ことは上手くは進まない

 川北ルナは悩んでいた。

 どうやら、あの二人は好き同士らしい。

 これはまずすぎる。

 西山さんは小学校が別、だったら、私の方が遥かに中川くんを好きな期間は長かったはず。

 長ければいいという単純な話でないことは重々承知している。

 その長い期間、私はただの一度も、同じクラスになれなくて、中川くんと殆ど話した事がない。

 中川くんが風紀委員に立候補すると聞いて会長に立候補したのに、中川くんは結局立候補しなかったし、5年生の二学期に学年指導の先生に、2年生から中川くんが好きで、最後くらいは同じクラスになりたいと懇願したのに、

「バランス的に無理だった」で片付けられてしまった。

 バランスってなに?そりゃ~、6クラスや7クラスある学校なら話は分かる。

 けど、うちの小学校は3クラスしかないのだ。

 3クラスしかないのに、6年間同じクラスにならなかったなんて、そっちの方が奇跡だわ。

 中学になったら、案の定1年生は別のクラス。

 しかも何、10クラスなんて、あり得ないわ。

 これじゃ、同じクラスなんか慣れないって、2年の時は自分の存在をアピールして、3年生になって、同じクラスだ~神様も最後は私の想いを分かってくれたんだと思えば、西山由紀の存在だ。

 何よ、あの超絶美少女は。

 しかもその目は、常に中川くんを見ている。

 さらに中川くんは、たった数日で、その超絶美少女に骨抜きにされてしまった。

 私の恋はここで終わるの?

 7年もの間想い続けた私の恋が突然現れた美少女によって、一瞬で砕け散るなんて、嫌よ、絶対嫌。

 お風呂に入りながらルナは悩み、そして考えた。


 翌日、朝のホームルームで、

「今日、午後のホームルームで学級委員長と副委員長、会計係と、図書委員、風紀委員、美会員を選出します。図書、風紀、美化委員は男女各1名ね。立候補したい人がいれば、その時に手を挙げてもらいます。いなければ平等に抽選ね」

 

 ルナは思った。

 これはチャンスがあるかも知れないと。

 "委員"なんてものをしたいと思う人はそんなにいない。

 おそらく、抽選とやらになるだろう。

 もし、中川くんが委員長になれば副委員長、図書委員なら図書委員で「私やります」

と手を上げれば、抽選は中止になり、私が同じ委員になることができるのだ。

 抽選の場合「まずは男子からね」となるのが今までのパターンだ。

 となれば確率は約5分の1、あとは祈るしかない。どうしても、中川くんと話ができる接点が欲しい。

 

 そして、午後のホームルームの時間がやってきた。

 やはり誰も手をあげない。

 抽選が始まった。

 委員長が決まり……図書委員の抽選が始まって、中川くんが手を挙げた。どうやら抽選で当たってしまったようだ。

 ルナは心の中で万歳をした。

 そして、

「私、図書委員やります」と手を挙げた時、ほぼ同時に、もう一人手を挙げたのだ。

 なんと、それは田中明美だった。

 手を挙げたのが西山由紀なら話は分かる。

 しかし、よりによって明美ちゃんとは……

 何故ここまで上手くいかないのだろう。

 ルナは悲しくなってきた。

 まだ、好きなんだ~

 そして、抽選の結果、図書委員は田中明美になった。


 そう、田中明美も小学校の時から悠斗が好きなのだ。

 ルナもそれは知っていた。

 田中明美は恥ずかしがり屋で、悠斗が自分のことを可愛いと言ってくれたと知った時も、恥ずかしさから無視するような態度をとってしまった。

 それを悠斗に勘違いされて、嫌っていると誤解されたのだ。

 否定すれば、自分が悠斗を好きなことがバレると思った明美は、ただ黙っているしかなかった。

 ルナにとっては好都合だったのだが、今日までルナが悠斗にしてきたことは、憎まれ口を叩くだけ。

 何一つ、好かれるような行動をしてこなかったのだ。

 これは、神様が私に罰を与えているのかも知れない。

 と、ルナは思った。


続く

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