第17話 逃亡者、処刑される
僕はミアを連れて部屋の前にいる。
果たして少女と2人で部屋に入って良いものだろうか?
隣のミアを見る。
僕の方をじっと見ている。
…覚悟を決めるか
「ここが僕の部屋だよ。今日はもう遅いから寝ようか。ベッド使っていいからね」
はい。ヘタレました。
「起きたらなんとかご飯は持ってくるようにするから、僕が出てる間も基本部屋の中にいて欲しい。明日の夜に他の仲間を紹介するよ」
僕は乾いた喉を潤す為に水を飲む。
「わかりました。ご主人様」
ゴフゥッ!僕は水を吹き出す。
「ゴホっ、ゴホっ。えっ、なんでご主人様?」
「ダメですか?私メイドだし」
なんか変な扉を開きそうになる。
「うん。やめてもらっていいかな」
ミアはシュンとする。
「じゃあ、お兄ちゃんで」
僕は天を仰ぐ
「僕に妹属性はないよ。普通に影宮でいいよ。」
属性を得そうになったのは内緒だ。
「わかりました。灰人さん」
うん。わかってはいないな
僕は諦めてソファーに横になった。
「起きて、お兄ちゃん。朝だよ」
僕はカワイイ声で起こされる。
「ん、…あぁ、おはようミア。何か変なこと言わなかった?」
「灰人さんを起こしただけですよ。」
「お兄ちゃんとか聞こえた気がしたけど…夢だったのかな」
寝起きでまだ頭が回っていないみたいだ。
「そんな夢見るなんて、本当は呼ばれたいんですね。お兄ちゃん。」
そうなのかな。
「そんなことないから。影宮ね」
「えー、灰人さん嘘だー。心の奥ではお兄ちゃんって呼ばれて嬉しいと感じてるんだよ。」
意地でも「影宮さん」とは呼ばないらしい
「そういう事にしといてあげるよ」
僕は大人なので折れてあげる。
「続けて……れば灰人さ……兄ちゃ……くれるかな」
ミアが小声で何か言ったきがした。
「ん?何か言った?」
「なにも言ってませんよ。」
怪しいな…まぁいいか。
「僕は食堂にいってくるよ。ミアはおとなしく待っててね」
僕は食堂にいく。もう何人もクラスメイトが来ていた。朝食がビュッフェ形式なのをいいことに僕は隠れて収納にご飯を詰め込んでいく。
詰め込み終えた僕は一人前のご飯をトレーに乗せて委員長が食べてる席に座る
「おはよう」
「影宮君、おはよう。ねえ、メイドさんの話聞いた?」
もう噂になってるようだ
「教えてもらっていい?」
どんな噂になってるか気になる
「昨日食堂で毒見させられたメイドの子が魔族に殺されたんだって。朝、胸にナイフが刺さった状態で発見されたみたい。」
魔族のせいになってるのか。
「内緒だから落ち着いて聞いてね。その子なら生きてるよ。今は僕の部屋に匿ってる」
委員長は声を出しそうになり堪え、小声で聞いてくる。
「…色々気になるけど、どういうこと?」
「昨日の夜にみんなと別れてから助けたんだ。ミアって名前。噂の死体は[偽装]で作った人形だよ」
「そんなこともできるのね。それで部屋にいるって…助けたのを理由に連れ込んだの?」
委員長にジト目で見られる。心外だ。
「委員長のところに連れて行こうとしたら僕のところがいいってミアが言ったんだよ。懐かれたみたい。兄妹みたいなもんだよ」
…朝の出来事のせいか兄妹と言ってしまった。
僕が場違いな事を考えていると
「ふーん。いいわ。そのミアちゃん?私にもちゃんと紹介してよね」
「今日の夜の会合に連れて行くよ」
元々そのつもりだった。
「楽しみにしてる」
僕は部屋に戻ってミアにご飯を出す。
ミアからこちらの世界の事を色々と聞きながら過ごしていると
コンコン!
ノックされる。
「誰ですか?」
僕はちゃんと相手を確認する。確認しながらミアに隠れるように指示を出す。
「これから訓練を行う。30分以内に中庭に集まるように」
ドア越しに集合の指示をうける
「ミア、行ってくる。ご飯ここに多めに置いておくから好きな時に食べて。誰が尋ねてきても開けたらダメだからね。」
「うん。いってらっしゃい」
ミアに送り出されて僕は中庭にいく。
中庭にはすでに10人くらい集まっており、しばらく待っていると大体集まった。
何人かいないのは部屋にいなかったとかかな。
僕達を一列に並べると、国王と宰相が前に立つ。…何故か横に高村の姿があるがなんでだ?一度僕の方を見て話を始める。
「皆に大事な話がある。すでに知っているものもいると思うが、昨晩魔族により我が城に勤めてくれていたメイドが殺された。魔族は我が優秀な騎士によって討伐したが、城にまで魔族の脅威が伸びていることに我は危機を覚えている。其方らには早急に力を得てもらいたい。しかし今の我が国には全員を育てる余力はないのだ。そこで先日確認させてもらった職業とスキルをみて優先度を決めていたのだが、大変遺憾な事に気づいてしまった。この中に大した能力もないのに皆の足を引っ張ろうとしているものがいる。」
国王は何を言ってるんだ?目線的にも僕のことを言っているのは伝わったが…行動が急すぎる。いきなりこんなこと言い出しても反感を買うだけだぞ?
国王が片手を上げる
「そのものを捉え牢に入れておけ。」
控えていた兵士が僕の両腕を掴む。
その光景をみて高村がニヤついている。
そうか、こいつが何か国王に告げたな
「沙汰は追って告げる。他のものたちもこの者のようになりたくなければ身の振り方に気をつけるように」
脅すための人柱か…。
とりあえずはおとなしく連れられていくか。
僕は地下牢に入れられる。
半日くらい過ぎた頃だろうか、牢から出るように見張りの兵士に言われ外に連れ出される。
そこには斬首台が置かれており、僕は膝をつかされる。
「や、やめろ。違う、相手を間違えてる。まだ死にたくない。謝るから許して……」
願いを聞いてもらうことはなく、刑は執行された。
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