第3話 答えの代用品

目がさめると、知らない街にいた、帰ろうと思うことはなかった。

なぜか腹は減らなかった、不思議とずっと満ちていた。

問題は、腹が何で満たされているのか知らないが、なんだかどうも気持ちが悪い

「お兄ちゃん…随分と溜め込んでるねぇ」

「えっ?」

「それだよ、それ、腹に溜め込んでんでしょ」

なにやら妙な雰囲気の老婆が近づいてきた

「はぁ、なんですかこれ」

質問をした途端、腹が減った

「それは疑問さ、所詮は答えの代用品だからね、良いもんじゃないさ。」

腹は満ちた、不快感はいくらかましになった。

「疑問は吐き出して、答えで満たすのさ。あんたこりゃまた随分溜め込んだねぇ…

如何してこんなになっちまったのさ?」

「いや…それは」

「早く言うてくれ、疑問が溜まってしょうがない」

「えっ」

なるほど、ここじゃみんなこうなのか

また腹が満ちる

「その…色々ありまして」

「その色々が聞きたいんじゃ!」

「あっはい」

色々話した、色々を聞くもんだから色々を吐き出した。色々の花が咲いた

「はぁ〜満腹だよ、あんがとさん」

「はぁ…」


少し気分は良くなったが、まだ腹の中の不快な何かが蠢いているのを感じる

もっと聞かなきゃ、もっと訊かなきゃ

お父さんに聞きたいことが山ほどあるからだ


そうだ、めぐみちゃんの件もだ

世界に訊かなきゃ。










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