第8話 彼女の能力

 シャロールの元へ、戻ってくる。


「あ、佐藤!」

「どうだったの?」


「残念ながら……」


「能力はないな」


「でも、テレポートしたりしてるよ?」


「そうだな」

「しかし、『超能力』はない」


 だって、これ、スキルだから。


「もしかしたら、未知の能力なのかもな」


 僕からしたら、超能力も未知の能力なのだが。


「それじゃあ、Aランクとか!?」


 Aランク?

 そもそもランクって?


「……Aランクは一人で十分だ」


 彼は苦笑いしながら、そうつぶやく。


「それより、そこのお嬢ちゃんも検査してみるかい?」


 シャロールも?


「わー! やりたいです!」


「よし、わかった」

「こっちに来て」


 今度は僕が、待ってる番だ。


――――――――――――――――――――


「佐藤さんは、どうやって知り合ったんですか?」


 清楓ちゃんが尋ねた。


「シャロールと?」


「はい」


 えーと、ギルドの……。

 って言っても、伝わらないか。


「たまたま公園で出会ったんだ」


「へ〜」


「その後、何回か殺されかけたけど……」


「え!」


 おっと、これを言うとややこしくなる。


「今では仲良しさ」


「よかった〜」

「ところで……」


「ん?」


「あの耳、本物なんですか?」


 それ、やっぱり気になるか〜。

 ごまかしてもいいけど、なんとなく正直に答えてみる。


「ああ、本物だよ」

「興奮したときとか、よく動く」


「え〜! すご〜い!」


「ピコピコ動くんだよ?」

「例えば、キスしたと……き……」


 彼女が興奮して楽しそうに聞いてくれるので、僕の口がすべった。


「……」


 黙っちゃった。

 まずいかな。


「あー、ごめん、まだ早かったかな」


「そんなことないです!」

「私もポチとしたことあります!」


 すごい勢いで、返事が来た。

 ポチって、あの人だよな。


「したことあるって……」


「ただいま〜」


 この疑問が解決する前に、シャロールが戻ってきた。


「あ、もう終わったの?」


「疲れた〜」


「お疲れさま、シャロール」


 そもそも、今日は朝から動きっぱなしだしね。


「それで、どうだったの?」


 なにかすごい能力が……。


「彼女は非接触テレパスだ」


「それ、なんですか?」


 テレパシー……みたいな?


「人の心が読める」

「それに、人の心に話しかけることができる」


「え?」


 でも、シャロール。


「私、人の心なんか読めないよ?」


 そうだよね。


「いや、そこが彼女の面白いところでな」


 彼は徐々に興奮しだした。


「部分的テレパスなんだ」


「部分的?」


「具体的に言うと、発信専用だ」


 発信専用?


「つまり、読み取りはできない」

「けど、心に話しかけることができるってことですか?」


「おそらくね」


「私がイチローと話せるのは……?」


 シャロールがそんな疑問を口にした。


「イチローって?」


「友達のオオカミだよ」


 これ、信じてくれるかな?


「オオカミと話せるの!?」


 清楓ちゃんが驚くのも無理はない。


「理論上は可能と言われているが、成功例は初めて見たな」


「すごいね、シャロールちゃん!」


「ぜひ、もっと研究させてくれ」


 二人共、興味津々で僕らを見ている。

 しかし、研究か。

 嫌だな……。


「シャロール、どうする?」


「私、疲れたから帰りたーい!」


「そうだよな」


 それじゃあ、ここらで。


「本当に帰るのか?」


 研究熱心の彼は、逃したくないみたいだけど……。


「もう帰るね、清楓ちゃん!」


「うん……」

「また遊ぼうね、シャロールちゃん!」


 こっちは素直にお別れしてくれるな。

 よかった。


「いや、もっとここにいてもいいんだぞ?」


 彼は微笑みながら、近づいてくる。

 微笑む?

 いや、不敵な笑みだな。


「シャロールについて、もっと知りたいな〜」


 これが女の子のセリフならいいのだが、あの男が言ってるから不穏だ。

 モルモットにされそう。

 猫だけど。


「それじゃあ!」

「元の世界に帰らない!」


「あ、おい!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る