第18話 閑話 side ミア
私はミア。オーラス国の城でメイドをやっている。
今日の私の仕事はいつもと異なる。なんとこの後、異世界から勇者様達が召喚される。勇者様達を食堂へ案内した後、配膳を手伝い、食事を終えられたら各々の為に用意してあるお部屋へと案内するのが今日の私の予定だ。
…召喚の儀式がうまくいかないのか勇者様達は現れなかった。メイドの先輩が言うには儀式自体は成功したらしいがまだ現れないみたい。
その為、いつ勇者様達が現れてもいいように動ける準備だけにしておくように言われる。
次の日の夕方に勇者様達が現れたと知らせを受けて私は慌てて準備をして謁見の間の前で待機する。
正直、もう現れないと思って気を抜いていた。
まだ中では国王様が話をしている様でなんとか間に合ったみたいだ。
危なかった。こんな大事な仕事をすっぽかしたら城から追い出されちゃうよ。
しばらくして謁見の間の扉が開く。
「食堂まで案内させてもらいます」
私は頭を下げてから、食堂まで勇者様達を案内する。
食堂のテーブルには豪華な食事が並べられていた。
う〜、美味しそう。こんな豪華なの私食べたことないよ。「ぐー」っとお腹がなる。聴こえてないよね?私はキョロキョロと周りを見てしまう。
「本日のお食事になります。どうぞお好きな席にお掛けください」
私は気を取り直して席にかけるように声をかけた後、トレイに乗っていた乾杯用のワインを勇者様達に配る。
その時宰相様から「ワインはトレイに並んでいる順番に勇者様達に配りなさい」と指示を受ける。
私はなんでかな?と多少疑問に思ったが言われた通りにワインを配っていく。
ワインを配った後、皆がワイワイ騒いでいる中、難しい表情をしている少年の顔が目に入りどうしたのかな?ワイン苦手なのかな?などと考えていると、いきなり少年が国王様に向かって毒見するように言い出した。
空気が静まり返る
いきなり連れてこられて心配なのはわかるけど、流石に不敬すぎるよ…。
国王様は不快な顔をしつつも目の前にあったスープを毒見の為に飲もうとするけど少年が自分のワインを飲むように言った。
「我はワインが飲めないのだ。アレルギーでな。」
へぇー。国王様ワイン飲めないんだ。アレルギーならしょうがないよね…。私がそんな事を考えていると今度は宰相様にワインを飲むように少年が言う。
「こちらの宰相はこれから会談があるのだ。アルコールを飲ませるわけにはいかん。代わりにこちらのメイドに毒見させよう」
国王様がそう言って私を指名する。
えっ!私?と驚くが、まあこんなに高そうなワイン普段は飲めないしいいか、と心の中で喜びながら、
「かしこまりました」
と告げて一口飲む。
うーん!美味しい。こんな美味しいワイン飲んだことないよ。
一口飲んだ後、宰相様から「ご苦労だった。彼に新しいワインを持ってきてくれ」と小声で言われて、私は「こ、これくらい大丈夫です。…かしこまりました」と答える。
後で思い返すと意味合いが違ったのだろう
少年に新しいワインを持っていくと「ありがとう」と言われるが、顔を見ると私を哀れんでいるようだった。
私は理由がわからなかったので、会釈を返して下がることにする。
食事が終わり、勇者様達を部屋に案内した後、私は自分の部屋に戻り「ふーっ。やっと終わった。疲れたー」と言いながら一息つく。ずっと緊張しっぱなしだったから疲れたな。私は共用のシャワーを浴びて寝巻きに着替えた後ベッドの上に寝転がりのんびりとだらける。
ゴロゴロしているとコンコン!とノックされたので中に入るよう答える。どうせ同僚のメイドだろう。
ドアが開いて入ってきた人をみて私はビックリする。
「っ!えっ、えっ?だだだ誰ですか?」
知らない人だ。いや、知ってはいる。食堂で毒を疑って騒いでいた人だ。
「僕は影宮灰人。食堂で僕のせいであなたに毒見させてしまったから謝罪に来たんです、驚かせてしまってすいませんでした。お名前を聞いてもいいですか?」
私は名前を伝える。…私の部屋をなんでこの人知ってるの?ストーカーかな…
「たまたまあなたが部屋に入って行くのが見えただけですよ」
なんだ、たまたま見かけたからお礼を言おうとしただけか。
影宮さんは私に聞きたい事があるらしい。
別にゴロゴロしてただけだから答えてあげることにする。
「例え話なんだけど、Aさんの食べ物に毒を入れて殺そうとしたBさんがいました。AさんはBさんが毒を入れた食べ物を毒見するように言いました。当然毒が入っているのを知っているBさんは代わりに部下のCさんに毒見させました。この光景を沢山の人が目撃しています。毒が遅効性の猛毒だった場合Bさんはどうするでしょうか?」
影宮さんは聞きたい事があると言ったのにクイズを出してきた。ふふん、こう見えて私クイズは得意なんです。
なになに、このままだとCさんは毒で死んじゃうのか…
あれどこかでこの状況見たような…「えっ、これ私のこと…」
私の漏れた声に影宮さんが正解と答える。
そして国王様がこれからどう動くか聞いてくる。
このままだと国王様が毒を盛ったとみんな思うかも。回避するには私を助けるか、それが無理なら毒以外の方法で殺すか…「私殺されちゃう」
影宮さんにどうしたらいいのか聞く。私初めて会った人に何聞いてるんだろう。相手は国王様だよ。
影宮さんは僕を信じれば助かるって言う。それに毒は飲んでないって。
えっ!私助かるの?信じるだけでいいの?毒飲んだんじゃないの?意味がわからない。毒飲んだから殺されるんじゃないの?
影宮さんが私を落ち着かせる。それに、私を助けたら仲間になってほしいって。この話の後に仲間になるって国王様と敵対するってことかな。
よくわからないけど、影宮さんは毒を消せるらしい。
影宮さんの顔をみても嘘は言ってないようにみえる。
うん、影宮さんを信じよう。私まだ死にたくない。
それに影宮さんが嘘を言ってるとしたらそもそも私が死ぬ理由がない。
私を助けられたら仲間になると約束する。
影宮さんはどうやって私を助けてくれるんだろう?そう思っていると私は耳を疑う事を言われる。
「それじゃあミアには死んでもらう事にしよう」
「えっ?」
びっくりしたけど死んだことにするってことだった。影宮さんも人が悪い。言い方ってものがある。
私は影宮さんを物置に連れて行く。
影宮さんは物置から色々と物を持ち出す。持ち出すといっても影宮さんが触った物がどこかに消えているんだけど。
「どこに消えてるの?」
私が聞くが「仲間になってくれたら教えるよ」と今は教えてくれなかった。
部屋に戻ったら影宮さんが倉庫にあったデッサン用の人形を出す。人形に向かって影宮さんが何か呟くと人形が私の姿になる。
「うん。完璧だ」
影宮さんはそんな事を涼しい顔でいう。明らかにおかしい。人形って知ってる私が見ても自分としか思えない。
「何したの?」
私は聞いてみたが答えは変わらず仲間になったら教えるだった。
影宮さんは人形をベッドに寝かせる。
「僕はここに隠れて見てるけど、ミアはどうする?自分が殺されるのを見るのは辛いでしょ?」
「私も見届けます」
私は覚悟を決めてクローゼットの中に隠れる。
しばらくすると部屋に誰か入ってきた。私は息をのむ。フードを被った男はベッドに寝てる人形にナイフを突き刺す。…影宮さんがいなかったら私ああなってたんだ。
フードの男がいなくなってから少しして影宮さんから出てきてもいいよと声がかかる。そして仲間になってほしいと再度誘われた。
「ありがとう。先に約束してた通り仲間になるわ。よろしくね」
私の答えは決まっていた。
本当は約束したからじゃない。私は影宮さんと一緒にいたい。
影宮さんは委員長という人に匿ってもらうと言うが、私は影宮さんと一緒にいたい。
「知らない人は怖いから、一緒がいい」
だから私はわがままを言うことにした。
この人が今日から私のご主人様…
ご主人様の部屋に一緒にいく。
部屋に入るとベッドは私が使っていいとご主人様は言う。本当はご主人様に使ってもらいたいけど言っても多分譲らないだろう。本当に優しい人。
でも私が「ご主人様」と呼んだら水を吹き出した後、やめるように言われる。もうメイドじゃなくなったしいいか。
お兄ちゃんと呼ぼう。
「お兄ちゃん」と呼んだら妹属性は無いとこれも断られる。でもさっきと違ってなんか嬉しそうだ。妹属性?はよくわからないけど、これは脈ありだね。
お兄ちゃんは影宮と呼ぶように言ってくる。聞いた話だと仲の良い人同士は下の名前で呼ぶらしい。
だから私は「わかりました。灰人さん」と答える。
そして私はお兄ちゃんと一緒に部屋で寝ることにした。
朝起きた私は、お兄ちゃんを起こすことにする。
「起きて、お兄ちゃん。朝だよ」
お兄ちゃんは寝ぼけている。チャンスだ。
「そんな夢見るなんて、本当は呼ばれたいんですね。お兄ちゃん。」
お兄ちゃんは認めない。さらに影宮と呼ぶように言ってくる。私は従うつもりは更々ない。
だから私は「えー、灰人さん嘘だー。心の奥ではお兄ちゃんって呼ばれて嬉しいと感じてるんだよ。」と答える。
「続けて呼びつづけてれば灰人さん、本当にお兄ちゃんになってくれるかな」
私は願望が口から漏れる
お兄ちゃんに聞かれたみたいだけど、なんでもないと誤魔化した。
その後お兄ちゃんが食堂からご飯を持ってきてくれた。
こんな豪華なご飯は初めてだ。お兄ちゃんのおかげでお腹いっぱい美味しいご飯が食べれた。
お兄ちゃんとそれぞれの世界について話をする。
お兄ちゃんのスキルについても教えてもらった。すご過ぎた。
楽しく話してるのに邪魔が入った。お兄ちゃんは訓練に行ってしまった。ご飯を置いていってくれたけど、早く帰ってきてほしい。
外が騒がしくなったのでカーテンの隙間から中庭を覗く。
…お兄ちゃんが兵士に連れてかれてしまった。
「えっ!なんでっ?」
ここからじゃ状況がわからない。勝手に部屋から出るわけにいかないしどうしよう。
どうすることも出来ないまま時間が過ぎる。
何時間経っただろう。また外が騒がしくなる。あれは…えっ?お兄ちゃんが処刑台に連れてかれる。やめて!誰かお兄ちゃんを助けて!そして、私の願いが届くことはなくお兄ちゃんの首が落ちた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます