第25話直臣の雇用と専業足軽

夏が過ぎ、秋になると米の収穫が始まる。

この時代、農兵が主体だから、夏にも合戦があるかと思っていたけど、国人領主同士の小競り合いはあったものの大きな合戦には発展しなかった。

相模の国なんか完全に膠着状態みたいだから三浦さんが旗幟を鮮明にしない限りはこのまま暫くは膠着状態が続きそうと、泰経さんが言っていた。


そして白子さんに任せてた農業改革の成果は天候も良かったこともあり、かなりの成果があった。

やっぱり稲を正条植えで栽培したのが大きく、今まで通り田んぼに種籾を直接撒いて育てるよりも質、量共に満足のいく結果だ。

白子さんの話では昨年度に比べ約1.5倍増らしい。

そして畑で育てていた野菜や麦なども堆肥を使用する事で昨年よりも豊作とのことらしい。

ただ、割った竹を使用しての山芋の栽培も進めているけどこちらは流石に1年では物にならなかった…。

むかごからだとどうやら1年目は種芋にしかならないらしい。

今回収穫した種芋を使用しての山芋栽培は来年に期待しよう。


ただ白子さんはえらくポジティブで、気にした様子もなく、米の収穫が終わり次第、カブと大根を植えると言っていた。

色々と調べたけど、やっぱりこの時代に日本で栽培されている野菜って少ないんだよね…。

玉ねぎとかも米の収穫後に植えればと思ってたけどまだ日本に伝来してないし。


ホント早く人参やジャガイモ、サツマイモにカボチャ、トウモロコシ、出来ればスイカやメロンも輸入して栽培したい。


白子さんからの報告を受け、石神井城に集まった泰経さんを始め一門衆の人達は農業改革の結果に驚き正条植えの導入の為の道具を準備すると言っている。

食料生産量が上昇すれば収入が増え軍事力にも直結するから皆さん真剣だ。


そして今回、直轄地での収穫が大幅に上がった事と、石鹸などの収益でかなり金銭的な余裕が出来たので前々から考えていたた学校っぽい物の創設と専業兵の雇用を始める。


何故かこの世界では現代の日本語が使われているものの、識字率が異常に低い!!

武士の身分であっても読み書きがろくに出来ない人居るし、農民に至っては読み書き出来る人が皆無に近い。

読み書きができるのは身分の高い人や商人、そして僧侶などが殆どの為、何か告知をするにしても口頭で伝達になるのでどうしても時間がかかる。


そこで今回学校っぽい物を創設し読み書きを覚えさせようと言う計画だ。

教師役には隠居したり合戦で怪我をして身体が不自由になった人の中から読み書きが出来る人を雇い無料で教える。

ただ農民などは農業が忙しく、子供も時期によっては大切な人手の為に集まらない可能性を考慮し、主に農閑期に授業を行い、昼食をこちらで用意すると言うこの時代では破格の待遇にする事で人を集める。

これも収穫量が上がったから出来る荒業!


あとは専業兵の雇用に関してだけど、まず家臣の3男、4男など家を継げない人達を年間1貫文で雇用し足軽部隊を編成し訓練をし、その後農家の3男、四男などから募集する予定だ。

家臣の子息なら武芸は多少なりと出来るはずだから最初に訓練をしておけば後で農家から雇った人達を指導する立場にもなるだろうし。


1石でお米約150キロ換、2石で1貫文だから、お米300キロ買えるお金が有れば生活には困らないはず…。

訓練やその他作業をさせてる時は食事を用意してあげる予定だし。

最初は多分多くても100~200人ぐらいだろうから金銭的にも大丈夫だろう。

それに手柄を挙げたら本家から独立させて取り立てるって条件付いてるし。


っと思っていたら家臣の子息から募集したら400近くも集まってしまった…。

どうやら手柄次第で取りたるとの条件が魅力的だったみたいで3男、4男だけでなく次男の希望者まで現れた。

どうやら3男がまだ幼いからと言う理由らしいけど、予想外の多さに予算が足りるか心配になる。

何とかなるでしょう!!


う~ん、希望者の中から、読み書きが出来る人を内政担当者候補として教育しようと思ったんだけど読み書きできる人は50人ぐらいしか居なかった。

これは多いと言うべきか?


そして読み書きが出来ない350人程には槍と脇差、籠手に脛当て、そして水車を動力とした水力工具で作った木製の胴丸を支給する。


槍は長柄で約3メートル、まずは集団戦の訓練から開始だな…。

息を揃えて槍を振り上げ振り下ろすの繰り返し、長柄は刺すより叩く方が効果があるからね。

あとは脇差での戦闘訓練に弓の訓練、何故かこの時代の人は直線的に矢を放ち的を射抜こうとするけど、集団戦闘なら斜め上に向けて一斉射で良いんだよね。

だから弓の訓練は意外とすんなりと進んだ。


やっぱり長時間長柄の振り上げ、振り下ろしを繰り返すのが一番きついらしい。

せめて一時間ぐらいは継続できるようになって貰わないと。


因みに訓練担当は白子さんの家臣だった武石信康さんが担当してくれている。

武石さんは白子さんの家臣の中でも武辺者だったらしく、白子さんが農政改革担当となった事で自分の直臣になった人の一人だ。


武石さんは、ゴツイ顔とドスの効いた声だけど面倒見が良いので皆さん文句を言わず訓練に励んでいる。


時間が無かったから胴丸とか色塗ってないし造りが雑だから、これから専業足軽を増やすにあたってもっとしっかりとしたものの制作に力を入れよう。

見た目も大事だもんね。


それにしても何処から聞きつけたのか自分に仕えたいって人が来たんだけど、名前を聞いて少し吃驚した。

だって、名前は風間小太郎元重さんと言う方で相模の国人領主だったみたいだけど大森氏に領地を追われて一族郎党を率いて浪人をしていたらしい。


確か風間さんって風魔忍者のモデルになった一族だった気がしたから即答で受け入れてしまった…。

直臣が増えるのは良いんだけどぶっちゃけ自分所領を持って無いんだよね。


暫くは衣食住の保障とお金で我慢してもらおう。


補足-----------------------------------------

※補足

この時代の識字率は大変低く、武士であっても読み書きが出来ない人も居たそうです。

また所領の少ない武家の3男以降の男児は上の兄が死んだ場合を除き家を継ぐことは出来ず、また所領を分けて分家を作る事も出来ない為、殆どの場合は家臣として衣食住を賄われ生活をするか、男児が居なかったり、戦死や病死で男児が居なくなった他家へ養子に出される事が多かったそうです。

3男以降が結婚した場合はどうやって生活をしていたのでしょうか…。


浪人

鎌倉時代~室町時代にかけての浪人の多くは1人では無く、家族単位で行動し十数人~数百人単位だったようで合戦の際には領主に金で雇われて戦っていたそうです。

甲斐の武田氏には浪人で構成され浪人衆と呼ばれた部隊があったそうで長篠の戦いの際には、酒井忠次の奇襲で城が落城しそうな際、落ち延びるように言われても武田家に忠義を示して戦ったとも言われています。

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