第12話 圧倒的な力

俺は身体がすこぶる震えていた。


(落ち着け、冷静に。慌てても仕方ない。白雪さんは…?)


俺は白雪さんの方を見た。


「…うぅっ、汚い…臭い…きもい…何なのこいつら…無理ぃ……」


白雪さんは涙目になって3kを言った。


対面しているとはいえそこまで距離が近い訳では無い。なのに刺激のある臭いがこちらまで漂ってきている。

この魔物たちがどれだけ不衛生なのか嫌でもわかる。


「うっ…吐き気してきた……」


白雪さんが口元を抑えた。


(…まだスキルとか魔法使ったことないけどそんなこと言ってられない。一か八か魔法使ってみるしか……)


「ゲヒャヒャァァァッ!!!!」


「ゲェヒャァァアアアッ!!!」


そう考えているとゴブリンたちは俺たちに向かって…白雪さんに向かって走ってきた。


「ひっ…いやぁ…!来ないでっ!!来ないでぇっ!!きゃっ!」


白雪さんは取り乱し、その場で腰を抜かしてしまった。


「ゲギャギャァァアアアッ!!!!!」

「ゲギャッギャァァァッ!!!」

ゴブリン達は眼球を大きく開き、ヨダレを撒き散らしながら白雪さん目掛けて無我夢中に駆けてきていた。人から見ても別格に美しさのある少女。服の上からでもわかるデカ過ぎず小さすぎない美乳。無駄な脂肪の付いていないお腹。バランスのいい曲線を描く身体はゴブリンからしたら味わうしかない極上の身体。


「白雪さん!」


俺は白雪さんの前へと出てゴブリンたちに汗でビショビショの手のひらを向けた。


「頼むぞ…!なんでもいいから出てくれ魔法…!」


俺は祈り、魔法を放つ姿勢に入った。


「火魔法……!」


その時、俺たちの前へと何かが出た。






パァンッ!!!!




「ゲヒッ!!」


「ゲバァッ!!」




瞬間、ボクサーがやるミット打ちを響かせたような、気持ちのいい音と共に、ゴブリン達の頭部が消えた。


「…ぇ?」


「…ぇ?」


俺たちは間抜けな声を出した。




ゴブリン達の血とも思える赤い色をした液体が宙をまい木や地面に付着し、倒れたゴブリン達の傍らには、2体の魔物が立っていた。




その魔物たちは、俺たちの使い魔となったアスラとアルラ。


アスラは足で、アルラは尻尾の部分でゴブリンの頭部をぶん殴り、爆散させたのだった。


この世界でのゴブリンの立ち位置など俺たちはまだ知らない。


即死させられるほどゴブリンたちが弱いのか。それとも即死させるほどのアスラとアルラが強いのか…


何はともあれ俺たちは命拾いをした。


「あ、あはは……助かった……」


「こ、怖かったぁ………」


俺も白雪さんのようにその場でへたり込んだ。


「よかったわ…使い魔呼んどいて…」


「えぇ本当に……ほんっとうにそうですよね……」


「ありがとう、ありがとうなぁ…アスラぁ………」


「助かったよぉ……アルラぁ………」




俺たちはそれぞれの使い魔を抱きしめ、感謝の言葉を送り続けた。


「…」


「…」


アスラとアルラも満更でも無いのか、足や尻尾を揺らしていた。


「双葉さんもありがとうございました、咄嗟に前で庇ってくれようとしてくれて。」


「いいよ……特に何も出来てないし……」


「……しかし、見事に頭の部分がないな…くっさ…」


「うへぇ…身体の中ってこんなんになってるんですね……臭い…」


一難去り、使い魔が強いということが心の余裕に繋がり2人は感心し、鼻をつまみながらゴブリンの身体を覗き込んでいた。




「…鑑定眼使ってみようか。死んでるから使えるかわかんないけど、どんな魔物だったかは気になる。」


「は、はい。でもこの見た目ですし、もう察しがついてますよね…」


「…まあなぁ………」




そういい、俺たちは鑑定眼を使った。














ネーム 無し






種族 ゴブリン






スキル 繁殖








繁殖 「子を宿させるための精力、性欲が増す。」














「……案の定、ゴブリンだったな。」


「……えぇ。」


俺たちはもしあのまま襲われていたらと思うと。背筋が冷える思いだった


(俺より白雪さんだよな…この繁殖ってスキル、アトラさんも言ってたけど。ゴブリンは…)










「…ん?こいつ種族なんて表記されてるぞ?」


「…本当ですね、私たちには表記されてなかったですよね?」


「だよな?」


どういうことだろうと思い、俺たちは首を傾げた。


「もう1回確かめてみましょうか、ちょっと気になりますね。」


「だな。」


そういうと俺たちは能力を再確認した。








――――――――――――――――――――――






ネーム 双葉成美








スキル 一心同体 召喚(使用不可) 契約 鑑定眼 翻訳 魔素操作 再生 猛毒 隠密 擬態 水中呼吸 気配察知 熱感知 威圧






魔法 生活魔法 水魔法 火魔法






耐性 魔素耐性 水魔法耐性 毒耐性 火魔法耐性






使い魔 アスラ






――――――――――――――――――――――






ネーム 白雪花音








スキル 一心同体 召喚(使用不可) 契約 鑑定眼 翻訳 魔素操作 再生 猛毒 隠密 擬態 水中呼吸 気配察知 熱感知 威圧






魔法 生活魔法 水魔法 火魔法






耐性 魔素耐性 水魔法耐性 毒耐性 火魔法耐性






使い魔 アルラ




――――――――――――――――――――――










「ん〜?どういうことだ?」


「う〜ん…わかんないですね…」










「…種族として表記する意味がないとかか?自分の種族とかはわかってるから省略されてるのかも?」


「あ〜、なるほどぉ……」


「あれ、じゃあなんで双葉さんには私の種族が見えてないんでしょうね?逆に双葉さんの種族も私見えないですし。」


「……自分と同じ種族が省略されてるとか?」


「それなら…たしかに。有り得るかもしれませんね。」


「…うーんもやもやする。これも念じれば見えるようになるのか……?」


「…やってみましょうか。」


「だな。種族…種族………」


「種族…種族…」




俺たちは種族が表記されるよう、念じた。








――――――――――――――――――――――






ネーム 双葉成美








種族 人間






スキル 一心同体 召喚(使用不可) 契約 鑑定眼 翻訳 魔素操作 再生 猛毒 隠密 擬態 水中呼吸 気配察知 熱感知 威圧






魔法 生活魔法 水魔法 火魔法






耐性 魔素耐性 水魔法耐性 毒耐性 火魔法耐性






使い魔 アスラ






――――――――――――――――――――――






ネーム 白雪花音








種族 人間






スキル 一心同体 召喚(使用不可) 契約 鑑定眼 翻訳 魔素操作 再生 猛毒 隠密 擬態 水中呼吸 気配察知 熱感知 威圧






魔法 生活魔法 水魔法 火魔法






耐性 魔素耐性 水魔法耐性 毒耐性 火魔法耐性






使い魔 アルラ






――――――――――――――――――――――








「あ、出た。」


「やっぱり省略されていただけみたいですね。」


「だなぁ。…ん?でもまてよ、そういえばこいつらの種族も見えていなかったよな?」


俺はアスラとアルラを見て言った。


「……そういえば。何故なんでしょう?」




疑問が疑問を呼ぶ。先にやることなど沢山あるのに、芋づる式に疑問が浮かんでいく。






「…とにかく念じてみるか。さっきみたいに。」


「…やってみましょうか。」










――――――――――――――――――――――


ネーム ???








種族 ???






スキル 魔素操作 再生 猛毒 隠密 擬態 水中呼吸






魔法 水魔法






耐性 魔素耐性 水魔法耐性 毒耐性






――――――――――――――――――――――






ネーム ???








種族 ???






スキル 魔素操作 隠密 気配察知 猛毒 熱感知 猛毒 威圧






魔法 火魔法






耐性 火耐性 魔素耐性 毒耐性






――――――――――――――――――――――






「出たことには出たけど…また…?またハテナになってるんだけど……」


「…なんなんでしょうね、この子達……」


「名前の部分ゴブリンと違うよな、あっちは無しって書いてあってアスラ達はハテナ、違いはなんなんだろう。」


「さぁ……」




「…どうせ種族の部分見てもまた深淵云々が説明に出てくるんだろうなぁ。」


「…ですねぇ。」








「はぁ、まあいいか。その辺は考えても意味ないし。辺りも真っ暗だし、とりあえず今日はここでバッグの確認。次に能力の確認しよう。白雪さん目は大丈夫?周り見えてる?」


「えぇ、なんとか。若干ですけど暗闇に慣れてきました。」


「おっけ、じゃあ早速バッグの確認からしようか。」


「はい。」




そう言うと俺たちはバッグを手に取り、中にあるものを確認した。


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