第101話 逃亡者、準備をする
ミハイル様の屋敷から出た僕は、王国との戦の準備を進めていた。
準備と言っても体を鍛えたり、レベルを上げるわけではない。
まずは戦をする場所の準備である。
これに関しては本当は必要ないのだが、戦が終了した後に王国が領土を渡さないということをしにくくする為にやる。
場所を作った後は、各国のトップに立ち合い人になってもらえないか話をしに行く。
各国と言っても、王国と帝国はそもそもメインなので、エルフの里から女王と長老。元魔王として犬塚さんもといミコト様。魔族領から魔王とゲルダ様含む四天王。獣人族と妖精からも出来れば来て欲しい
エルフとミコト様、それとゲルダ様には貸しがあるので来てくれるだろう。
獣人族に関しても、話せば代表を選出してくれると思う。
妖精はそれまでに見える人が見つかればだけど、よくわからないのは魔王か…。
それと、それまでに委員達と合流したい。委員長と桜先生には召喚者代表として参加して欲しい。
正直、王国を牽制する為ならここまでする必要はないと思う。戦自体、逆らうのが馬鹿らしいと思えるくらい、圧倒的に終わらせるつもりだからだ。
僕の狙いはもう一つある。それは種族間でもう少し交流を持つことだ。
交流が無さすぎて他の種族が何を考えているのかがよくわからない。
だから、種族差別なんてものが蔓延していると思う。
各種族のお偉い所が集まれば、ある程度話も進むだろう。
エルフからは他種族と交流を持つ気がないと聞いているけど、エルフ側にそのつもりがなくても、他の種族がエルフに用事がある時があるかもしれない。
その時に前もってエルフは引きこもりたいと他の種族に伝わっていれば、不要な争いにはならないだろう。
わかっていて来たのなら、それ程の急用か敵かのどちらかなのだから。
定期的に話をするタイミングがあれば、その時にまとめて用事を済ませることも出来るだろう。
引きこもる為に、たまに外に出るのも良いのでは?と勝手に思っている。
元々ひきこもりがそう思うのだから間違ってないと思う。
というわけで、僕は戦の前に、ずっと行くのを躊躇っていた魔王城に行くことを決める
そうは言っても、他にもやらないといけないことがあるので、先にそっちをやるけど……
戦をする場所の準備は、杖を使ったらすぐに終わったので、僕はミアに話をしてから篠塚くんのところに行くことにした。
篠塚くんは変わらずに獣人の家族と村で暮らしていた
僕は篠塚君を呼び出して2人で話をする
「呼び出してごめんね。しばらくしたら王国との戦いが始まるでしょ?だからそろそろ篠塚くんには王国に潜入してもらおうと思って。準備もあるからね。それと、篠塚くんの恩人の獣人の家族にも少し聞きたいことがあって来たよ」
僕は用件を伝える
「ああ、そろそろだと思ってたからそっちは大丈夫だ。覚悟は出来てる。それよりも聞きたいことってのはなんだ?」
「獣人族のトップというか、中心の人物って誰なのか知らないか聞きに来たんだ。獣人の知り合いっていうと、子供と魔王軍四天王を除くと他にいないからね。ちょうどいいから各種族のトップを集めて話し合いの場にもしようかと思ってるよ」
「……ちょっと待て。四天王ってなんだ?影宮の知り合いに魔王軍の四天王がいるのか?しかも獣人の」
「僕も四天王を獣人がやってるなんてビックリしたよ。その人に聞いてもいいんだけど、四天王ってくらいだから、どっちかというと獣人寄りの立場じゃなくて魔王寄りだと思うんだよね」
「よくわからんが、聞いていってくれ。知ってるか俺はわからないけど」
「うん、そうするよ。篠塚くんには、潜伏してもらう前に自衛できるようになってもらうから、ミハイル様の街に準備が出来次第来てね。着いたら教えて」
「ミハイル様の街って、前に言ってた帝国の端の街だよな?影宮は一緒に行かないのか?」
「そう、その街だよ。僕は1人で行った方が早いから、別で来てよ。馬車を借りる時は皇帝の名前使ってもいいからね」
僕は転移で帰るので、一緒には戻らない
「前にも賊を皇帝任せにしてたけど、本当にいいのか?今回は皇帝の名を使って馬車を借りるつもりはないが…」
「大丈夫だよ。皇帝には貸しがあるから。少し前にも増えたばかりだよ」
「そうか……。あの街にはここから馬車だと3日くらいか?5日後くらいには着くようにする」
「わかったよ。まだ時間はあるからゆっくりでもいいからね」
「ああ、わかった」
「それじゃあ、話を聞いてから僕は先に帰ることにするよ」
僕達は獣人の家族の家に入る
「お久しぶりです。その後お子さんの具合はどうですか?」
僕は父親に挨拶して、容態を聞く。聞かなくても見えているけど…
「お久しぶりです。その節ではお世話になりました。おかげさまでこうして元気に走り回ってます。こっちに来て挨拶しなさい」
父親が子供を呼ぶ
「おじさんが元気にしてくれたんだよね。ありがとう。ご飯もおいしいよ」
「そっか。それはよかったね。でも僕はおじさんじゃなくてお兄さんだよ」
フェンにも最初おじさんと言われた。そんなに老けて見えないよね?ちっちゃい子供から見たら大人は皆おじさんに見えるだけだと思いたいけど……
「影宮、そんなに大事なことか?」
篠塚くんに言われる
「大事だよ。まだ高校生なのにおじさんは嫌だよ」
僕は反論する
「確かに嬉しくはないけど、子供が言うことなんだから気にしなくていいと思うけどな」
「ちなみに篠塚くんはなんて呼ばれてるの?」
「……シノブって呼び捨てにされてるよ」
篠塚くんは複雑そうな顔をして言った
「そっか、そのくらい仲がいいんだね」
僕は深く聞かないことにした
「仲はもちろんいいさ。だけど家族として思ってくれるなら、にいちゃんと呼んでもらいたいんだよな」
言われて考えてみると、ミアにお兄ちゃんと呼ばれても最近は何も思わなくなった。僕はミアの事を家族だって本心から思ってるってことだよね……
「それはこれからだよ。いつか呼んでくれるって。それよりも聞きたいことがあるんですけど、獣人の方で王というか、代表みたいな人に心当たりはありませんか?」
代表というか、参加して欲しい人には心当たりがある。でもそれは僕が思っているだけなので、獣人の人から名前が上がらないなら考えなければならない。
「昔は小さいながら獣人の国があったと聞いたことがあります。今はありませんが……。心当たりはありますが、その前に私も聞きたいことがあります」
なんだろうか?
「なんですか?」
「以前お会いした時に思ったのですが、ハイト様はハイトミアの関係者ですか?」
「そうですね。立ち上げ以降は任せっきりですが……。それがどうしましたか?」
「まずはお礼を言わせて下さい。ハイトミアが出来てから獣人の立場は良くなってきています。私は知り合いから聞いた程度しか知りませんが、種族差別をなくす為に活動しているクランだと聞きました」
「それは良かったです。フィル……代表に伝えておきますね」
「お願いします。それで先程の答えですけど、今の獣人の中から代表を選ぶのであれば、ハイトミアのリーダーの方と答える獣人が多いと思います。ファルナ様の行方が分かれば良かったのですが……」
僕もフィルに代表として参加して欲しいと思っていた。他の獣人の人からもそう思われていたことに、自分の事のように嬉しく感じる。
「そうなんですね。ありがとうございます。リーダーに話をしてみます。それじゃあ僕は帰るね」
僕はフィルの屋敷に帰って話をすることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます