第2話
土曜日の午後、西山さんからLINEが来た。
明日のデート、楽しみにしてるね。
時間は10時に駅前の噴水でよかったよね?
うん、合ってるよ。
天気が午後からあやしいから、傘と上着、持って来た方がいいかも。
うん分かった。
尚哉くんにお願いがあるんだけど、私のこと、名前で呼んで欲しいな。
私も尚哉くんって呼ぶから。
なんか面と向かって呼ぶの凄く照れるかも(汗)でも、由紀って呼ぶよ。
ありがとう。最初はぎこちなくても、少しずつ普通の彼氏彼女になっていけたらいいよね?
うん。そうだね。
明日、どこに行くか、まだ内緒?
ナ、イ、シ、ョ(笑)
そうなんだ~。尚哉くん、夜、電話してもいい?
今、お母さんと買い物中だし、
帰ったら夕ご飯の支度があるから
いいよ。待ってるね。
俺も由紀の声聞きたい。
じゃあ、多分8時頃に電話するね。
分かった、じゃあ、また後でね。
なんか昨日の何倍も好きになってる気がする。
他の全てがどうでもいいような……
ダメだダメだ、もうすぐ3年生だし、勉強もしっかりしないと。
成績落ちたらスマホ取り上げられるし、由紀に振られちゃうかも知れない。
それは絶対避けなければ、そう思って、俺は勉強を始めた。
8時を少し過ぎたくらいに由紀から電話がかかってきた。
趣味の話や、学校の話なんかを沢山した。
不意に由紀が変なことを聞いてきた。
「尚哉くんは、タイムマシンとか、幽霊とか、超能力とか信じる?」
「え?タイムマシンに、幽霊か~、あんま、信じないかな。もしも、過去や未来に行けるなら、行ってみたいけど、死んだ人に会えるとか、生まれてない子供に会えるとかが出来るなら、現在が変わっちゃうよね。
現在が変われば未来も変わるし、見てきた未来は嘘の未来になるんじゃないかな?幽霊とかは完全否定しないけど……」
ちょっと間があいて、
「フフ、尚哉くんってけっこう現実主義者なんだね。タイムマシンは確かに現実離れしてるけど私も、超能力とか幽霊って、少し信じるかなぁ」
前に、YouTubeで見た動画を思い出した。
「そう言えば。災害で川に流された女の子が何日も見つからなくて、超能力者に頼んだら、見つかったって話あったなぁ。
アメリカの話で、見つかったのは何百キロか下流だったらしいけど」
「え?その女の子、無事だったの?」
由紀が心配そうに聞いてきた。
「残念だけど亡くなってた。
その超能力者の話によると『私はここよ、私はここよ』って女の子が訴えてたんだって」
「え?それって亡くなっても、魂は生きてるってことだよね」
「そうなるよね。超能力者が初めから知ってたわけでもないだろうから」
俺がそういうと、由紀がが言った。
「女の子が亡くなってるから、良かったとは言えないけど、見つからないよりはいい結果だよね」
「そうだね。あっ、時間、大丈夫?明日デートだからさ」
時計は9時35分を指していた。
「あっ、もうこんな時間、じゃあそろそろ寝ようかな」
「俺も……じゃ、おやすみ」
「じゃあ、おやすみ~」
明日、寝坊しないように、アラームを7時にセットしてから、ゆっくり眠りについた。
デート当日は、出かけるまでが大変だった。
起きてから、母さんが作ってくれた朝食食べるとこまでは良かったんだけど、
歯磨きはいつも2、3分なのに、15分かけたし、頭のセットはいつも5分なのに30分かけた。
ズボンや服のシワが気になって、アイロンがけにこれまた30分みたいな感じだ。
見ていた母さんが、
「尚哉にもやっと好きな子が出来たのね~、嬉しいけど、ちょっとだけ寂しいなぁ、グスン」
って、泣き真似してた。
そんなことは無視して、母さんに尋ねた。
「初デートで、した方がいいことと、しちゃいけないこと教えて」
そう、これ、これが大事なんだよ。
でも、母さんは、
「そんなのは、知らないでするから初デートなのよ。いいこと、悪いことなんて、分からなくていいの。こういうことで喜ぶんだとか、怒るんだとか知って、変えていくものよ。失敗して学ぶの」
なるほど、そういうものなんだ。
「分かった、ありがとう母さん」
そんなことしてたら、もう9時過ぎだ。俺は持っていく物の確認をした。
財布に、ハンカチに、酔い止めの薬、雨で濡れたらタオルが要るかなってタオルを一枚。
あとは傘を忘れないようにしないと。
ヨシ、準備完了だ。
「母さん、行ってくるね」
「気をつけてね~」
家を出て、自転車で駅へ向かう。
しばらく行くと反対側から田村さんがやってきた。
気づかないふりをしようとしたんだけど、
安全確認して、道を渡ってきてから、ニヤニヤしながら、
「何気づかないふりしてんのよ。……なるほど~、これからデートなんだ~」
って、
「まさか、田村に会うとは思わなかった。他の子に見られるの恥ずかしくてさ」
「どこで待ち合わせしてるの?」
「駅の噴水」
「何よそれ。一番人が集まる場所じゃない。今度から変えた方がいいわよ」
「だって、他に思い浮かばなかったし」
なるほど、母さんが言ってた、失敗して学ぶってやつだなこれは……
「あっ、時間ないから行くね」
「うん、頑張ってね」
って最後は満面の笑みだった。
駅の駐輪場に自転車を止めて、噴水へ向かう。噴水には4、5人の人が居る。
その中の一人が、俺に向かって、胸元で小さく手を振る。
まだ20分前なのに、いつからいたんだろうか?
「おはよう、早かったね」
「おはよう、なんか緊張しちゃって、遅れたくなかったし」
考えることは同じなんだ、
由紀は水色のワンピースに、白のジャケットだ。髪はポニーテールで赤いリボンを付けてる。可愛すぎるだろ~。
少し見惚れてると、
「私の服、変、かな?」
って、聞いてきた。
「そんなことない。凄く似合ってて、可愛い」
真っ赤なりながら、
「ありがとう」って、続けて、
「あの、今日私、1万円持って来たんだけど、足りる?」
って尋ねた。
「由紀にお金出させるつもりはないよ。場所決めたの俺だし、今だって、由紀はどこに行くか知らないだろ?それで半分出させるなんて、俺の中の俺が許さない」
最後は何言ってんだ?って感じだったけど、キッパリ言った。
「でも、全部タダって。ダメだよ。じゃあ、交通費は私が出すね」
彼女に気を遣わせすぎるのもどうかと思ったので、
「分かった。じゃあ電車代は由紀持ちでいいかな?」
「うん」
「じゃあ行こうか」
って、切符販売機に向かった。
「じゃあ、高坂駅までね」
高坂駅はこの駅から14駅離れている。
中学2年生の初デートにしては遠距離かとは思ったけど、近くでデートする場所は少なかったし、ネットで検索して出てきたデートスポットは中学生には合わないところばかりだった。
かと言って、見たい映画もなかったし、カラオケとか、遊園地って柄でもない。
仕方なくネットから探すことにしたんだけど、あっ、これだっていう場所を一つ見つけたのが今から行くところ。
改札口を通って、上りのホームに向かい、ベンチに座った。
電車が来るまでまだ10分くらいある。
由紀が話しかけてきた。
「高坂って海沿いだよね。だけどデートする場所なんってあったっけ?」
由紀が、聞いてきた。
「どこなんだろうね」
悪戯っぽくいうと、
「もうそろそろ教えてくれてもいいんじゃないかな?」
って、拗ねたように言う。
「じゃあ、教えてあげる。船に乗るんだ。クルーズ船ってやつかな」
「え?クルーズ船って子供だけで乗れるの?」
「電話で予約して、中学生二人だけど大丈夫ですか?って聞いたら、大丈夫ですって、確認とったよ」
にっこりしながら、
「すごいよね、人生初めてのデートで、クルーズ船に乗るなんて」
「あっ、でも料理はフルコースって訳じゃないんだ。値段が高かったのもあるけど、食べ慣れてない物ばかりだったし、由紀がどんな物好きかもまだ分かってないし。だからバイキング形式の食事を予約したんだ」
「バイキングでもすごいよ。船の上で食事なんてしたことないもん」
「俺も初めてなんだけどね。あっ、由紀は船酔いとか大丈夫?一応、酔い止めは持って来たんだけど」
「大丈夫だよ。そこまで考えてくれてるんだ。やっぱり尚哉くん優しいよね」
「そんな、こと、ないよ」
めっちゃ照れる~
そんな話をしてたら、電車が到着した。
日曜日の電車は満員ってことにはならないらしい。
すぐに座席に座れたし、まだ空席があるくらいだった。
満員だったら、いやらしい大人から由紀を守らなきゃって緊張してたんだけど、取り越し苦労だったみたいだ。
と思ったのも最初だけで、徐々に人が増えて、満員とまではいかないけど8割くらいまで増えていった。
「この辺になると流石に人が増えてきたね。降りれるかなぁ」
由紀が言った。
「大丈夫だよ。一つ前になったらドアの近くに移動しよう。降り口は海側だからね」
「うん」小さく頷いた。
で、一つ前の駅になってから席を立って、ドアの近くに移動した。
その時には満員に近い状態だったし、かなり人と人とが、密着とまではいかないが、接近していた。
もちろんそれは、俺と由紀も同じで、向かいあって立っていたから、電車の揺れで、時々、由紀の胸が心臓あたりに当たってくる。
由紀は胸が大きい。中学2年生にしてCカップはあるんじゃないかと思うくらいだ。
小学5年の、助けた時は、まだほとんど目立たなかったのに。
女の子の発育は早いなと思った。
で、そのCカップの胸が当たる度に、いつもより高鳴っている心臓の音に気づかれやしないなとひやひやした俺だった。
高坂駅に着くと、移動したお陰で苦労なく電車から降りることが出来た。
電車から降りると、なんか解放された感が半端なかった。
それは由紀も同じだったようで、
「やっと解放されたね」って顔を見合わせて笑った。
駅を出ると、クルーズ船専用のバスが既に待機していた。
バスに乗り込んで、しばらくしてからバスが走り出した。
15分ほどで港に到着した。
そこにはどデカいクルーズ船がどうだと言わんばかりに停泊していた。
「すごい船だね~」って由紀が目を輝かせている。
程なくして、アナウンスが流れてきた。
12時出航のドリームワールド号、御乗船のお客様。これより乗船手続きを開始いたします。3番カウンターへお並び下さい。
列に並んでから、
「俺、なんか、全てが初めての事で、ずっと緊張してる」
「私も緊張してる」
二人でクスっと合った。
カウンターで乗船手続きを終えてから、またしばらく待つと、乗船開始のアナウンスが聞こえてきた。
船の入り口にはチケットの回収係の人が二人いて、チケットを回収しながらどのレストランに行けばいいのか案内している。
「お客様はバイキングをご利用ですね。このレストランは正面の階段を登って右側の三つ目になります」
「あ、ありがとうございます」
俺はそう言って、由紀と階段を上がった。右側へ進むと三つ目に目的のレストランがあった。
入ると左右に5人ずつ、メイド服って言ってもおかしくないような服装の女性が立っていて、
「いらっしゃいませ」と、会釈をしながら入ってきたお客さんを席に案内している。
俺たちも案内してもらって、席についた。予約の時に、窓側で予約していて良かったと思った。
真ん中の席だと、おそらく景色はほとんど見えないんじゃないだろうか?
船にしては結構客席が多いレストランだった。
バイキングといえば、普通は容器に入ったサラダやおかず、果物なんかを好き勝手に自分のお皿に乗せて、みたいなイメージなんだけど、ここはサラダに一人、洋食に一人、中華に一人と、必ずキッチンコートを着た人が立ってる。
オーブンで焼いたパイやケーキ、グラタンやピザ、目の前で焼いてくれるステーキコーナーもあったりする。
「どれ食べていいかわかんないよ~」
由紀は困り顔で言う。
「食べたいものを少しずつ取っていけばいいんじゃないかな~。俺は折角だからステーキを食べようかな、ここの肉は結構高級な和牛使ってるって、パンフレットに書いてた」
「わ、わ、私もステーキでいい」
「俺に合わせなくても好きなもの食べればいいのに」
って言ったんだけど、
「いいの、デザートはいっぱい食べるから」
あっ、成る程ね、女子にありがちな、デザート別腹ってやつだ。実際は別腹じゃなくてメインを減らしてるってやつだ。
「うん、わかった」
そう言って、肉厚の牛ヒレ肉を焼いてもらって、付け合わせの野菜を乗せてから席に戻った。
「いただきます」って言ってから二人して食べ始める。
「なんかさ、窓の外が一面海で、移動しながら食事するっていいよね。向こうにはあれだけのビルが並んでるんだから、夜に来たら最高だろうね」
由紀のいう通りだ。ここからの眺めは夜来たらきっと最高だろうと思った。
「もっと大人になったら、今度は夜連れてきてあげるよ」
「ほんと?早く大人になりたいな~」
由紀の食べる速さに合わせてたから、二人同じように食べ終わった。
「由紀は次はデザートだよね。俺はデザートより、ピザと、グラタン食べたいな」
「え?まだそんなに食べるの?男の子ってすごい食欲だよね」
とか言いながら、由紀が皿に乗せてきたのは、りんごパイと、いちごタルトと、ティラミスだった。
俺は言い返した。
「女の子ってすごいよね。そんなに入るんだ」って言うと、
「だって、みんな美味しそうだし、私にささやくの、『私は美味しいよ。私を食べて』って、これでもちょっと我慢した」
顔を少し赤くしながら言った。
「まぁ、それがデザートでもなんでも、食欲があるのはいいことさ。俺は由紀がおデブになっても、振ったりしないいから食べたいだけ食べればいいよ」
俺がそういうと、
「大丈夫、尚哉くんへの愛がある限り私は太らないから。だから、一生太らないわ。毎日体重測って管理してるし」
すごい自信だな~と感心した。
俺が由紀を好きになってから、考えてみたらまだ一週間経ってないんだよな。
でも、由紀は小学5年生から俺に恋心を持ていたわけで、一生太らないなんて自信たっぷりに言えるのは、その差なんだろうか?
「ごちそうさま」
「ごちそうさま」
二人食べ終わってから時計を見ると、港に帰るまでにまだ20分ほどある。
「折角だから上のデッキに行ってみようか」って言って、二人でデッキに向かった。
外に出ると、海だな~って思う潮の香りと、船が進んでる分少し強めの風が俺たちを迎えた。
「気持ちいいね」由紀が言った。
「折角だから写真を撮ろうか」
って、海と街並みをバックに由紀を撮ろうとしたら、後ろから女の人に肩を叩かれた。
「君たちカップルでしょ。私が撮ってあげる」
「ありがとうございます。」
折角のご好意だから受けることにした。
「私が折角撮ってあげるんだから、もっと近づいて、う~ん、なんか物足りないのよね~」
なんなんだ、このお姉さん。
「手を繋いで、ほら、は、や、く」
言われるがままに僕と由紀は手を繋いだ。
お姉さんがシャッターを押す瞬間、強い風が吹いた。
「キャー」
由紀が声を上げる。
「やだ~、今の消して下さい」
慌ててお姉さんに詰め寄る。
俺は何があったか全く分かってない。
由紀にどうしたのって聞いても、
「失敗しただけ」と言って赤くなってる。
「じゃあ撮り直しね。行くわよ。3、2、1、0」パシッ。
「ありがとうございます」言って、
スマホを受け取りにお姉さんに近づいたら、お姉さんが小声で、
「彼女がいない時に削除した画像をチェックしてみなさい。いいものが見れるわよ」
船が港に近づいたので、レストランへ戻った。
まだ、着くまでにまだ10分近くかかるみたいだったので、俺はコーヒー、由紀はミルクティーをのんで時間を潰した。
港に着くとさっきのお姉さんが手を振ってきたので、二人で手を振って答えた。
2時間のクルーズだったから、今、午後2時を回ったところ。
帰るにはまだ早いかなと思ったので、ボーリングをにゲームくらいして帰ろうってことになって、高坂駅の反対側にあるボーリング場で2ゲームしてから、駅に向かった。
それでもまだ4時前だったので、帰りの電車は座れはしなかったけど、それほど混雑していなかった。
7駅ほど戻った時に、雨が降り出した。
由紀がスマホを取り出して、何やら打ってる。LINEかな?
「お母さんが雨が降ったら駅まで迎えに来てくれるって言ってたから。尚哉くんも、家まで送るって」
「え?そんなの悪いよ。傘も持ってきてるし。って傘がない」
「尚哉くん、初めから傘持ってなかったよ」って言われて、家を出る時のことを思い出した。
確かに、俺は傘を持たずに家を出たんだ。ドジだな全く。
困り顔で、
「ハハハ、忘れたみたい。じゃあ送ってもらおうかな」
「うん」って笑ってた。
駅に着くと、既に西山さんのお母さんが待っていて、俺たちに気づいて手を振った。
「ありがとうございます」
お礼を言ってから、二人車に乗った。
「高橋くんはお家どの辺?」
聞かれたので、
「久保町の久保ってスーパーの裏なんですけどわかりますか?」
って言ったら、
「あっ、そのスーパーなら分かるわよ、じゃあ、近くなったら道案内してね」
言ってから車を発進させた。
近くになって道案内して、家に到着した。
「高橋くんのお母さんにご挨拶したいんだけど、今いらっしゃる?」って聞かれたので、
「あっ、日曜日だからいるはずです。呼んできますね」
と言って、玄関を開けた。
「ただいま、母さん、ちょっときて~」
「尚哉、どうしたの?あら」
俺の後ろには、もう由紀のお母さんが来ていた。
「はじめまして、尚哉くんとお付き合いしている西山由紀の母です」
由紀のお母さんは頭を下げた。
「あっ、これはご丁寧に」
ここから二人の世間話が始まるのだが、文字数が無駄なので割愛する。
ただ、待たされている由紀と俺は退屈だったのは言っておこう。
最後になってから由紀のお母さんが由紀を呼んだ。
「由紀も挨拶しておきなさい」
「尚哉くんと交際させてもらってます。西山由紀です。よろしくお願いします」ぺこり。
今度はうちの母さんが、
「尚哉、あんたこんなに可愛い子、何処で見つけてきたの?」
由紀を見て相当びっくりしたみたいだ。そりゃそうだろ、顔だけじゃなくて、スタイルだっていい。そこそこ身長あるし、声に出しては言えないが、胸も母さんより大きい筈だ。
『こんな完璧な子どこで見つけた』と言いたくなる気持ちもわかる。
「これで、親同士も顔見知りになったわけだし、由紀ちゃん、いつでも遊びに来ていいからね。」
母さんが言った。由紀は、
「はい、ありがとうございます」
って由紀が答えた。
無事に両家の挨拶?も終わり、由紀とお母さんは帰っていった。
二人が帰ったあと、母さんが言った。
「尚哉に限ってそんなことはないだろうけど、軽率な行動は取らないでよ。あのお母さん、娘のためなら何でもするって目をしてたわ」
すごいな~井戸端会議みたいな感じに見えたけど、ちゃんと見るとこみてたんだ。
「まぁ、キスくらいで怒鳴り込んできたりはないでしょうけどね」
「母さん、俺はね、女の子は自分で守りたいの。だから筋トレしてんだし。俺が手を出してどうするんだよ」
「わかった、母さん尚哉を信じるわ」
そう言って部屋にもどった。
そうだ、船で撮った画像見てみよ。
スマホの画像ファイルには顔を赤らめて、恥ずかしそうにてをつないでる二人が写っていた。
あっ、そういえば、あのお姉さん……削除した画像をチェックしろとか言ってたな。
ピッピッピッ、削除動画をチェックすると、そこにはとんでもないものが写っていた。
俺の顔はおそらく今までで一番真っ赤になったはずである。
そこには風でめくれ上がったスカートからのぞく、いやいや、のぞくなんてレベルじゃない7割がた姿を現した、薄いピンク色のリボン付きのパンツと、何が起きたかまだ分かっていない由紀と俺のの姿が絶妙なタイミングで写っていたのである。
これは一生の宝物にしよっと。
続く
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