第5話 真実

俺はその露店の状況を確認した後、噴水で体を奇麗にしてから探索を続けた。

そして、ある家をのぞいたら食卓にブタ人間!

飯屋にもブタ人間!


(これは間違いないな)


俺たちブタ人間が狙われている理由は間違いなく、食卓にならぶ同族が教えてくれた。


(俺たちブタ人間は食用のために付け狙われていたんだな)


そして、さらに探索を続けるにつれて見えてきたのは亜人も同じく食しているのと、人間と売買しているものもいたことである。


(この世界というか俺たちの世界でも豚は食用であったから当然といえば当然の話であったかもしれないな)

(いざ自分がなってみるといい気分ではないな)

(自ら食糧とするために狩るものと金のために狩るもの。同じ狩るものであることに何も変わらない。要するにすべてが敵だということか!)


この結果を導き出して少し世界から除外された感じがした。

だが、そんなことを言っている場合ではない。

俺の命がかかっているのだから・・・。


(この状況の打開策をどうするべきか?というよりもっと自分の体を調べて筋肉がどのような形で形成されているのかを確認すべきだな)


そう考えた俺は解体されている仲間の筋肉繊維を見るために肉屋に潜入することを決めた。

すぐさま行動に移して肉屋に潜入した。

するといとも簡単に肉屋の地下にある解体部屋の潜入に成功した。

わざわざブタ人間を盗んでまで手に入れようというものがいないのか?この都市が裕福なのか?わからないが面倒を回避できたのでよしとしよう!


(よし、早速確認するとしよう!)

(うーん!この腕の切り口から察するに、どうやら速筋と呼ばれる部分の繊維が細くなっているな)

(ただし、遅筋に関しては一定の発達をしている。逃げるための持久力だけ発達したということか?)


俺が住んでいた世界では豚は本当は筋肉でできているのは話に聞いている。

同じようにはいかないのはしょうがない。

この間出会ったオークがそれに近いのであろう。


(しかし、速筋の繊維が細いからと言って手をこまねいているわけにもいかない)

(考えろ!考えろ!考えろ!考えろ!)


ひたすらに自分に言い聞かせた。


(筋肉をつけるには食事とプロテインか・・・。)

(おそらくレティ草だけ食べているところが問題なのではないだろうか?)


持っているレティ草を見ながらそんなことを考えていた。

考えすぎていたため、後ろの気配に全く気付かなかった!!


「なんで生きているブタ野郎がここにいるんだよ」


というなりその人間は牛刀を振り下ろしてきた。

ギリギリかわすことができた。


「なんだー!!俺の一撃をかわすたぁー!食べ物の分際でむかつくな」


そんなお前の理論などこちらにしてみればどうでもいい。

せまいこの解体部屋ではかわすのがやっとで地下ということもあり逃げだす場所が一つしかない。


「まあ、いずれにしろお前の運命は後ろに転がっている奴らと同じには変わりはないけどな」

「おとなしく俺のこの包丁でスパっと切られてくれや!!!」

「面倒なんでなぁ!」


こいつは体はふっくらしているがしまるところはしまっている。

むかつく相手ではあるが、牛刀の扱いには長けていてさらには唯一の入り口の前で塞いでいるためやつをどうにかしないと逃げ出すことは不可能である。


(こうなれば何を利用してもやつをなんとかする必要がある)

(仲間には申し訳ないが、俺はこんなところで死ぬわけにはいかない!あの世というものがあればそこで詫びよう!!)


そう考えるのと同時に同士の解体された腕や脚、頭や胴体をその人間に向けて投げまくった。


「な、何のつもりかわからないが、そんなのぶつけてきても俺には聞かないぞ」

(そうだろうな)


いくつかの同士の肉のかたまりを投げたあと人間に向かって走った!!

さすがにこれを想定していなかったようで一瞬たじろいだ!

その瞬間を狙った。

全力で足払いを行った。


「お前の攻撃なんぞ・・・!?」


その言葉を口にした瞬間、この人間の身体が宙に浮いた。


「ち、血を使いや、がった!!」


そう、やつの言う通り血を使って地面を滑りやすくしたうえで足払いを行ったのだ。

そしてやつは地面に背中から落ちた。

それを見て一気に入り口を目指す。


「逃がさねぇ」


そういうと牛刀を俺めがけて投げつけてきた。

しかし俺が到達した入り口の真横に突き刺さった。


(あ、あぶなかった・・・。)


それを見て寒気が走ったが一瞬だけ確認した後、すぐに肉屋から逃げ出した。


「ち、ちっくしょう!!絶対捕まえてやるからな!!」


負け犬の遠吠えが聞こえたが今は相手にしている場合ではない。

さらに人間に見つかってしまった以上この都市にとどまることも不可能であろう。


(潮時か・・・。)


俺はこの都市の名前も知らないまま後にすることとなったのである。


(第6話につづく)

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