第14話 斑点の悪魔

槍と槍との打ち合いを始めてから数分が過ぎた。

特にお互いの死力を尽くしているわけではなかったので息が上がっているということはなかった。

稽古みたいに互いの力量を試している感じである。


「その程度か?」

「では遠慮なく!!」


そういった俺は突きの速さを変えて攻撃をしかけた。

そして何合か打ち合ったあと、シャンタルの方が押されかけていた。


「くっ!」


そして、最後には俺がシャンタルの槍を吹き飛ばした。

くるくるくるくるくると回転して地面にグサッと刺さった。


「やるではないか!」

「本気ではなかったくせに」


その言葉にふっ!と笑みを見せたシャンタルは力を出し切ってはおらず様子見をしていただけなのは自明であった。


「よかろう」

「???」

「いっしょに行くことにしよう」


この打ち合いでどうやら何かを掴んだらしいシャンタルはそういった。

昔のヤンキーさながらだなと思った。そういう性格なのだろう!

すると、


「ありがとう!!ママ!!」


そういったフランが横をすり抜けてママことシャンタルに抱きついた。


「お、お前のためだからな」

(・・・・わかりやすっ!)


この人は要するにツンデレなのではないのか?と心の中で突っ込みをいれていた。

口に出せばめんどくさいから・・・。


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そして、俺たちはあの場所へ戻ることになる。

その場所は俺しか知らない。

亜人から奪った方位磁石。

それに夜天体観測していたら北極星のような動かない星もしっかり確認している。

地球とは違って南だから南極星かもしれない。ネーミングなどどうでもいいのだが。


「結構、歩いているがどこへ向かっているのだ?」

「俺の強さをまた一段階上げるために必要なことさ!」


「?」何のことか理解できないシャンタルを尻目にさらに歩を進める。

フランの体力は我々のそれには程遠いものがあったので基本彼女に合わせて歩いていてさらにルーン文字を教えてもらいながら7日間ぐらいかかって乳牛がいる場所に戻ってくることができた。


「えっ!」

「げぇー!!!」

「????」


2人の反応に驚きを隠せなかった俺もそちらの方向、つまり、乳牛を見た。

シャンタルすらかなり複雑な表情をしていないので何かヤバいのか?

ただの乳牛ではないのか?

いずれにせよ!俺は乳牛の近くに歩いていくことにした

すると後ろから声をかけられた。


「お、おい!!どこへ行くつもりだ。さすがにやめろ!それは」

「か、帰ってきた方が身のためですよ?」

「何を言っているんだ?たかが乳牛ぐらいで」


そう言いながら俺はさらに乳牛との距離を縮めていった。

目の前にたどり着くとまさに現実にいた乳牛と同じ目をしていた。俺はそこにこれまた亜人から奪ったツボのようなものを牛の乳の下に置いた。


「や、やばいぞ!!お、おい」

「こ、殺されちゃう!!!」


何か後ろの方からやたら物騒な言葉が投げかけられているのには疑問しか残らないが構わず乳牛の横に座って乳を掴んで一気に絞り出した。

案の定、そこからは牛乳が出てきた。

以前の俺はひたすら自給自足の毎日を送っていたので乳搾りに関してもプロレベルである。

あっという間にツボいっぱいに牛乳を搾り出すことに成功した。


「な、なんだと」

「うそ・・・・?」


その光景を見ていた2人はあり得ないという風体で俺を見ていた。

逆にその光景が俺には異様に感じた。


「何にそんなにおびえているんだ?」

「普通の乳牛にそこまでおびえる意味あるんか?」

「乳牛?ってその斑点の悪魔のことなの?」


フランがまた聞きなれない言葉を放った。

どうやら乳牛は何かしらの理由で悪魔扱いされているようだ。

だからこそ、野生の乳牛がいるのはそのためなのだろう!!


「ちなみに聞くんだが斑点の悪魔っていうのはこの動物のことなんだろうか?」

「当たり前だ!」

「どこからどう見ても斑点の悪魔ではないか」


さすがのシャンタルですらこの有様である。

なぜ、ここまでに乳牛が貶められたのか?おとなしいし、普通に牛乳を搾り出すことができた。

あまりにも理解に苦しんだので理由を聞いてみることにした。


「なぜ、これが悪魔なのか?教えてほしいのだが・・」

「あのね、まず顔が悪魔でしょ!それとそのツボに入っている悪魔の汁それが臭いのなんのって皆がこぞって毒物だと言っているわ」

「・・・?は?」


さらに意味が分からなくなってきた。たしかに現代でも臭いのがダメだという人は多いがこの世界の人はさらに鼻が敏感ということなのか?

それよりも顔が悪魔の意味がわからない!


「顔が悪魔でしょって言われたんだが・・・・どういうこと?」

「貴様は聖神魔傳という書物を読んだことは・・・・ないのか!」

「せいしんまでん?」

「そうだ我らの世界の誕生などが描かれている聖書だ!!」


この世界にも神が創り出した的な神話が書かれている本があるということか!

それに乳牛の顔を悪魔として描いたものがいるってことね!

そいつが牛乳嫌いなのでは・・・・?

疑問が解消された俺はこの牛乳を加工する作業にうつることにした。


(第15話につづく)

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