第19話 逃亡者、なりすます
僕の首が飛ぶ。
「うっぷ。気持ち悪いな。やっぱり見なければよかったかな。でも見ないといけないよな…」
僕はその光景を見ながら吐きそうになる。助かるためとはいえ、罪悪感に呑まれそうになる。
なんで僕が生きているのか、時は地下牢に閉じ込められた所まで遡る。
思ったより表立った実力行使に出るのが早かったな…
国王の隣にいた高村がやっぱり気になるな。僕を売ったか?もしそうなら流石に許せないな。
さてどうするか。
「僕を捕まえてどうするつもりですか?」
僕は見張りの兵士に声を掛ける。
「国王様を怒らせたんだ。死刑に決まってるだろ」
ハハハと笑いながら言われる。
やっぱりか。予定より早いけど、この国から逃げることにするか。ただ、どうやって逃げたものか…
実は見張りの兵士を見るのはこれで2回目だ。
鑑定をした結果、ミア(人形)を殺した男だ。名前はロンド。職業は[暗殺者]でステータスは平均40前後。ATKとSPDが高いな。僕のステータスの大体4倍くらいか。
流石にLUKは僕の方が圧倒的に高いけど…かなり手強いな。ラッキーだったのはスキルが[状態異常付与]だったことだ。僕に状態異常攻撃は効かない。
まともに戦っても勝てないよな。僕、戦闘に関しては素人だし、攻撃スキルももってない。何より牢屋に入ってるし…。
使いたくなかったけどあれを使うか…。
僕はスキル[逃走]を使用する。意味があるかわからないけど牢屋から逃げる事を強く意識する。気づいたら城の外とかだったら困るから。
気づいたら僕は牢屋の外にいた。よし!成功だ。しかもロンドも倒れている。最高の結果が得られたな。多分逃げる過程で気絶させたんだろう。どうやったかは不明だけど。
僕はこの結果を得て次の一手をとる。
まずは脱獄しても捕まらないように偽装スキルで変装する。
そして倒れているロンドに偽装を掛ける。そしてロンドを牢屋の中に縛って寝かせる。
しばらくしてロンドが目を覚ました。
「えらく熟睡してましたね?」
僕はロンドに声を掛ける。
ロンドは僕をみて驚愕する。
「お前は誰だ?なんで俺の顔をしている?」
「分かりませんか?あなたですよ。今日からね…」
僕は自分の顔をロンドの顔に偽装していた。格好も兵士だ。
「ふざけるな!」
ロンドは激昂する
僕はロンドに鏡を見せる
「あなたは影宮くんですよ。よく見てください。」
「えっ?なんだこれ、俺に何をした?」
ロンドは鏡を見て困惑している。
「あなたと僕の体を交換しました。あー、確かこの後影宮くんは死刑になるんでしたね」
ハハハと僕はやられたように笑いながら答える。
やった後、テンションが下がった。うん、やめよう。
「あなたに聞きたいことがあるんです。教えてくれますか?」
「…なんだ?」
「昨日ミア…メイドの子を殺しましたよね?誰の命令ですか?」
僕は一応確認する。国王か宰相だろう。
「なんのことかわからないな」
ロンドは知らないふりをする。
「そうですか。ちなみに昨日僕は現場にいたんですよ。ロンドさん。」
「…っ!なんで俺の名前を知っている!?仲間にも本当の名前は言ってないんだぞ!」
「そうでしたか。僕のスキルであなたの名前はわかりましたよ。昨日ミアを刺したのもロンドって人でしたね。他にも何人も殺してきたんですか?」
ロンドは目を伏せて何も答えない。
僕は覚悟が決まる。
「答えないなら結構です。あなたを許す気はありませんし……それではさよなら」
僕は近くにあった棒でロンドを叩き気絶させる。
声を出せないように口に布を噛ませておいた。
しばらくして他の兵士から「影宮灰人の処刑が決まった。連れて行け」と指示がでる。その際なんで縛られているのか聞かれたので、「暴れたので黙らせた」と答えておいた。
僕は足の紐をほどきロンドを処刑台に引っ張っていく。
処刑人にロンドを引き渡す際に、口の布は取られる。
僕はマズイ!と思ったがロンドは命乞いはするが入れ替わりがバレることは言わなかった。
そして、刑が実行された。
こんな奴は死んで当然と心の中では折り合いがついていたと思っていたんだけどな。
心の中では色々な感情が渦巻いていた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます