第7話 検査

「うん、無事着いたな」


「うわー! ここどこー!?」


 なにかの建物の中。

 壁は真っ白で、同じく白い衣を着た人があちこちにいる。


「研究所ってさっき言っただろ」


「ポチってこんなところで働いてるの?」


 清楓ちゃんがそう言った。

 ポチって誰だ?


「そんなことはどうでもいい」

「お前、ついてこい!」


 僕は窪崎さんに引っ張られて、どこかへ連れて行かれる。


「あっ! ポチー? 私達はどうするの!?」


 ポチってもしかしてこの人?


「そこのベンチにでも座っててくれ」


「はーい……」


 少し元気がない女の子の声が後ろから聞こえた。


「シャロールもおとなしくしとけよー!」


――――――――――――――――――――


「まったくポチったら仕事のことになると私のことなんて考えないでさ!」

「ひどいと思わない!?」


 ベンチに座ると、女の子は話し出した。


「そうだね〜」


「あなたは彼と……」

「そういえば、名前聞いてなかったね」


 あ、そうだった。


「私は清楓。よろしくね」


 清楓ちゃんね。


「私はシャロール。よろしく!」


 握手をした。


「それでさ、シャロールちゃんは彼とは……どんな関係なの?」


 どんなって……。


「佐藤は私の彼氏だよ!」


「ふ、ふ〜ん。そうなんだ」


 ちょっと動揺している。


「そ、それじゃあ……彼はどんな人なの?」


 どんな?

 清楓ちゃん、そんなに気になるの?


「う〜ん、頼りなくって、情けない……」


「……」


「でも、私が困ったときはいつも助けてくれるの!」


「え〜、いい彼氏さんなんだね〜」


 少し羨ましそうな言い方。


「ポチなんてさ、私のことなんて絶対考えてないもん!」


 今度はプンプン怒り出しちゃった。


「そうなの?」


「うん、この前だってさ!」


――――――――――――――――――――


 疲れた……。

 何をするのかと思ったら、病院で使うみたいなよくわかんない機械でいろいろ検査されてさ……。


「う〜ん? こりゃどういうことだ?」


 検査が終わって、窪崎さんに会う。

 手に持った紙を睨みながら、頭を掻いている。


「どうしたんですか?」


 まさか、僕がすごい超能力を持ってたとか?


「結論から言おう」


 ワクワク。


「お前は超能力者じゃない」


「え?」


 いや、待てよ。

 考えてみれば、そりゃそうだ。

 だって、あれはスキルの効果だし。


「だが〜……」


 な、なんだろう。

 怖い……。


「お前がここにテレポートしたことからもBは確実……」


 Bってなに?


「しかも、俺が作ったリミッターを外しやがった……」


 外したのは……まずかった?


「おい! お前!」


 ツカツカとこちらに歩み寄ってくる。

 狼のように鋭い目を輝かせながら。


 正直狼より怖い。


「その能力の正体!」


 肩を掴まれる。


『教えろ!』


「うわ!」


 なんだこれ!

 頭に……いや心に?

 声が響いた。


「あっ! すまない」

「熱中しすぎていた」


 なんだ、今の。

 この人の……超能力?


「とりあえず、清楓のところへ戻ろう」


「わかりました」


 今の……なんだったんだ?

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