第51話鉄砲の試射と領地の開拓

一応完成した鉄砲の試射を行う為、石神井城の近くにある開拓中の丘陵に来ている。

火薬は、硫黄も木炭の粉末も簡単に手に入るので問題はなかったけど、硝石に関しては、「古土法」と言われる方法で、厠周辺の床下にある土を集め、煮詰めたうえで草木灰を加えて更に煮詰めて一旦冷ますと、硝石の結晶が出来るのでそれを取り出して再度煮詰めて冷まし再結晶化させ純度の高い硝石を作ると言う少し手間のかかった方法で用意した。


現在は発酵小屋を作り家畜の糞やヨモギなど混ぜて発酵、熟成させ、そこから硝石を量産する硝石丘法を導入する予定で準備をすすめてる。

ニワトリ飼育も進んでいるし、今後も家畜を殖やす予定なので糞などもいくらでも手に入るから軌道にのれば硝石が安定して手に入るはず。

発酵小屋は相当数作らないといけないし、他国に情報が流れないようにしないといけないから秩父と奥多摩に村を作る予定だ。


ただ今回は古土法で得た硝石を元に完成した黒色火薬を使用し、鉄砲の試射をおこなう。

3丁うち1丁は不発だったけど2丁は暴発もせず轟音を轟かせ弾を撃ちだせた。

とは言え初めて鉄砲を撃つ囚人は轟音と衝撃に驚いてその場で腰を抜かしたため50メートル程離れた場所に用意したかなり大きな的に当たる事なかった。

その後、不発だった鉄砲を除く残りの2丁でその後も試射をしたら囚人も慣れて来たのか数回目にはなんとか大きな的に当たるようになった。

ただ予想通りとは言え命中精度は高いとは言えず狙撃とかには使えそうに無いのが残念だ。

狙撃が出来るぐらいの命中精度があれば合戦も楽になるんだけど、今の所は火縄銃を量産し開戦時か敵軍の側面を一斉射して損害を与える感じで運用しよう。

因みに不発だった1丁は鍛冶師が持って帰り分解して何処が悪かったのか確認するらしい。


この分だと鉄砲の量産に入るのは今年の秋以降だろうな。

まあ硝石の量産がまだだから鉄砲だけ大量にあっても意味無いから今は諦めよう。


その翌日、台地の開拓について治水担当の上田朝直、農政担当の白子朝信、生産関連担当の宮城政業と共に現在の大泉学園周辺向かい、構想を説明する。


そう、構想と言うのは台地を開拓する為に用水路を作り水車を利用して水力を利用し改造した手押しポンプで水を台地の上まで汲み上げ水を得られるようにするという方法だ。

言葉で言っただけだとあまりピンと来ていなかったので、段々畑や棚田をイメージして貰った。

改造手押しポンプで汲み上げた水を台地の上から流せれば畑にまく水を運ぶ必要も無いうえ蕎麦や菜の花なんかであればそこまで水を必要としないはずなので特に台地を利用しあまり水を必要としない植物を育てる事で菜種油の生産や食料増産にもつながるはずだ。

そして菜の花などを育てるのと並行して養蜂もする事でハチミツも得られるという思惑がある。


3人に説明をし各自の分担を指示すると大体は理解してくれたようで数日後から雑木林を更地にする作業を始めるとの事だった。

まだ農閑期だから農民を中心に人が多く集まるだろうとの事なのでどうやら用水路も並行して作るらしい。

昨年豊嶋領の一部が豊作でしかもお金が潤沢にあるという事で各地から流民などが集まって来ているので折を見て流民を使って大規模な開墾も出来るはずだ。

江戸時代、武蔵野国の石高は120万石を越えていたらしいし開拓を進めれば同程度の石高にはなるはず。

今年からは武蔵全土で正条植えの導入が決まっているので米の収穫高は確実に上がる事は間違えなくむしろ人手不足にならないか心配になる。

まあ流民が流入してるし管理さえしっかりとすれば何とかなりそうな気がするけど。


そして石神井城に戻ると白子朝信を呼んで各村々に通達を出すように指示を出す。

指示の内容は村の家々の周りに椿を植えて椿の垣根を作り実った椿の実は一定の金額を決めて買い取る事、村の周辺には柿の木や栗の木、栃の木にイチョウの木を多く植えるよう命じる。

これは飢饉が起きた時の対策になるので早急に進めさせる。

桃栗3年柿8年と言うし早いうちに植えてないといざという時、まだ実が付くまで育って無かったって事になりかねないし…。


それにしてもジャガイモとサツマイモ、カボチャなんかを早く手に入れたいとつくづく思う。

まだ日本に伝来していないから明の国辺りまで行かないと手に入らないだろうけど、恐らく来年ぐらいには船の数も増えるから多分手に入るとは思うけど、やっぱりこの時代の野菜類は現代に比べると少ない!!

出来れば明との取引でビートやテンサイが手に入れば良いんだけど、流石にまだ難しいかもしれない。

サトウキビは関東で育てるのは難しいだろうし、砂糖が生産出来ればかなり利益が出るんだけど、まだまだ砂糖生産は先になりそうだ。


なので一旦砂糖から離れ、とりあえずは山間部の農村を支援して養蚕をさせて絹糸の生産や和紙の生産に力を入れよう。


農業改革と言っても出来る事と出来ない事があるから産業も並行して力を入れないと現金収入得られないし。


本当にやる事多いな! 責任者に任命した人達、過労で倒れない事を祈ろう!!

この時代、寿命が短いのって過労が原因なんじゃないのかと思えて来た。

まあ食生活や衛生面とかが原因なんだろうけど…。


補足--------------------------------------------------------

補足

戦国時代、火縄銃は大変高価で、種子島に伝わった際、ポルトガル人が2千両で売ったとも言われています。

大体今のお金に換算したらいくらなのか?

その後普及が始まるも、手作りで一丁の制作に時間がかかる事なども含めかなり高額だったと言われています。

また火薬の原料である硝石などは輸入に頼っていた為、維持費を含めると相当な貴重品と言えます。

なお、火縄銃は口径が制作者によって微妙に異なった為、同一規格の弾丸を使用しずらいと言った欠点もあったみたいです。

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