑いしながら俺は言った。

「まぁいいじゃない。それより行こうよ」

 駅まではそんなに遠くない。

 遠くないことが川北は残念だった。

 駅に着いて、電車に乗る。

 日曜日の割には人が多く、座る場所もなく、中央付近に向かい合って、立っている。

「なんで向かい合ってんだよ〜」

 川北の耳元で囁いた。

 女子とこんなに近い距離で向かい合うなんて今までなかったのだ。

「だって、他の方向だと、知らない人に胸が当たるでしょ?そんなんやだもん」

 つまり、俺ならいいってことか?しかし俺は憎まれ口を叩いた。

「お前、そんなに胸、大きくないじゃん」

 って言ったら、足を踏まれた。

 

 電車を降りて、遊園地行きのバスに乗る。

 遊園地に着くと、オリジナルキャラクターの着ぐるみを着たスタッフが子供たちに風船を配っていた。

 ディズニーランドやUSJほど大きくはないがそこそこ大きな遊園地で、目の前には大観覧車や、フリーホール、上にレールがあるタイプのジェットコースターなどが一望出来る。

 よし、今日は大いに楽しもう。川北の想い出作りだからな。

 そう思って、1日乗り物券を購入し、先ずはフリーホールに乗ろうと川北を誘った。

「いきなり、あんなの乗るの?」

 少し怖気付いた感じだったが、深呼吸した後、

「よし、乗ろう」

 と言って、逆に俺をせかして列に並んだ。

 フリーホールのあとはジェットコースターや、ゴーカート、足漕ぎの白鳥舟や、大型回転ブランコなど次々乗っていった。

 流石に、メリーゴーランドやコーヒーカップ?などには乗らなかったが、帰るまでに、40種類ほどあるアトラクション殆ど制覇した。

「楽しかった?」

「うん、すごく楽しかった」

「感謝しろよ、俺の初めてのデートだったんだからな」

 そう言うと、

「え?あっ、そうか、由紀ちゃんと付き合いだしたのついこの間だもんね。よかったの?」

「自分がデートしたあとで他の子とデートされるよりはこっちの方がいい……だってさ」

「なるほど、そういう考え方もあるんだね」

 俺は時計を見て、

「4時か、街に出て、なんか軽く食べてから帰ろうか?」

「うん」

 で、行ったところは結局マクドナルドだった。

 まだ中学3年生だ、どこに美味しい食べもの屋さんがあるかなんて、ほとんど知らないのだ。

 由紀とデートする時は、ちゃんと下調べしてからにしよう。

「俺チョコシェイクが大好きなんだよな」

 そう言いながら、フィレオフィッシュと照り焼きバーガー、ポテトにチョコシェイクを注文した。

 川北は照り焼きバーガーとコーラを注文していた。


 食事も終わり、また電車に揺られて帰る。

 待ち合わせ場所に着くと川北が、

「じゃあ、今日はありがとう」

 と言ったが、

「家まで送るよ」

 と俺は言った。

「そんなの悪いよ〜」

 川北はそう言ったが、夜も近い。

「まぁ、川北も、そこそこ可愛いし、そんなロリファッションで一人で歩いてたら、悪い奴に無理矢理連れていかれるかも知れないだろ?」

 俺がそういうと、

「ずっと前から知ってたことだけど、中川くんってやっぱり優しいね」

 そう言ってから、

「もう一つだけ、お願い聞いて欲しいな」

「仕方ないな〜聞いてやるよ」

「ホッペでいいからキスして」

「え?俺がするのか?」

 川北が頷く、そして、

「こんな気持ちにさせたのは中川くんだから責任とって」

 少し考えてから、

「わなったよ。でも、誰にも言うなよ。言ったら絶交だからな」

「絶対言わないよ」

 で、ホッペにキスした。

「これって浮気じゃないよな」

「中学生レベルの付き合いの中だと浮気になっちゃうかもよ」

 悪戯っぽく笑った。

「じゃあ、家まで送ってもらおうかな」

 そう言って、歩きだした。


 川北の家の前まで送って、最後に川北が、

「ちゃんと約束は守るよ。明日から全面的に応援するからね」

 そう言って手を振り、足早に家に入っていった。


 その夜、由紀にLINEし、川北とのデートが無事終わったことを報告した。

 勿論、ホッペにキスしたことは省略した。


続く

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