現実最強の俺が異世界でブタだってよ?

廃車太郎

第1話 ブタ人間?

俺は、激しい光とともに見たこともない場所にやってきた。

ブタ人間として!?

そんな話だ。


(えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!)


俺の新しい旅立ちでの第一声は叫びから始まった!

それは目の前に現実世界では存在しない顔がブタ、体は人間という異形の存在を目の当たりにしたためであった。


そのあともふたたび


(えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!)


我ながら、リアクションの引き出しが少ないのを改めて自覚した。

というよりその余裕がなかった。


(お、俺もブタじゃないか・・・・?)


壁にかかっている古い曇りがかった欠けた鏡に映る俺の顔はまさしく最初に見たものと全く同じ形状だった。


(な、何が起きてるんだ!?)


完全に頭が混乱していて考えがまとまらない。

いまだかつてこのように狼狽えることと無縁の人生を送ってきた俺が立て続けに起きる現象に完全に麻痺状態となった。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「人間だーーーーー!!!」


今にも壊れそうな家のそれの外から聞こえてきた絶叫にビクッとなった。

そして、また思考停止をおこした。


(い、いったい俺は、どうな・・・??)


と思っているさなか、俺を抱いたまま走り出したブタ人間に意識が向いた。

形相がまさしく必死!死ぬか生きるかの顔である。


(こういう形相した人間には数多く接してきたからな)


俺は自分で言うのもなんだが、元の世界で最強の力をもっていた。

なので、このように追い込まれた人間の形相は見慣れている。


(思考停止していた頭が必死の形相で逃げているブタ人間を見て落ち着いてくるのも我ながら頭がイカれているのかもしれないな)


そんな思考を張り巡らせながらようやく周りの状況がわかりはじめた。


(やはり、ここは元いた世界とは違うようだ)

(草木や花がまるで見たことのない品種ばかりだ)

(というより目の前のこの走るブタを見れば世界が違うことはすぐにわかるな)


一つ一つ見える状況を頭の中で整理することにした。


(さきほどいたのは家と言っても雨露をしのぐ程度の廃墟だったのか)

(向こうの方で叫び声と断末魔?みたいな声が聞こえてくる)

(火の手もあがっているな)


何が起きているのかはまるで見当がつかないが状況はわかり始めてきた。


(なぜか人間に狙われている)

(それは命に関わる重大なこと)

(ブタ人間には定住の場所はない)

(一番の問題は俺が何もできないという状況だ!!)


ひたすらに逃げるブタ人間の母親らしき人物?に抱きかかえられ無力な俺はその身を委ねるほかなかった。


(我ながらなんと情けない姿だろうか!)


一昼夜、そのブタ人間は走り続けた。どこにその体力があるのだろうか?

そして、ようやくたどり着いたのは昔は教会であったであろう建物であった。


「はぁ、はぁ、はぁ、大丈夫かいぼ、ぼうや」

(ぼうやって俺のことか?)

「ここまで来れば人間の追手はこないから安心しな」


息を切らしながら俺に向かって話しかけてくる気丈な女性だ。これが母親か。


「ちょっと待っておいで、今すぐレティ草を取ってくるからね」

(れてぃそう?なんだそれは)


そう言って彼女は協会の外へ慎重に出てどこかへ走り去っていった。

置いてきぼりの形になった俺はひたすら頭を回転することを決めた。


(この危機的状況の打開策は・・・・!?)

(今のこの状況では歩くこともままならない)

(だが頭だけは前世の記憶も知識も失われていない)

(ここが今のところ俺のストロングポイントか)


いろいろ思考を巡らせていると向こうから母親が帰ってきた。


「ぼうや、レティ草を取ってきたよ!たんとお食べ」


差し出してきたのは雑草のような草だった!


(これを俺が食うのか?)


そんなことを考えていると口に草を差し出された。すると不思議といい匂いにつられいつのまにか口を空いて食べていた。


(ん?以外においしい?これもブタ人間だからなのか?)


ぐーーーーーー!!!

恥ずかしながら腹が豪快に鳴った!

そういえばこの状況のなかでなにも食してなかったことに気づいた。

顔が熱くなるのがわかる。

それを聞いていた母親は最初は驚いたがすぐにこう言った。


「よほど、お腹が空いていたんだね!ごめんね!いっぱいあるからたんとお食べ」


その言葉に感謝しつつもひたすら意識が食欲に集中した。

するとどうだろう。なんか全身に力みたいなものがみなぎってきた。

それもそのはず・・・急に体が大きくなったのがわかった。


(?????)

(これは立てるかも?)


直感的にそう思った俺が立とうとしたらすぐにこけた。だがまた立とうとした。

それを母親は助けようとせずひたすら微笑みながら俺を見ていた。


(これは通過儀礼というわけか)


ある程度察した俺は立つことだけに集中していた。

倒れても立ち、また倒れても立ち上がること十数回。

やっと立つことができた!


「おうさすが私とあの人の子だよ!こんなに早く立ち上がるなんて」

(どうやら俺はかなりの速さで立ち上がったらしい。バランスさえ保てれば造作もないし、あれだけ繰り返せば程度もわかるというものだろう)


そんなことを考えているとは思っていない母親は手をたたいて喜んでいた。


まさにその時だった!!!!


(第2話につづく)





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