第11話 突破そして・・!

「?」

「て、てめぇ」


現状がわからなくて混乱するもの、理解して憎悪をむけるものそれぞれいたがそこにいた全員が一瞬でも混乱を招いた。

それはリンマとかいう名のネズミの頭が転がっていたためである!

俺はその一瞬を逃さなかった!すぐにそれが持っていた大剣を手にすると穴の空いた方向に向かって全力で逃げ出した!!


「お、おい待て!コラ」


何かしら悪態をついてきてはいたがやつらが気づいた時には追い付けない速度と距離で走り抜けて門をぶち破ってさらに逃走した!

その時、怒号の声が大地を震わさんばかりに聞こえてきた。


「ブタやろうーーーーーーーー!!!!貴様はぜーーーーーったいに許さねぇ!!!!」

「必ずぶーーーーーっころーーーーーす!!!!!」


あまりの声の大きさに一瞬たじろいだが、大剣をふるい町の門を叩き壊してさらに逃走を続けた。


「二度とあの街に足を踏み入れることはできないな」

「踏み入れる気もないが」


かなりデスケードから離れた場所にたどり着いて後ろを確認して止まった。


「ぜえ、ぜえ、ぜえ、はあ、はあ、はあ・・・・」


息も絶え絶えの状態であったが、息を少しづつ整えていた。


「きーききき!死ねーーーーー!!!」


後ろから先ほどのナイフ使いのネズミが今度は殺傷能力の高そうな刃のギザギザな少し長めのナイフで俺に向かってきた。

こいつは先ほどの戦いでも常に死角を狙ってきていたのでそういった能力を最初から持っていたのであろう!!

全くと言って気配を感じさせずさらに俺の速さに付いてきていることが証明している。


(や、やられる!!!!)


俺は今まで全力で走ってきた徒労感と驚きで身体が完全についてこなかった。

敵がスローモーションのように見えた!!

これが死ぬときの定番の走馬灯というやつだなと思いながらも敵のナイフが俺の心臓に刺さる寸前!


「ぎゃぴ!!」


変な声をだしてナイフ使いの頭の右のこめかみから左のこめかみまできれいに矢が刺さった。

そして、そのまま死んだ。


「な・なにが・・・?」


全く把握できていない状態で矢が放たれた方向をまっすぐに見た。

そこには、母親が襲われたときに見た、妙齢な女性が立っていた。

その手には弓。中距離用のあまり長くない柄の物だった。


「あ、あの人は?」


妙齢な女性であることは認識しているのに、ブタであるせいなのか全く身体的には反応がなく、ただ茫然自失でその女性を見ていた。


「大丈夫ですか?」


そうかけられた声色も俺の気に入るものであった。


「てめぇ!我の娘をずっと見てんじゃねぇよ!ブタの分際で!!」

「!?」


その声に振り返ってみると、そこには狼の顔が俺のすぐそばに近づいてきていた。

咄嗟に臨戦態勢をとる!


「待って!!それは私のママなの!!」

「え?」

「ほぉー我とやろうってのかい?命知らずだね!!いいよ、かかってきな!」


頭が混乱してきた。よく見ると狼の顔をしたそれは人間のようでかなり精度の高そうな槍を持っていた。これも亜人種なんだろう!よく見ると胸のあたりが膨らんでいるし、ママといっているし、声が女性っぽいのでおそらく女性なんだろう!?

しかし、この妙齢な女性との接点が際立って全くない!

彼女は今度はその狼に話しかけた。


「もう!ママはすぐ喧嘩を吹っ掛けるんだからやめてよ!!」

「ふん!!」


殺気だって俺を見ていた狼の女性はその言葉を聞いていやいやその気配を消して静かになった。

それを見て俺も臨戦態勢を解いた。


「ママ、ありがとう!」

「・・・・」


その言葉を聞いて満更でもない様子の狼の女性を見て手名付けられてるなと純粋に思った。


「あっちに旅人の小屋があったからあちらでお話ししましょうか?」


そう言われて「はい」と言って素直についていくことになった。

こんな状態は前の世界ではあじわったこともないことだったのでかなり動揺している。


「あそこね!」


言われた方角を見るとこの世界では定番の旅人の小屋を確認できた。

順番的には妙齢な女性。俺。狼の女性の順番で歩いていたことに今、気づいた。

どうやら狼の女性は俺に相当警戒心を抱いているのだろう!

また、絡むと厄介なのでそのままにして妙齢な女性の後に続いて歩いた。


「そういえばあなたのお名前はなんておっしゃるのかしら。私の名前はフランツィスカ・フォン・ドレヴェス。フランと呼んでいただけると嬉しいですね」

「ん?俺の名前?そういえばそんなことまで考えていなかったな」

「だいたいブタ野郎に名前をつけるなんて今まで聞いたことがないぞ!」


ちょっとカチンときたが自分も特に気にしたことはない。だが、前の世界での名前は憶えている。


「えー!!名前がないのは不便ねー!そう思いますよねー」

「あ、え、うん」


微妙な返事をしてしまう俺だった。

何かフランというこの女性は少ししゃべり方に特徴があるというか気品にあふれていてそれでいておっとりしている感じではある。

こういうところがなぜかしら引き込まれてしまう部分なのだろうと後から思った。


「うーんと!レフ=アルテーンにしましょ!!」


なんか唐突に名前が決まったのであった・・・・。


(第12話につづく)


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