第13話 正体

そこらじゅうに生えている黄色い実を手に取り食べてみる!


「うげ!!す、酸っぱい!!」

「レモネはそういう果実だから当たり前なんだけどね、ママ」

「レモネをそのまま口にするのを初めて見たよ」


とやれやれと俺の顔を見るシャンタル。

よほど当たり前の事らしい。

しかし、求めていたものがこれほど簡単に手に入るとは思っていなかったので助かったのは事実である。


ひとまず、荷物になるので今は取ることはせずあの場所に戻る最中に採集することにした。


「では、フランにはルーン文字を道中教えてもらわないといけないので俺の目的と同時進行になるんだけどシャンタルはどうする?」

「お前は我を小馬鹿にしているのか?」

「え?」

「お前とフランだけで旅をさせるわけないだろうが!!わからんのかこのブタ饅頭が!!」


あ、完全に信用されてないのね。ってわかって結局付いてくるということなんだと理解した。


「それでは今日は旅の小屋で休んで明日出発と行こう!!」

「お前が仕切るんじゃないよ!!」


すぐさま突っ込みがきた。なんか俺がイニシアティブを取ることは気に入らないようだ。

まあ、別に気にはしない。

俺は俺の目的が同時に手に入る高揚感が高まってきているのが自分自身でもわかったからだ。


「ちなみに我とフランが小屋で寝るのでお前は外で寝て、ついでに門番でもしてもらおうか?」

「あ、ああ」


最初から前途多難であるのは間違いないようだ・・・・。


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翌朝、寝袋から出てあくびを一つすると周りは結構な霧に包まれていた。

特に邪悪な気配などは全くないのでその風景を見ながら薪に火をつけた。

そして朝の少し肌寒さを解消して、何か温かいものを飲もうと思ったからだ。


そして一杯の白湯を飲んで少し考えてみた。この世界に来た理由。この姿な理由。この世界で俺は何をするべきなのか。

この霧のかかった風景が今の俺の状態にものすごく似通っていたので感傷的になったのかもしれない。

すると、小屋で寝ていた二人が起きてきた。そのころには霧も晴れ陽光照らす朝が訪れていた。


「よく、夜這いをせずに外にいれたものだな!この美人たちを目の前にして」

「・・・・・ああ」

「なんだ!その気のない返事は!!」

「うーん!なんていうか前の俺だったらそういう感情もあったのかもしれないけど今の俺はブタに近いせいか何もそう言った欲望に至っていないんだよ」


さらに言えば、シャンタルに関しては何が美人なのかよくわからなかったのもある。本人には口が裂けても言える状態ではなかったが。


「し、しょせん、ブタ野郎はブタ野郎ということだな!ふん!くだらんことを口にした気にするな」

「大丈夫だ!何も気になどしていない」


ごつーーーん!!!


頭を鈍器で殴られたぐらいのシャンタルの鉄拳がクリティカルヒットした。


「い、いたっ!!」


思わず口に出るほどの力でなぐられた。

それを見ていたフランは止めもせず笑っていた。

どういうことなんだ?

結局わからずじまいで次の話題に変わった。


「お前は言葉の端々で自信に満ち溢れているというか、その前向きな姿勢といい、お前は何者なのだ?あの体捌きといい、その瞬時に切り替えのできる知能といい、通常のブタ人間ではありえない」

「それに前の俺っていうのも気になるな!」


この人は俺の話を全く聞いてないと思っていたが記憶力に関してはすごいのは間違いなかった。


「笑いたければそうしてもらえれば構わないから正直に話をさせてもらおう」

「わかった。」

「俺はもともと違う世界の人間だった。それが何の理由でこうなったのかは覚えていないのだが、前の世界にいたときの記憶は鮮明だ」

「・・・・・」


俺の話を今までのようにおちゃらけるわけでもなく真剣に耳を傾けている狼の女性ことシャンタルと自称娘のフラン。


「お前の目には嘘偽りを見出すことはできない。その点は信用しよう」

「ちなみにお前の流派は何というものなのだ?」

「神頑流という」

「しんがんりゅう?聞いたことのないものだ。だがお前の技はかなり洗練されている昨日今日出来上がったものではないのは確かだ!」

「わが神頑流は武術はもとより剣術など武器への造詣も深い。槍を貸してもらえないだろうか」


最初はいぶかしげにこちらを見ていたシャンタルだったが自分が持っている槍ではなく、腰につけている予備の伸縮型の槍を俺に向かって放り投げた。


「それを使え!」

「すまない」


俺は伸縮型の槍を引き延ばしてシャンタルに向かって攻撃態勢を整えた。


「ほう!我の槍捌きとやりあおうというわけだな」


そういうや否や俺は突進をかけ槍の連撃をシャンタルにしかけた。

それを巧みな槍捌きでかわしているシャンタル!


「ふん!久しぶりに燃えるわ!!」


完全に楽しんでいる彼女がいた。


(第14話につづく)

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