第2話 死との訣別!

やっと立ち上がることができた次の瞬間だった!

喜んでいる母親の後ろに巨大な黒い人影が出てきた!


(なにごとだ?)


その影は俺の母親のゆうに2倍はあった!


(人間ではない?)


俺の固まった表情を察して母親が同じ方向に顔を向けた。

それと同時にその影の蹴りが母親の腹に一撃を加えた!


「うぐっ!!」

(おわっ)


俺と母親は同時に建物の隅まで吹き飛ばされた。


(いたたたたた)


かなりの衝撃が身体を貫いていたが母親が抱き抱えてダメージを和らげてくれたらしい。

対して母親は口から血を垂れ流してかなりのダメージをくらっているようであった。


「おいおいおい!!この程度でくたばるんじゃーねーよ」

「俺はよー獲物も多少は歯ごたえがないと狩った気分にならねーんだからよ」


すさまじく自分勝手なことを言いやがるこの影。

いや今ははっきり月明りのおかげで姿がわかった。

一見すると人間と思ったが、月明かりに照らされて見えてきたその姿は顔が牛のウシ人間だった。

その大きさは人間の1.5倍ほどの大きさでそれに見合った斧を持っていた。


(この世界は一体なんなんだ?)

(こういう種族がたくさん存在するのか?)


すると、となりでうめいている母親が俺に話しかけてきた。


「に、にげ・・るん・だ。ぼうや」

(逃げる?)


そうだ!逃げなければ殺される!

しかし、このまま母親をおいて逃げてもいいのかという葛藤が俺のなかで渦巻いていた。

勝ち目のない場合は逃げて再起を図るということは以前の俺としては当然の選択であった。

なのに、逃げながらもひたすら声掛けを行い勇気を奮い立たせてくれたし、今も俺だけ逃がそうと必死な母親、、、。


”逃げれなかった!!”


それを察してか母親が言い放った!


「は・はや・くおに・・・げ!」

「わ・わた・・しはもう・・」

「だ・だから・・さい・・ごのお・・おねが・・いをき・・・いて」


涙ながらに俺に生きるように促す彼女を見て、俺は決断した!

ここで死ぬわけにはいかない!後から考えてもなぜかわからなかったがそのことが頭に浮かんだ!


そして、俺は母親をおいて逃げようとした時にもう1人?ウシ人間がいたことに気づかなかった。

やられると思った瞬間、金色の矢がそのウシ人間の頭に突き刺さった!!


「逃げなさい!!」


その声を聴いたら素直に何も考えずに走り抜けることができた。

横目でシルエットを見た瞬間その美しさに目を奪われた。


「早く!!」


そう言われてすぐに気を取り直してすぐに走り出すのを再開した。


そのあとは、


(く・・くやしい)


悔しくて悲しくて壊れそうだった。

さらに追い打ちでウシ野郎が大きな声で放った言葉は今も忘れない。


「なさけねーな!ブタ人間はー!母親を置いて逃げるなんてー!よくできた息子だなー!」


俺はそんななか、コケまくりながらひたすら逃げた。

生きるために!!!


---------------------


あのウシ野郎はどうやら追いかけてはこないようだ。あの妙齢な女性が足止めをしてくれているんだろう!


(絶対にこの借りは倍にして返させてもらう!)


俺はとある森を見つけそこに主食たるレティ草が大量に生えている地帯を発見した。


(よし、この辺りをねぐらとしよう!)


そう考えると、前の記憶を頼りにそのねぐらの360度全方位に罠をしかけた。

並大抵なものでは見破ることは不可能な罠である。前の世界ではサバイバル術も神頑流という兵法の流派を体得しているので、罠の作成は今のこの身体でも容易であった。


(よし、かなりの罠を仕掛けた。あとはここで修業を行い、自分自身を強くして外を自由に歩くのがまず最初の目的だな)


簡単にいい放ったこの言葉をあとで後悔することになる。

なぜなら・・・・。


(つ、強くならない!?)


俺は前の世界では神頑流を極めた最強の武術家であり、世界のあらゆる武器も使いこなせるほどの達人だった。


であるから、トレーニングをこなして強くなるなんて当たり前のようにできるはずだった。


(い、いったい俺のこの身体はどうなってしまったのであろうか?)


この一か月ひたすら修行をこなした。

それも前の世界の数倍の修行をおこなった。


前よりは筋肉もついて、体幹もかなり鍛えられたにも関わらず、はっきり言って並以下なのは火を見るより明らかであった。


(な、なにかがおかしい!そういえばまだ言葉を発することもできていない)


肉食獣から逃げるために生き残るために子供が早く立ち上がることは前の世界でも同じであったのにも関わらず、これ以上の何か特別なことや修行の成果がまるで現れなかった。


(ここは自分自身のことをもっと知る必要があるな)

(レティ草も残り少ないし、自分自信を知るための旅には残りのレティ草は必須だな)


そんなことを考えていた俺はひとまず罠の方に歩みを進めた。

そこで驚愕する!!


(な、なんて数の亜人どもだ)


そこにはありとあらゆる種族の亜人がかなりの数の罠にはまり死んでいた。


(罠を張っていなければ今頃俺は・・・・)


それ以上は発することができなかった。

怖気がはしったためである。


(ブタ人間ってなんなんだ?)


(第3話につづく)

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