第100話 逃亡者、取り調べをする

僕達はミハイル様の案内で地下牢に行く。

僕と姫野さんは、衛兵に偽装して入る。


「この3人が以前捕まえた者だ」

川霧達が3人とも同じ牢に入れられていた。

生気を失っているようだ。

やることもなく、牢に放置されていればこうなるか…


出すわけにはいかないけど、処刑するよりも苦かもしれないな


「この者達は自分の犯した罪を反省しているのですか?」

僕は3人に聞こえるようにミハイル様に聞く


「どうなんだ?自分の罪の重さがわかったか?」

ミハイル様は僕の言葉の意味を理解して、3人に聞いてくれる


「すみませんでした。ここから出して下さい」

岡野が答えて、斎藤と川霧も同じようなことをいう


僕がこの3人をそういう風にしか見えなくなっているのかもしれないが、反省して、村の人を殺してしまったことを後悔しているようには思えなかった。

今が辛いから助かりたいようにしか聞こえない。


僕はミハイル様に念話を飛ばす

『ありがとうございます。ご迷惑かけますがこのまま放置で大丈夫です』


「反省しているようだな。……処刑はまだしないでやる」

ミハイル様は3人に話す

言い方を変えているだけで、結局はこのまま放置ということだ


3人は一瞬喜ぶが、結局現状と変わらないことに気づき、絶望して「出してくれ!」と叫ぶ


叫ぶ3人を無視して僕達は横井君の所に行く


僕は横井君の顔を見て、あーこんな人クラスにいたなぁと思う。

特に横井君と話した記憶もない。どんな人かもよく知らない。

強いていうなら影が薄いのだ。

思い出せなくてもしょうがない。だから僕のせいではないのだ


「ミハイル様、聞き取りをさせてもらいますが、よろしいでしょうか?」


「ああ、やってくれ」


「まずは確認からさせてもらう。名前は?」


「…………。」


「黙っててもいいことはないよ。職業は?」


「……剣士」

嘘を吐くなんて、自分の状況がわかってないのか、それとも耐えていれば助けが来るとでも思っているのだろうか……

尋問された割には堪えてないようだな


「嘘はよくないよ。君は召喚者だろ?お仲間がどうなったのか見てないのかい?」


「……どうなったんだ?」


「見せてないんですか?」

僕は予想外の返事に思わずミハイル様に声を出して確認してしまう


「見せていない」

『ハイトに確認してから見せようとしていたんだよ』

本音は念話で飛んできた


『ありがとうございます』


「ミハイル様、鍵を開けてください。自分の末路を見せてきます」


「逃すなよ」

ミハイル様は思ってもいないことを言いながら鍵を開ける


「立て!」

僕は横井君に立つように言うが、無視される

しょうがないので無理矢理引きずっていく


横井君を3人の前に放り投げる


「こうなりたくないなら、素直に話すべきだと思いますが……」


「ひぃ」

横井君が逃げ出そうとするので捕まえて牢屋に戻す


「それでは、聞き取りを再開しますか。嘘をついたり黙秘したら彼らと同じ姿になりますよ」


「わ、わかった。だから許してくれ」


「許すかどうかを決めるのは私ではありません」

ミハイル様から念話で抗議が入るが僕は無視する


「名前は?」

僕は初めから聞き直す


「…横井耕作」


「職業は?」


「調薬士」


「この街で何をしようとしていた?」


「獣人の女の子を殺そうとしてました」

ここまでは知っている話だ。先に尋問されているので横井君も抵抗なく話す


「どうやって殺そうとしたんだ?」


「屋敷を爆破するつもりだった」

屋敷ごと爆破しようとしてたのかよ。あの屋敷にはサラさん達、レベルを上げてない人も住んでいる。爆破されたら助からなかったかもしれない。

事前に捕まえてくれたクルトには感謝しかない。


腑が煮えくりかえりそうになるが、堪える


「ひぃ、た、助けてくれ」

横井君が命乞いを始めた


『ハイト、抑えてくれ』


堪えきれていなかったようだ。

僕は一度深呼吸をして心を落ち着かせる


「助かりたかったら答え続けることだ。どうやって爆破しようとした?」


「スキルで作った爆弾を仕掛けるつもりでした」


「その爆弾は今どこにある?」


「潜伏していた宿屋だ」


「宿屋のどこだ?」


「ベッドの下に隠してある」


「爆弾は今も作れるのか?」


「材料がないと作れない」


「何が必要だ?」

僕は材料を聞く


「最後の質問だ。なぜこんなことをした?」


「……王国に命令されたからだ」


「断ることが出来なかったということか?自分に利益は何もなく無理矢理やらされたと?」


「そ、そうだ」


「……。」

僕は横井君の言葉を信用出来なかったので、ミハイル様に念話を飛ばして、代わりに言ってもらう


「貴様はある方の頼みもあり、生かされている。未遂だったこともあり牢に入れているだけだが、その言葉が嘘だと後に判明したならば、仲間と同じ姿になってもらう。今なら撤回を許すが間違い無いな?」


「…………、すみませんでした。命令されたのは本当ですが、見返りがあって了承しました」

やっぱりだ。信用しなくてよかった


「見返りとはなんだ?」

僕が聞く前にミハイル様が聞く


「……金と女」

完全な私利私欲だった。あのクラスにはクズが多すぎる

いや、環境がそうさせているのか…?

だけど、洗脳されているわけでもないしこれが本性なのだろう。この世界で理性というストッパーが外れただけだ。


「ミハイル様、もう大丈夫です。こいつは3人と同じ扱いでいいです」


「わかった」


僕は地下牢を後にした

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