第12話 新たな力

レフ=アルテーン!なんか急に決まった俺のこちらの世界の名前。だが、悪い気はしなかった。


「ちなみにルーン文字でレフはブタ。アルテーンは解放者という意味があるんですわ」


ルーン文字?ってなんだ?と思いながらも意味が今の俺にしっくりきていた。特に解放者になるつもりはないが、このまま搾取され続けるわけにはいかない!!


「どうでしょう?気に入っていただけると嬉しいんですけど?」

「うん、ありがとう!ではそうさせてもらうことにするよ!」


狼の女性の眉間にしわが寄っている。どうやら俺の受け答えに問題があるのだろう。

特に気にしないようにしている。

それより気になることを聞いてみることにした。


「ルーン文字というのは?」

「ルーン文字というのは、昔あった魔法王国で使われていた文字ですわ!その文字自体に魔法の力が備わっていて、扱うことができれば魔法を使用することができますわよ」


魔法!?まさにファンタジー世界の醍醐味じゃないか?そんなものがこの世界にあるのであれば俺はさらに強くなれるんじゃないのか?


「お前、簡単にルーン文字を使って魔法を使えるとか思っているんじゃないよな?」


そんな考えがわかっていたかのようにフランのママは俺に言ってきた。


「どういうことだ?」

「ルーン文字を解読するのはとても難しくて研究者でもそんなに扱えるものはいないっていうのが現状なの!」


ファンタジー世界にもいろいろな制約があるんだなと思いつつ、基本的にこの世界の住人ですら扱えない代物らしい。


「でも、そんなに悲観しなくても大丈夫かもしれないですけどね!」

「えっ!!それはどういう・・・」


聞こうと思った時、彼女は嬉しそうに話に割り込んできた。


「私、多少であれば扱うことができるのですよ!」


おお、なんだこの展開は美少女でスタイルがよく器量よしで魔法が使える?まさにチートじゃないか?


そういっているうちに旅人の小屋にたどり着いた。そこで椅子に誘導された俺はそこに座るとソフィが空中に何か文字らしきものを紡いでそれを掴んで俺にかざす。


治癒ヒーリング!!」

「こ・これは?」


呟いた後、俺の身体が緑色に光始めて切り傷や擦り傷などの傷が元通りになっていった。


「これが魔法のチカラなのか?」

「私の得意な魔法は治癒系に限られますけどそちらのルーン文字はある程度の嗜みはございますよ」

「普通、そんな嗜みは存在しないけどな!我の娘だからこそできる御業よ!!」


自分の事のように娘自慢を始めた狼の女性。意外に子煩悩なのかもしれない。

でもそこまで彼女が自慢しているということは簡単なものではないことは想像に難くない。


「この力を手にするためにはどうすればいい?」

「私が多少なりとは教えることはできますが、確実性のあるものではないですよ!!」

「それでもいいので教えてほしい!!」


これからのことを考えると絶対に必要なスキルであると見出していた。

これと俺の神頑流を組み合わせればこの世界にも対応できるかもしれない!


「はーはははははは!!ブタ野郎の脳みそは食べるために存在するのであって使えはしないぞ!」

「ちょっと!!ママ!!そういうことは言ってはダメでしょ!!」

「いや、我でも無理なものが・・・・な?くくくくく・・・。」


そう言われながらも笑いを堪えている狼女を見てかなりイライラ度が増してきた。しかし、今はそのスキルを手にしてない以上、言い返すつもりもなかった。

だが、間違いなく俺の心のなかでスイッチがオンになったのを感じ取った。


「すぐに教えてほしい」


俺の真顔に少し動揺したソフィではあったが、


「わかりました。ではお教えいたします!」


すぐに快諾してくれた。

それを見ていた狼ママも俺の真剣な姿に笑いをやめてこちらを伺っていた。


「ふん!面白みのないブタ野郎だ!やれるものならやってみるがいい!!」

「わかった!あんたの期待にも応えよう!」

「だ、誰がお前になぞ・・・・うーん!言ったからにはなれなかった時ただでは済まさぬ。我の名はシャンタル!お前を殺すものの名だ。覚えておけ」


要するにルーン文字を取得できなければ引導を渡されるということだ。

あまりのシャンタルの真面目な表情にさすがのソフィも突っ込みようがなくて困った表情をしてこちらを見ていた。


「安心しろ!フラン!俺は必ずルーン文字とやらを使いこなすようになるから!」

「・・・・・うん、わかったわ」


やはり少しの懸念はあるようだ。それほど難解なのが手に取るようにわかる。

しかし、余計にマスターしてやろうという気で俺はさらにやる気になった。


そして、今回デスケードまで行ったもう一つの目的を話しておかなければならなかった。


「一つ聞きたいことがあるのだが、いいだろうか?」

「何?答えれることであればいいのだけれど」

「レモンという食べ物を知らないだろうか?」


ふたりがその言葉を首を傾げて聞いているところを見るとレモンはないのかと諦めていたら、


「レモネっていう食べ物ならあるけど」

「それはどこにあるんだい?」

「そこらじゅうに生えているんだけど・・・」

「・・・へ!?」


周りを見渡すと確かに黄色い実の食べ物が数多くあった。


「お・俺の苦労は・・・」


(第13話につづく)

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