何故に俺がモテるのか?

 結局、なりたくもない図書委員にはなってしまうし、何故か、田中明美と川北ルナは俺が抽選で何かの委員になるのを待ち構えていたかのように手を挙げ、田中明美がもう一人の図書委員になってしまった。

 俺は田中明美に対して悪い印象の方が大きい。

 そりゃそうだろう。

 小学生の時、話しかけてもそっぽを向かれ続けた相手である。

 まぁ、前にも言ったように、可愛いと思ったくらいで、好きなんて感情はなかった女子だが、女子に無視されるって、男に無視されるより、何倍も傷つくのだ。

それならば、まだ、川北のように、憎まれ口を叩く方が遥かにマシだ。

 今更そんな行動を取って、俺にどうして欲しいのだ。

 わけがわからん。

 

 ホームルームも終わり、帰り支度をしているときに、由紀が、

「帰ったらLINEするね」

 と小声で言った。

 俺は、

「うん」

 と頷いた。


 家に帰って1時間ほど経った時に、由紀からのLINEが来た。


今、大丈夫かなぁ?


大丈夫だよ。


あの二人、川北さんと、

田中さん、悠斗くんのこと

絶対好きだよね?

知ってたの?


川北さんは知ってた。

でも、あんなことするとは

予想できなかったなぁ。

田中さんは、小学校の時

ずっと無視されてたから、

気付かなかった。


なるほど、そうなんだ。

川北さんも、田中さんも、

すごく可愛いよね。

ちょっと心配なんだ。

悠斗くんが二人のどちらか

好きになっちゃうんじゃ

ないかなって。


その心配は100%ないよ。

俺が好きなのは今も、

これからも由紀だけだよ。


でも、悠斗くんは大丈夫でも

川北さんと、田中さんは、

猛アタックしてきそう(汗)


あ〜、確かに川北さんは、

可能性あるかもね。

でも、俺の知ってる田中さんは

物静かだったから、こっちは

大丈夫だと思いたい。


そっか、川北さんは

積極派なんだ〜


あっ、もしあの二人に

限らずだけど、俺のこと

好きとか、付き合いたいって

言ってきたら、由紀と

付き合ってるって、言って

いいのかな?


私は、ハッキリ言って

くれたら嬉しいかな。

だって、悠斗くんを、

誰にも取られたくないもん。


そう言ってくれると

すごく嬉しいよ。ありがとう


私ね、悠斗くんのことに

関しては、正直でありたいし

我慢なんてしたくないんだ。


じゃあ、明日以降、何か

あったら、由紀には必ず

伝えるからね。


わかった。何もなければ

いいけど。


じゃあ、ご飯食べるから、

また明日ね。


うん、また明日ね。


そう送って、その日のLINEは終わった。


 翌日、通学路にある小さな公園で、川北が待ち伏せしていた。

「中川くん、おはよう」

 言われて、

「おはよう」

 と、とりあえず返した。

「少しだけ、話がしたいんだけど、こっちきて」

 川北が公園のベンチに俺を誘う。

「とっくに気付いてると思うんだけど、私、中川くんが死ぬほど好きなの」

 ふ、普通そこは"好きなの"だろが……"死ぬほど"をつけるんじゃない。

「まぁ、知ってはいたけど……」

「中川くんは西山さんが好きなんだよね?もう付き合ってるの?」

 やっぱ、そうきたか。

 由紀に付き合ってること、言っていいか聞いといて良かった〜

「うん、付き合ってる」

「彼女、超絶美少女だもんね。性格も良さそうだし……でも、クラスが変わって数日だし、まさかとは思ったけど、当たっちゃった」

 そう言って、泣き出してしまった。

「おい、泣くなよ〜」

 言ったんだけど、

「だって、私、やることが全部ずれちゃってて、なんか自分に腹が立っちゃってさ。思った時に行動してたら違う結果になってだかも知れないのに。小学生の時からずっとそうだった」

 確かにな、2年の時、憎まれ口ばかり叩かず、素直に好きだって猛アタックしてたら、ひょっとしたら俺、落ちてたかも知れない。

 まぁ、口に出しては言えないけど……

「お願いがあるんだけど、最初で最後のお願い」

 まさか、キスしろとか言わないだろうな……なんて思いながら、

「内容によるけど」

 って言ったら、

「私ね、中川くんと遊園地デートしたい。それ、叶えてくれたらキッパリ諦めるから。絶対、嘘じゃないから」

 こいつ、本当に俺が大好きみたいだな。

 まぁ、それで川北が吹っ切れるなら、思い出作りに協力してもいいのだが、由紀に内緒は絶対できない。

 話して、由紀が納得するかだな。

 って考えてたら、

「思い出作りなら協力してもいいんだけど……ただ由紀が納得するかだな〜内緒にはできない」

 ここはキッパリ言った。

「私、西山さんにお願いしてもいいわ。大丈夫、喧嘩は絶対しないから」

 まぁ、由紀が納得するならだな。

「わかった、あとは任せるよ」

「じゃあ、今日にでも話するね。呼び止めてごめんね。なんか、これ以上後悔したくなくて」

 そう言って、泣き腫らした顔で無理に笑った。

 並んで登校ってわけにもいかないので、川北は5分後に公園を出ると言った。


 教室に入ると、すでに由紀が座っていた。

「今日は遅かったね。もうすぐ予鈴だよ」

「あっ、うん、途中で川北さんに呼び止められて、話してた」

 近くに人がいないのを確認してからいった。

「あっ、そうなんだ。どんな話だったか知りたいな」

「いいよ、今日の夜電話しようか?」

 俺が言うと、

「隠そうとしないんだね。安心した」

 そう言ったので、

「俺、由紀には絶対、隠し事や嘘

はつかないって決めてるんだ」

「いい子だ、いい子だ」

 って、由紀が笑った。

「あっ、子供扱いしてる」

 ちょっと拗ねた顔をすると、

「ごめん、ごめん」

 と、また笑った。

 

 予鈴が鳴って、しばらくしてから川北が入ってきた。

 俺と由紀の机の間に座り、由紀に、

「ねぇ西山さん、私あなたと仲良くなりたいの、だからLINE交換しよ、いいでしょ?」

 由紀は、少々困惑してたが、

「うん、いいよ」

 と言って、2人はLINE交換したのだった。

 

続く

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