第62話 逃亡者、次の目的地へ

商業ギルドの件が一応片付いたので、僕はゲルダ様に会う為、ミハイル様の屋敷を訪れていた。

僕とミハイル様はゲルダ様の部屋にい はいる


「ゲルダ様、お久しぶりです」


「久しぶりだね。先にお礼を言わせてほしい。ありがとう」

ゲルダ様が会ってすぐに頭を下げる


「頭を上げてください。本当はもっと穏便に出来たら良かったんですけど、それに獣人差別がなくなったわけではありませんから」


「いや、十分だよ。それに比べて私は手をこまねいていただけだ。立場的な事もあって、あまりおおっぴらに動くことが出来なかった。結局は全て任せてしまったよ」


「僕がやった方法だと、他の人は捕まっちゃいますからね。ミハイル様の助言のおかげです」


「私はそんなつもりで言ったわけではないからね。私が黒幕みたいに言うのはやめて欲しいな」

ミハイル様は苦笑いをする


「そんな事、思ってませんから。それより少ししたらこの街を出ることにしましたので、魔王様にお話が出来るのかゲルダ様に聞きに来たんです」


「申し訳ないね。魔王様から話があるなら、直接魔王城まで来るように言われてしまったわ。話をするだけなら他にも方法はあるんだけど、それだとダメだとね」


「そうですか。でも魔王城までいけば会ってくれるってことですよね?」


「そうね、直接会って話をしたいみたいよ」


「それで十分です。魔王城はどこにあるんですか?」


「それは、言えないわ」


「え?」


「魔王城への行き方は特殊なのよ。魔王様が許可を出した者が正規のルートを通ると入れるわ。許可は出てるはずだから後はルートだけど、魔王様に口止めされてしまったわ」

なんでわざわざそんなことするんだろうか


「なんで魔王様はそんなまどろっこしい事を?」


「それは分からないわ。でも話している感じでは魔王様はあなたの事を知ってたみたいだわ」

魔王に会った記憶なんてないけどなぁ


「そうですか、わかりました」


「力になれなくて申し訳ないわね」


「いえ、ありがとうございました」


僕とミハイル様はゲルダ様の部屋から出る


「ハイトくんはこれからどうするんだい?」

ミハイル様に今後のことを聞かれる


「魔王城を目指そうと思いますが、行き方が分からないのでとりあえずは帝都に行こうと思います。」


「そうか、ちょっと待っててくれ」

ミハイル様はそう言ってどこかに歩いて行った


「お待たせ。帝都に行くならこれを持っていくといい。私からのせめてものお礼だ」

ミハイル様から手紙とナイフを貰った


「これは?」


「手紙は帝都に着いたら門番に見せるといい。偉い人に話を通してくれるはずだ。ナイフは私の家紋が入っているから困ったことがあったら権力として使ってくれて構わないよ。まぁ、ハイト君の場合はギルド証見せた方が効力は高いかも知れないけどね」


「ありがとうございます。その気持ちが嬉しいです」


「出発はいつなんだ?」


「3日後を予定しています」


「そうか、何かあればなんでも言ってくれ」


「ではフィルとフェンと事をよろしくお願いします。これからが大変だと思いますので」


「もちろんだ。任せてほしい」


「お願いします。では失礼しますね」


僕は屋敷に帰ることにした


それからは屋敷でみんなで過ごした。


そして、出発の日になる。


僕は別れを告げる


「……寂しくなりますね」

フィルは悲しそうだ


「何かあったら呼んでくれていいからね。遠慮しないでいいから、すぐに駆けつけるよ」


「うん、ありがとう」


「ミハイル様にもお願いしてあるから、協力してもらうといいよ。商業ギルドの件は片付いたけど、獣人差別が無くなったわけじゃないから。それはこの街だけの問題じゃないけどね…」


「はい、まずはこの街で獣人のみんなが暮らしやすいようになるように頑張ります。それが終わったら私も旅に出たいと思ってます。他の街や村でも苦しんでいる獣人の方がいると思いますので、ハイトさんとミアちゃんが私達を助けてくれたように、今度は私がその方達を助けてあげたいです」

フィルは先のことをちゃんと考えていたみたいだ


「立派な目標だね。無理だけしないようにね。クルトにも色々と相談するといいよ。無茶してたらきっと止めてくれるから」


「わかりました。そうします」


「それじゃあ、時間みたいだからもう行くね」

馬車の出発の時間になってしまった。


「本当にありがとうございました」

フィルとフェンが泣きながら頭を下げるので、僕は2人の頭を撫でてから馬車に乗り込む


「またね!」


馬車は帝都に向かって進む

街が見えなくなった頃にミアに聞かれた


「お兄ちゃんのスキルを使えば別れる必要なかったんじゃないの?それじゃあダメだったの?」


「あのスキルは自分にしか使えないんだよ。それに2人ならもう僕達がいなくても大丈夫だよ。何かあっても念話のことは知ってるからね。本当に困った時は助けを求めてくれるよ」


「そうだね。でも寂しいね」


「色々と終わったらまた会いに行こうか」


「うん」

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