第9話 へびこわい

魔法陣から出てきた魔物、それは、人間大の巨大な蛇だった。


「ひぇ…」

白雪さんは恐怖のあまりしりもちを着き、震えていた。

俺は近くに行き、白雪さんの肩に手を置いた。

「白雪さん、多分大丈夫。多分。」


俺は情けなくも断言できず、本当はこの場からすぐさましっぽ巻いて逃げ出したかった。


(どうしよう、チビりそう。)

蛇の色は真っ黒だった。目は黄色く、睨まれると萎縮し動けなくなるような、そんな力強さを感じた。

タコの場合分かりやすい地球にもいたような姿形をしていた分、(いやそれでもあのデカさにはビビったけど…)蛇は迫力満点で白雪さんの肩に置きながら、俺の手もガクガクと震えていた。


(やっべぇ、これもし襲いかかってきたら絶対助からんだろ…死んだ?俺死んだ??)

(えっ、てかまって。なんか勃って来たんだけど。)


それは本能からなのか、生命としての危機が迫っているから子を成せという息子からのメッセージなのか。俺は性欲が増してくのが感じ取れた。


すぐ隣には女の子。一生に1度会えるか分からないほどの美少女。

このまま――



(…いかんいかん。落ち着け、冷静になれ。アホなことを考えるな。)


「ふぅ……」


俺は深呼吸をし、改めて蛇を見た。

(大丈夫、襲ってきはしない。タコの時と同じ。こちらを見ているだけ。)


「…白雪さん、とりあえず襲ってくる様子はない。鑑定眼使おう。」

「え、あ…はい。」

白雪さんも落ち着きを取り戻したのか、冷静になった。


「鑑定眼。」

「鑑定眼。」





ネーム ???



スキル 魔素操作 隠密 気配察知 猛毒 熱感知 威圧


魔法 火魔法


耐性 火耐性 魔素耐性 毒耐性




「…タコと一緒のスキルが多いな。」

「ですね…名前もやっぱり見えない……」

「なんでだろう、召喚した魔物は名前が見えないようになってんのかな?」

「うーん、わかりませんね…」


わからないことだらけ。俺たちはこの世界に来て、まだ1日も経っていない。右も左も分からない状態だ。あとで神様に連絡して色々聞こう。


(…てかそうじゃん。アトラさんに連絡すればいいんじゃん。…はぁ、まあいいや。)


「ところどころ違うスキルもあるし詳細覗いてみよう。」

「そうですね。」




気配察知 「気配を察知することができる。」



熱感知 「体温の色を目で見ることができる。」



威圧 「恐怖を与えることができる。」



火魔法 「火属性の魔法が使えるようになる。」



火耐性 「火属性に対する耐性がつく。」




「…すごいですね。色々と。」

「だなぁ、俺たちがガクブルってたのってこの威圧のせいか?」

「…ですかねぇ?」

「…いや、このサイズの蛇が出てきたら普通にビビるわな。威圧のせいじゃないか。」


能力の確認を終えると、蛇は白雪さんに頭を向けた。

「え…?な、何…?」

蛇は白雪さんに頭を下げてじっとしていた。

「…手を置けってことじゃない?ほら、俺とタコが握手したみたいに。」

「あ、あぁ。そういう事ですか。大丈夫かなぁ…」

そう不安を呟くと白雪さんは蛇の頭に手を置いた。

「つ、つるつるしてる……」

そう言った瞬間、蛇と白雪さんから光が放たれた。


「うぉっ!?」

「うぎゃっ!?目がぁっ!」


またもや乙女らしからぬ声が聞こえたが気のせいだろう。



そして辺り一面が光1色に染められ。




―――が使い魔になりました。これにより魂のつながりを確認。


魂のつながりの確認により、―――の全能力が使用可能になりました。





またあのアナウンスが聞こえた。


アナウンスが終わると、辺りの色が落ち着いた。



「あ〜、目がチカチカする。」

「う、うぅ…目が…目がぁ……」


某有名映画の大佐のようなことを言う白雪さん。



光の眩さに目がやられイマイチ視界がはっきりしない。




「と、とりあえず能力確認しようか。」

「は、はい…」


そういい俺たちは能力を確認した。



――――――――――――――――――――――


ネーム 双葉成美



スキル 一心同体 召喚(使用不可) 契約 鑑定眼 翻訳 魔素操作 再生 猛毒 隠密 擬態 水中呼吸 気配察知 熱感知 威圧



魔法 生活魔法 水魔法 火魔法



耐性 魔素耐性 水魔法耐性 毒耐性 火魔法耐性


使い魔 ???


――――――――――――――――――――――


ネーム 白雪花音



スキル 一心同体 召喚(使用不可) 契約 鑑定眼 翻訳 魔素操作 再生 猛毒 隠密 擬態 水中呼吸 気配察知 熱感知 威圧



魔法 生活魔法 水魔法 火魔法



耐性 魔素耐性 水魔法耐性 毒耐性 火魔法耐性



使い魔 ???


――――――――――――――――――――――


「増えてますねぇ。」

「増えとるなぁ。」

「私の方の召喚も使用不可になってますね。」

「だなぁ、これはまた使えるようになるんだろうか。」

「さぁ〜…」


「…よし!召喚がもう使えないのは痛いけど、まあ言っても始まらんし。こんだけスキル増えただけでも御の字ってことで。次だな。」

「次はどうします?このバッグの中に食べ物とか衣類とか入ってるって言ってましたし、そっち確認しますか?」

「それも重要。それよりも、だ。」


そういい俺は使い魔のタコと蛇を見た。

「こいつらをどうするか、だな。」

「どう、とは?」

「今から俺たちはこの森をでて、街に向かうんだ。流石にこんなデカい蛇とかタコを街に入れる訳にはいかんのじゃないか?」

「…確かに、でも使い魔って言えば入れさせてくれるかもしれませんよ?何しろ、ここは異世界ですし。使い魔も何でもござれかも。」

「…なるほど。じゃあま、こいつらの事は街についたら聞いてみよう。」

「はい、そうしましょう。」


「じゃあ、名前でも決めるか。ずっとタコとか蛇だとダメだろ。」

「賛成ですね。それぞれ私は蛇に、双葉さんはタコに名前をつけてあげましょう。」

「おっけー。どうしようかなあ…」


(…名前ってどう付ければいいんだ……?可愛い系?かっこいい系?それとも食べ物系いっちゃう??)


……

「…よし、アスラ、にしよう。お前の名前はアスラだ。」

(アトラさんからインスピしたなんて言えん。)


「なるほど、そういう路線の名前ですか…」



……

「…じゃあアルラ、あなたの名前はアルラね。」

(アトラさんを参考にしたなんて言えない。)









考えることは2人とも一緒だった。



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