第56話 逃亡者、クラン結成を見守る
翌日からは500階層で3人をパワーレベリングする。
昼前に500階層に転移して夜までひたすら敵を倒して転移して地上に帰る。
そんな生活を1週間程繰り返した所で、ミハイル様が屋敷にやってきた。
「ミハイル様、わざわざ来られなくても呼んでくれれば、僕が行きますよ」
「Sランク冒険者様を呼びつけるわけにはいかないだろう。様づけもなくていい」
「Sランクになりましたが、あんまり自覚はないので今まで通りで大丈夫です」
「そうかい?機嫌を損ねたからってこの街を潰したりしないでくれよ」
ミハイル様は笑いながら冗談を言う
「そんなことするわけないじゃないですか」
「昔に実際にあったことだよ」
「……」
やばい奴がいたんだな
「君はそんなことしないだろうけど、私みたいな辺境の領主よりは立場は上だからね。Sランク冒険者が領地に来たら大変だよ。Sランクに上り詰めるような人は国が圧力を掛けたところで止まらないし、他の国に拠点を移されたら損失が計り知れないから、簡単に領主の首くらい飛ぶよ」
「いい事を聞きました。ムカつく奴に喧嘩を売っても国は僕の味方をしてくれるってことですね」
僕は冗談めかして言った
「やりすぎると国と戦争することになるけどな」
苦笑いをしながら忠告を受けた
「それで、今日は何しに来られたのですか?昇格を祝いに来たわけではないですよね?」
「ああ、もちろんだよ。前に段取りした転移陣の使用に関する周知が終わったよ。すぐにでも始めることが出来るけどどうする?」
「こっちもそろそろいいかなって思ってました。……3日後から始めましょう」
「わかった。許可証の発行手続きを進める。転移陣の前で許可証の確認をするのは私の部下にやらせればいいか?」
「それは僕に考えがありますので任せてもらえますか?」
「どうするつもりだ?」
「クランを立ち上げようと思います。そして獣人をメインにメンバーを集めるつもりです。スラムに追いやられてる獣人がいっぱい居ますからね」
「まあ、君がリーダーなら実力行使で暴れはしないだろう」
「僕はクランに入りませんよ。リーダーはフィルです」
僕はフィルを見ながら伝える
「それで大丈夫なのか?暴力を振るってくるやつも多いぞ。言いたくはないが、獣人だろ?」
「大丈夫です。その為に準備はしてきました。今のフィルとフェンは強いですよ。Bランクですけど、そこらのAランクには苦戦しないくらいにはね」
「そうなのか?」
「はい。それに僕もやることがあるので、この街にずっといるわけにはいきませんから。なんとかこの子達が自立する方法を考えました」
フィルとフェンは悲しそうだ。
「それは初耳だぞ。この街を出るのか?」
「はい、商業ギルドの行方を見届けたら出ようと思ってます。どこに行くかは決まってませんが、行けそうならゲルダ様の主人に会いに行きたいと思ってます」
「そうか、会えるといいな」
「はい、ありがとうございます。それとこの屋敷は買い取らせてもらえませんか?お金は足りるはずです」
「それは構わないよ」
「では、代金は冒険者ギルドからもらって下さい。支払いが保留になってるのがたくさんありますので」
「ギルドが支払いを保留にするって、いくらあるのかは聞かないことにするよ……」
「ははは…」
僕は笑って誤魔化すしかない
「それでは3日後からで準備を進めていくから」
そう言ってミハイル様は出て行った
「本当に行っちゃうんですか?」
フィルに聞かれる
「前に話したよね、この街には元々寄っただけなんだよ」
「そうですけど、寂しいです」
「今すぐってわけじゃないからね。それにフィルはクランのリーダーになるんだ。そんな顔してたらダメだよ」
「わかりました…」
「それじゃあギルドに行って、クランの立ち上げ申請しようか」
「はい」
僕達は冒険者ギルドへ行き、担当のお姉さんのところに行く
「こんにちは、クランの立ち上げ申請したいです」
「ハイトさん、いらっしゃい。クランを立ち上げるんですか?」
「立ち上げるのはフィルですが」
「ハイトさんでなく、フィルちゃんがですか?」
お姉さんは不思議そうに聞いてくる
「そうです。僕は近々この街を離れるつもりなので」
「え!出てっちゃうんですか?」
「すぐにではありませんけど、このクランが軌道に乗ったら行こうと思ってます」
「そうですか……。いつでも戻ってきていいですからね。…………クランの立ち上げでしたね、立ち上げ理由と主な活動内容をお願いします」
「ありがとうございます。立ち上げの理由は獣人差別の改善の為で、この街に獣人が必要な存在にするのが目的です。活動内容はダンジョンの探索と転移陣の管理です」
「転移陣っていうとダンジョンの入り口に急に出来たやつですね?」
「はい、それです。許可証を持たない人は、使用料としてこのクランがお金を取ります」
「わかりました。この内容で申請しておきます。クラン名はどうしますか?」
考えてなかった。どうしよう
「フィルが決めていいよ。フィルのクランだからね」
僕はフィルに丸投げした
「どんな名前でも良いんですか?」
「フィルが良いと思うならそれでいいよ」
「なら[ハイトミア]でお願いします」
「えっ、それはちょっと…」
「では、クラン名はハイトミアで申請しました」
申請されてしまった
「ダメでしたか?」
フィルに聞かれたが、丸投げしておいて文句は言えないか
「いや、フィルがいいならそれでいいよ」
「ご用件は以上ですか?」
「はい」
「すぐに立ち上げ許可が降りると思うので少しお待ち下さい」
僕達がギルド内で軽食をとりながら待っていると、クルトに話しかけられた
「ハイトさん、今いいですか?」
「久しぶりだね、大丈夫だよ」
「まずはお礼を言わせてほしい。代わりにダンジョンを攻略してくれてありがとう。500階層まであったんだってね、僕には無理だったよ」
「僕に出来ることをやっただけだから気にしないでよ。それで用事は何?」
「さっきの話が聞こえてね。僕のパーティもクランに入れてくれないかな?」
「……クランのことはフィルに聞いて欲しい。リーダーはフィルだから」
「そうなんだ。フィルちゃん、僕のパーティもクランに入れて欲しい」
「……はい、お願いします。」
フィルはあたふたしながらも答える
「クルト、悪いけどフィルのフォローをお願い出来るかな?実力は保証するけどまだ子供だからね」
「ああ、わかった。任せてほしい」
「ありがとう。本当に助かるよ」
クルトとクランの事を話していると、受付のお姉さんに呼ばれる。
クランの申請が通ったとのこと。
早速、クルトが教えながら、フィルがクルトのパーティの手続きをしている。
心配してたけど、クルトのおかげで大丈夫そうだな
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