第6話 試練

最初来た下水ではなく、夜になるまでの間に何とか壁のほころびを見つけていたのでそこから抜け出すことには成功した。

追手が来ることも想定してとにかく逃げた。


(一応追ってくる気配はしない!)


気配がないことを確認して近くの森にまたトレーニング場を作成した。周りには幾重にも罠を張り巡らせていることは前回と同じである。


(今回は前回のような鍛錬では意味がない)

(なんとかして体質改善を行って速筋の繊維を太くしなければならない!)


逃げながら最終的な判断をそう下した。

前の世界では30秒で決断したことは1時間後に下した決断と結果が同じであったと聞いている。

だから俺は即断即決を座右の銘としている。


(前の森で亜人ではない動物、ウサギのようなのがいた覚えがある。そいつを捕まえてまずはタンパク質の確保をしよう!)


この森にいるのかどうか・・・いた!!

どうやらある程度同じ場所で繁殖している生物のようだ。


(よし、弓と矢を作成しよう!!)

(俺にかかれば半日でできるはず)


そう思って取り掛かったが材料を集めている最中に罠に引っかかっている亜人を見つけた。


(ん?あれは弓と矢じゃん!!ラッキー!!)


その亜人から弓と矢を拝借してすぐにウサギのような生物を捕獲する作戦を開始した。


(案外すぐに見つかるものだな!あいつは俺が捕食者だとは考えていないということか?それともあまり狙われてない可能性もあるな)


なんにせよ。弓の弦を引き絞って狙いを定めて矢を放った!

一発で命中してウサギのような生物は倒れた。


早速火をおこしてその生物を焼くことにした。

基本火を通せばある程度のものは食べられる。


(毒がなければの話だけど・・・・!)


独り言を心の中でつぶやいてじっくり焼けるのを待つ。

焼けてきた肉を見てもなんの気持ちの高ぶりもなかった。俺は前の世界ではどちらかというと肉が好きだったのだが、何の感慨も受けなかった。


(そろそろかな)


充分に焼いたウサギのような生物を見て、ひとまず食べてみることにした。

歯ごたえ充分の固い肉だったが食べれないというほどではなかったので咀嚼して飲み込んだ。

その直後だった!!


(う、うえええええええええええええええええええ!!!!!!!!!)


その肉を吐き出した。


(はあ、はあ、はあ、どうなっているんだ???)

(もう一度だ)


もう一度挑戦したが、前回と同じですべて吐き戻してしまった!


(こ、これは・・・・身体が受け付けてないということか?)


自分自身で解析をして受け付けない理由を考えたが結論は当然わからない。

しかし、ここで引き下がるわけにはいかない!!


(強行突破だ!!根性で乗り越える!)


理論ではなく根性論で乗り切ることにした。


ひたすら食っては吐くの繰り返しを数十回行った。

脱水症状になりかけていたので水分だけ補給した。


(く、くそ、はあ、はあ、な、なぜ、う、うけつけ、、ない?)


全く受け付けない身体にいら立ちを覚えながらもひたすら続けるしかなかった。


(こ、こうなったら、絶対に吐かない!!消化されるまで我慢するしかないな!!)


そう考えた俺は即時実行した。かなり冷たくなったウサギのような生物の肉はさらに固さを増していたが構わず口にした。

同じように身体が拒否反応をおこし、吐き戻そうとする。


(くっ!これは死んでも吐かない!!!)


口に手を当てて吐き戻すのを必死でこらえた!のどまで嗚咽感が来ているのをひたすら耐えて外に出ないようにした。

その苦痛は並大抵なものではなかった。


(ううううう、くっ!んんんんんん!!!!)


耐えていること2時間ぐらいたったように思えたが30分ほどなのかもしれない!

いずれにせよそのぐらい耐えていたら意識がバンと黒くなった。ブラックアウトだ!


---------------------


俺が次に目が覚めたのは陽光が照らしだす朝であった。


(はっ!まずい!!!!)


俺は周りをすぐに確認した。しかし、俺の周りにはウサギのような生物の肉を吐き戻した形跡は全くなかった。


(う、うまくいったのか?)


すぐに踊り出すぐらいの喜びがあったのだが、まだ完全に食べれるようになったのかわからなかったので、また、ウサギのような生物を探し出して射殺した。


(なんて、無防備な生物だ!余程俺たちの方が美味いのだろうな)


意味のないことを普通に考えて、さっそく焼いて食べてみた。


(・・・・・・・・!?)

(た、食べれた?!)

(よ、よし、これでやっと次の段階に移れる)


俺はそのウサギのような生物を完食するとさっそく俺のトレーニング法を行った。

そして、いろいろなものを試して食べてみたが、吐き戻しは二度となかった。


(あとは鍛錬を繰り返すのみだな)


レティ草以外の食物を食べてそのあとはひたすら鍛錬を行った。

一か月の月日が立った!


(神頑流電雷脚!!!)


と呟きながら久しぶりの神頑流体術を使用して近くの木を蹴りで倒した。


(これでやっと俺の全盛期の1/10までもどったな)


そういった俺の身体はかなりの筋肉をつけることに成功していたのだった!!


(第7話につづく)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る