お前の考えてる事は
(何なんだ、あいつは?また何か企んでいるのか?)
なんだかんだと、チャミの奴はよくサプライズとやらを実行し、俺は毎度ひっかかっては驚かされていた。
(これも、何かのサプライズなのか?)
悔しい事この上ないが、それからの俺が考える事はと言えば、チャミの事ばかりだった。
(何か気に障るような事を言っただろうか。いや、怒っているようには見えなかった。だいたい、俺がいくら何を言ったところで、懲りずに何度も告白してきた奴だぞ?それを今更・・・・。だが、じゃあ一体何が・・・)
「・・・・だってさ。でな・・・・って、朔っ!お前、俺の話全然聞いてねぇなっ?!」
「ん?あ、あぁ・・・・悪い。」
「まったく・・・・失礼な奴だな。」
いつの間にか、チャミの事に集中してしまっていたのだろう。
休日、ここずっと仕事に身が入っていない俺に気付いたらしい海斗に誘われ、久しぶりに2人で出かけた買い物帰り。
まだ日も高い公園のベンチに座っている俺の隣には、明らかに機嫌の悪そうな海斗の姿。
海斗こと、同僚の夢野海斗は同期入社で、入社以降同じ部署。チームが異なり、今ではフロアが分かれているが、同じ部署であることに変わりはない。
時には意見がぶつかり言い合いもするが、裏表が無く気の置けない奴で、公私を問わず、よく行動を共にしていた。
「で、何だって?」
「もういい。どうせ聞く気なんて無いだろう?」
「まぁな。」
正直、今の俺は、放っておいて欲しい心境だった。
独りになりたいのなら、海斗の誘いも断れば良かったのだろうが、独りでいればそれはそれで・・・・悔しいが、待ってしまう自分がいるのだ、チャミからの連絡を。
「お前が今、何を考えてるのか、当ててやろうか?」
突然、海斗は自信ありげな表情を浮かべ、そう言った。
「突然なんだよ?当たる訳がないだろう?」
「ふ~ん・・・・じゃ、当たったら、ちょっと俺に付き合えよ?」
「ああ、いいだろう。」
海斗は俺とチャミが付き合っている事を知らないはずだ。
絶対に、当てられるものか。
妙に自身満々な海斗の態度が気にはなったものの、そう思って、俺は適当に相づちを打ったつもりだった。
だが、返ってきた答えに、俺は目を丸くした。
「お前の考えてる事・・・・考えてる人。チャーの事だろ。」
「なんっ・・・・」
当てられた事にも、もちろん驚いた。
だが、それ以上に驚いた事。
それは。
『私ね、仲のいい従兄弟のお兄ちゃんがいてね。そのお兄ちゃんだけは、私のこと【チャー】って呼ぶんだ。』
確か、チャミの奴はこんなことを言っていた。
ということは。
(海斗が・・・チャミの従兄弟?!)
「図星だな。じゃ、行くぞ。」
言うなり、海斗は俺の手を掴み、歩き出す。
「おいっ、ちょっと待て!一体どこへ・・・・」
「俺の家。・・・・お前だって、こんな公道でしたい話じゃないだろうからな。」
「・・・・分かったから、手を離せ。」
「チャーにも、いつもそのくらい素直だったらなぁ・・・・」
ゆっくり俺の手を離した海斗は、苦笑混じりに俺を見ていた。
俺は海斗の視線を無視し、無言で海斗の後ろを歩き続けた。
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