第55話 逃亡者、お姉さんをお金待ちにする
翌日、僕はダンジョンに潜っていた。3人のレベルを上げる為である。
今は3人を500層まで連れて行く最中である。
僕は鍛冶屋の親方から受け取った武器を使って遊びながら降りていく
僕が攻略している間に、頼んでおいた杖と錬金術さんのところの魔石が出来ていたので試しているのである
結構レベル上がったけど、攻撃用の魔法覚えないんだよな。生活魔法で使える属性魔法はステータスのおかげで攻撃にも使えるレベルになってるだけだし
この杖を使えば十分戦闘に使えるレベルになる
「お兄ちゃん、楽しいのはいいけどそろそろ休憩しない?」
しまった、時間を忘れてた
「ごめんね。そうしようか」
それからはちゃんと休憩しながら進み、50層ごとの転移陣を使いながら10日程かけて500層まで辿り着いた。
500層のボス部屋にはちゃんと黒幕スライムが復活していた。
「ミア、ちょっと戦ってみる?」
「え、本気でいってるの?」
「うーん、少なくても死にはしないと思うよ。負けても死ぬ前に助けれるくらいには強くなってると思うけど」
「勝てると思う?」
「無理だと思う」
「……」
「ごめん」
「許してあげるけど、お兄ちゃんよく倒せたね」
「攻略した時はこんなに強くないよ。ミアでも勝てるかもしれないくらい。僕が強くしておいたんだよ」
「え?なんでそんなことしたの?」
「誰かが攻略したらダンジョンの設定変えられちゃうからね」
「あ、そっか」
「だから、僕くらいは強く無いと勝てないようにしておいたよ」
「……そんなのと戦わせようとしたの?」
「ごめん、倒してくるから待ってて」
僕は黒幕スライムを倒す。
結構苦戦した。強くしすぎたかもしれないな
「終わったよ、転移陣で帰ろうか」
「速すぎて見えなかったよ。あんなのとどうやって戦えば良かったの……」
根に持っているようだ
「そろそろ前の時に渡した、魔物の素材の査定が終わってると思うから、受け取って今日は豪華にいこうか」
僕は聞かなかったことにした
「やった」
喜ぶのはフェンだけで、ミアとフィルは僕を呆れた顔で見ていた。
「……明日からはここの階層でレベル上げするつもりだからそのつもりでね。目標は一人でここの魔物を倒せるようになる事だからね。…………ボスは倒せなくていいから」
地上に戻り冒険者ギルドに寄ると受付のお姉さんに詰め寄られた。
「こないだ、久しぶりにギルドに来たのに、私に挨拶もせずに帰るなんてひどいわ。急に来なくなって心配してたのに」
しまった。忘れてたのはこれだ。
「すいません、いろいろあったもので……よかったらこれどうぞ」
僕はお菓子を多めに渡そうとする
お姉さんは一瞬顔が緩んだが、しかめ面に戻る
「そういうことじゃないから、本当に心配してたんだからね。受付の人はみんな、自分の担当した冒険者のこと覚えてて、ちゃんと帰ってくるか心配しながら仕事してるんだから」
「すいませんでした」
僕は渡そうとしたお菓子を引っ込めようとしたが、その前にお姉さんが、持っていった。
「それはそれで、これはありがたくいただくわね、ありがとう」
女の人って怖いな
「ああ、これ前の素材の買取額ね。依頼が出てたやつはこっちで処理して達成にしておいたから。マスターから伝言で、多すぎて破綻するからこれで勘弁して欲しいって言ってました。捌けたら、後で追加で払うとも」
「これいくら入ってるんですか?」
袋はずっしりと重い
「金貨500枚よ」
「え、そんなにですか?」
「見たこともない魔物の素材ばかりでどうしたらいいかわからないって言ってたわよ、担当の人が。流通量が増えれば買取額も下がってくるわ。本当は5000枚くらい出したかったんじゃないかしら?」
それだけあったら一生遊んで暮らせるよ
「おかげで私のボーナスも上がるわ。ありがとう」
「ギルドが儲かると受付の方のボーナスが増えるんですか?」
「ちょっと違うわね。ハイト君の担当は私でしょう?」
「……そうですね」
担当になった記憶はないけど、毎回このお姉さんにお願いしてるからそのようなものか。
お姉さんはなぜかガッツポーズしてる
「冒険者がギルドに利益をもたらした場合、その利益の1%は担当の受付係のボーナスになるの」
「そんなシステムなんてすね」
「いつもはそこまで多くないんだけど、ハイト君のおかげで一気にお金がもらえるわ」
「へー、どのくらいもらえそうなんですか?」
「見たことない素材はオークションにかけることになると思うんだけど、研究者がかなり高値で買うのよ。多分全部で金貨1万枚は超えるんじゃないかな。普通は売値の半分くらいで買い取るから利益は5000枚くらいで、それでもすごいのに、実際の買取額は500枚でしょ?多分金貨100枚くらい貰えるわ」
「……すごいですね」
「まあ、流石に全部私がもらうのはみんなに悪いから、受付のみんなで分けるわ。ハイト君が担当を付けてて良かったわ。フリーだったら常連でも適応されないもの」
「僕、担当の登録とかはしてなかったですけど良いんですか?」
「それは私が最初にあった時にやっておいたからいいのよ。相手が担当と思ってないなら問題だけど、ハイト君の担当の認識も私だったし大丈夫よ」
だからか、さっきのガッツポーズは
「それでいいんですね。それならみんな勝手に担当にしてそうですけどいいんですか?」
「担当になるってことはいい事ばかりじゃないのよ。その冒険者が悪いことをしたら、担当の受付にも罰がくるの。どっちかといえば悪いことの方が多いからみんなあんまり担当にはならないのよ」
「え、じゃあなんで僕の担当手続きしたんですか?」
「お菓子くれたでしょ?そういった気遣い出来る子は信用できるわ」
「そんなことだったんですね」
「でも見る目は確かだったわよ」
「はは、そうですね。……それじゃあ帰りますね」
帰ろうとしたら呼び止められた
「ちょっと待って、もう一つギルド長に言われてることがあるの。ギルド証出してもらえる?ミアちゃんと、フィルちゃんとフェンくんもね」
僕達はギルド証を渡す
お姉さんは受け取って奥に行き、戻ってきてギルド証を返してくれる
「ハイト君はSランクね。ミアちゃんはAランク、フィルちゃんとフェン君はBランクだから」
一気に一番上になってしまった
「おめでとう、世界でちょうど10人目のSランクよ。昇格記録もぶっちぎりね」
「なんで、こんなに上がってるんですか?」
「さっき言ったでしょ?依頼出てるやつはこっちで処理したって。常時依頼以外もちょちょいとデータいじって依頼受けてから倒したことにしておいたわ。そのおかげで達成件数300件超えの達成率は100%よ。それにダンジョン攻略の実績も乗ってるわよ」
「そんなことしていいんですか?ちょちょいって?」
「いいのよ、みんなやってることだし。それに今回はギルドマスター指示だから何かあっても責任は私にはないわ」
「……そうですか、わかりました」
「ミアちゃんは攻略の実績がないからAランク。フィルちゃんとフェン君はこれが1回目の昇格だからBランクね」
「いいのかなぁ、お兄ちゃん一人で攻略しただけなのに」
ミアも本当にもらっていいのか迷っているようだ。
「いいのよ。それに噂で聞いただけだけどミアちゃんはクルト君より強いんでしょ?」
どこからか漏れているらしい
「わかりました、もらっておきます」
「Aランクなら他の街でも見せるだけで大体のことは片付くからね、Sランクはもう領主様より上よ」
とんでもないことを聞いてしまった。
なんだか急に疲れた気がする
「それじゃあ、今度こそ帰りますね」
僕達は冒険者ギルドを後にした
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます