第2話 「すけべ」

「ん、ん」


上目遣い。


期待の眼差し


このタタリ神は何かを求めていた


俺の願いを聞き入れようとしていた


俺の願いはなんぞや


もう体は朽ち果てており、目の前の死体の山のうちの一つが自分の体だ。


思い悩む



思いついた


俺のふるさとだ


田んぼが広がっていて


空気が澄んでいて


小川が流れて


太陽がさんさんと照って


両親、兄弟、友人、村の仲間たち


俺は故郷に帰りたい


なあ、頼みます


タタリ神さま


俺は故郷に帰りたい


「うん。いいよ」


そう言ってくれた。


俺は嬉しかった


よかった


悪い神様じゃ無いみたいだ


「ふるさと。どこにある」


あ……


分からない


どこに向かえばいいのだ


人に聞ければいいのだが


この体で、人と話すことが出来るのだろうか


「言ってみて」



何をだ


「すてーたす、おーぷん」


何の呪文だろうか


だがしかし


ものは試し


なんとか言葉を真似て言ってみる


す、て、い、た、す、お、う、ぷ、ん


ーーーーーーーーーーーー

幽霊


レベル1


HP1


MP10


スキル


・風のいたずら


・不気味な音


・ストーキング

ーーーーーーーーーーーー


頭の中で、文字が浮かんできた


というか、俺は文字は読めないはずだが、なぜか読める。


幽霊とはそんなものなのだろうか?


というかなんだこれ


れべる?


すきる?


すとーきんぐ?


あと、3行目と4行目の文字は読み方すら分からない


知らない言葉がいくつもある


「スキルは、つかうもの。つかったら、わかる」


いや、使えば分かるって


どうつかうのだろうか


いやまあ、いまいちわからないが、なにかやってみるか


……風のいたずら!


おれはスキルの一つを口に出した。


その瞬間、小さなそよ風がぴゅーと吹いた。


すると、タタリ神さまの、黒い衣がひらひらと舞い上がった。


黒い衣の下にある、白い素肌があらわになる


へそから下が、一瞬だけ丸出しになった


「いやん」


ち、違うんだ


そんなつもりじゃ……


ご、ごめん


「すけべ。でも、いいよ」


許してくれるのか


「すき、すき、すき。だから、いいよ」


タタリ神さまは顔を俺に寄せる


俺は顔を赤くする。


母親や妹以外で、体を見せてくれる女性など、初めてだ


逆にどうしていいかわからん。


ありがたいけど、今はふるさとに帰ることを考えたいので……


「しょんぼり。でも、わかった」


タタリ神さまは顔を近づけるのをやめ、普通の距離に戻る


ちょっぴり寂しい


「スキル、人とはなせるの、ない」


なるほど


スキルは、幽霊の俺が出来ることになるのか


今のスキルでは、人に物を聞くことはできなさそうだ。


「れんしゅうすれば、できるようになるかも」


なるほど、努力することで、スキルは増やすことが出来るようだ。


だったらやることは絞られる。


ちかくの人の里へと向かおう


「うふふふふ。でーと、だね」


タタリ神さま、また知らない言葉を使っているな……。


そうして、とりあえず、タタリ神さまが向かう方へついていくのだった。












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