第5話 不法侵入

「まずいな……」


「もう逃げられないんじゃない?」


 四方八方からパトカーのサイレンが聞こえる。

 このままでは捕まってしまうのも時間の問題だ。

 次は警戒されてるだろうからこんなに簡単に逃げられそうにないし……。


 元の世界に帰るか?

 いや、一か八かだ。


「この辺で一番安全な場所にテレポートしない!」


――――――――――――――――――――


「ここは……」


「誰だ!」


 目の前には鋭い目の男が一人。

 その後ろにはシャロールと同い年くらいの女の子がいる。

 どうやらここはだれかの家みたいだ。


「早く答えろ」


 すっごいにらまれてる……。

 ええと……。


「間違ってテレポートしちゃったんです〜」


 うん、間違ってはない。

 こんなところにテレポートするとは思わなかったし。


「そうか、それなら早く出ていけ」


「は、はい」


 案外すんなり通してくれてよかった。


「玄関はこっちだ」


 案内通り、外に出ていこうとした。


 ……が。


 シャロールが動こうとしない。


「どうした?」


「佐藤、トイレ行きたい……」


 よく見ると、ソワソワしている。


「ええ!?」


 今!?


「それはちょっと……」


「いいよ」

「トイレくらい」


 先ほどからこちらを睨みつけている男とは違い、その後ろの女の子はとても優しい。


「こっちだよ」


 女の子が立ち上がって、歩き始めた。

 シャロールもそれについていこうとしたが……。


「待て」


 男に遮られる。


「これをつけろ」


 シャロールになにか……リストバンドみたいなものをつける。


「それ……なんですか?」


「俺が作ったリミッターだよ」


「リミッター?」


「お前らみたいな超能力者の能力使用を制限するんだよ」


 今度は僕にもつけられた。


「へ〜」


「お前ら、能力はなんだ?」


 またこの質問だ。


「ええと……わからないです」


「わからないって、カードは?」


「持ってないです」


「持ってない?」


 怪訝な顔をされた。

 ヤバ、怪しまれてる。

 ていうか、罰金なんだよね。

 なんとかごまかせないかな。


「ちょっと外国から来たので……」

「まだ日本でカード作ったことなくて……」


「そうか」


 絶対納得してないよな。


「ねぇ、トイレ……」


 シャロールが涙目でそう告げる。


「あ、もう行っていいぞ」


 許しをもらえたのでシャロールはトイレに向かっていった。


「それじゃあ、試しに能力使ってみてくれよ。テレポートだったかな?」


 使っていいの?

 でも、テレポートだとシャロール置いていっちゃうから。


「まあ、冗談だがな」

「俺の作った……」


「リミッターが外れない」


「そうだろ?」


 自信満々に言ってるところに申し訳ないが外れてしまったリミッターとやらがそのまま床にコトッと落ちる。


「は!?」

「お前……!」


 今までクールだった彼は顔を崩して、驚愕する。


「なんか……すみません」


「やるじゃねぇか」


 今度は不敵な笑みを浮かべている。

 目は獲物を見つけた狼のようにギラギラしている。


「よし! お前!」


 腕を掴まれる。


「今から研究所に来い!」


「え!?」


 研究所……!?


「ピンポーン」


 そんなとき、インターホンが鳴った。

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